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英雄は静かに暮らしたい  作者: 雅樹
災厄の“紫”とシオンの過去編
14/20

遅れてすみません。新章突入です。


5/11、訂正しました。


 王城にある限られた者しか使用することができない人体認識の魔方陣を使い、母と神官達と共に神ノ森の神殿へと移動する。

 光に包まれ、その光がおさまるとそこはもう王城の魔方陣の部屋ではなく、慣れ親しんだ神殿の魔方陣の部屋だ。

 

 

「お帰りをお待ちしておりましたぞ。レナ様、シオン様。」

 

 

 母に長年仕える天上人の神官長の低い声がとても懐かしく、返事をしようと口を開くが、神官長(かれ)の隣にいる人物を視界に捉えれば違う言葉が紡がれる。

 

 

「…貴方が降臨されているのは珍しいですね、ヒイロ様」

「あ、ほんとだ、ヒーちゃんがいる。どったの?」

 

 

 ひょこっと自分の後ろから顔を出して言う母の姿にヒイロと呼ばれた人物今まで澄ましたような顔の表情を崩し、クスクスと笑う。

 

 

「シオン様、貴方は私より位が高いのだから奥方様のような感じで良いのよ?主に仕える天上人の天帝の子供っていうビミョーな立場だもの。」

 

「喋り方などは癖ですから、お気になさらず。」

 

「もー、嘘ばっかり。」

 

 

 朝焼けの空のような長い髪をひとつに結んで纏めて、黄金色の瞳のネコ目を細め、シオンを見ており、声は高めなものの耳に心地よい。

 ほんのり化粧の施された顔は美しく、纏う衣服は体型をあまり強調しないゆったりとしたもの。

 

 初めて出会った相手ならばその見た目の美しさと喋り方から間違いなく女と思うだろう。

 だが()は正真正銘男である。

 似合うからそういう服を着て、そういう言動をしているが、男だ。

 

 

「そーいえば、アイちゃんの姿はないけど、今日はヒーちゃん一人で遊びに来たの?」

 

「いえ、アイナは主の元にいます。私とアイナの能力で話が出来るようにと私だけこちらに来ました。それと主より、奥方様に伝言です。」

 

「伝言なんて頼まないで、面と向かって言ってほしーんだけど?」

 

「面倒事で抜け出せないのですよ。なので私がついでに。…『浮気なんてしていない。だから、何処にも行かず、私が行くまでそこで待っていてくれ。』…だそうですわ。」

 

「相変わらず偉そうな口調でムカつくわー。何様なのよ。」

 

「一応神様ですよ。母上。私にとっては父神(クソジジイ)ですけど。」

 

 

 一応を強調して微笑みながら言えば、周りが引いた。

 そんなことを言うのが自分だけだということもあるが、普通に誰かが言えば消されるだろう。

 

 

「ほんとにシオンは相変わらずあの人に対して反抗期だな…。」

 

「苦労させられてますから。」

 

「狐の仮面を外さないのも反抗期の一環か?それとも中二病?」

 

「チューニビョー?」

 

 

 初めて聞く言葉に首を傾げるも母はな、なんでもない!と少し顔を赤くしながら首を振った。

 

 

「チューニビョーとは分かりませんが、今のように容姿を変化させる幻術が組み込まれた道具に過ぎませんよ。」

 

「中二病はもういいって!!つーか、もう家だし、元の姿に戻ってよ。息子なのに容姿が違うとなんか違和感だし。」

 

「確かに、色気を放つシオン様って違和感よねぇ。」

 

 

 ヒイロの言葉に周囲の皆がうんうんと何度も頷く。

 本来の自分とはまったく違った姿にしたためだが、そう思われると長年この姿だった自分にとっては何故だか落ち込むが顔には出さない。

 

 そっと狐面の紐を解き、外せば今までの姿がぶれ、本来のシオンとしての姿が現れる。

 

 長かった銀の髪は両親から受け継いだ濡れ羽色の肩までほどの黒髪となり、肌も母譲りの象牙色。

 細身だった体躯も筋肉が程よくついた健康的な体つきで服はそのままアリオクレイアの正装だが、体に合った大きさに変化している。

 

 

「これで良いですか?母上。」

 

「…違う。目の色が違うじゃない!あの人譲りの翡翠色の瞳がなんで紫になっての!?」

 

「っ…。」

 

「あー…これは…その…。」

 

 

 誰もがそのことが信じられずに目を見開くのを見てしまったと後悔する。

 そう、本来であれば人物のの瞳は父譲りの明るい翡翠色をしていた。

 しかし、今では紫紺に近い紫色の瞳に変わっている。




 

 紫系統の色はこの世界では特に忌み嫌われている色であり、滅多に発現しない色なのだ。

 

 しかし、先天的にも後天的にも現れる時がある。

 この世界稀に現れる存在の誕生の時に。

 

 

 それは発現した者は“災厄の王”となりうる器ということを周囲に知らしめる色。

 災厄をこの世界に与えるもっとも危険な存在を示すものなのだから。

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