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英雄は静かに暮らしたい  作者: 雅樹
アリオクレイア編
10/20

5/11、訂正しました。


 会場にはアリオクレイアの貴族や商人の他にも他国の貴族や商人の姿が見えた。

 本来は英雄がやって来るのを待つために各国の代表、特に現アリオクレイア女王が行いたいと発言し催しされた内輪だけのものだったが、現在は自他国にとって有益な交流、商談場所になっていたと聞いている。

 

 

「よくもまぁ、毎度毎度。代表も女王もあんま相手しないのに貴族サマも商人どのも期待に満ちた顔でやって来るのかねぇ…。」

 

 

 酒の入ったグラスを持ち、周囲の様子を見ながらソウリューが隣でぼやく。

 毎年参加しているであろう彼にとってこの光景はどうやら滑稽に見えるらしい。

 

 

「まあ、解放祭ほど各国の代表が全員集まるのなんてなかなかないですし、同盟のお陰でお互いに友好的にしていますから、表面上は。」

 

「表面上、なんですか?」

 

「同盟を提案したのはアリオクレイアの女王 紅玉。アリオクレイアと虎人が治める国であるミザルイスと竜が治める国であるメラジーンは即同盟参加を表明した。元々仲が良かったんだ、王族同士の交流はあったからな。

 精霊と妖精の国メグレスフィと魔族の国ベネトシュラは完全に認めたものとしか交流をしないアリオクレイアよりももっと閉鎖的な国だったんだが、両国の王が英雄サマを気に入って同盟参加に二つ返事でOK。

 更にフェクロードなんかは英雄サマを慕っていた者達が作り上げた国で英雄を王にしようとしてたところを逃げられたからこの同盟参加は言わずもがな。」

 

 

 ソウリューの説明を聞き、あれ?と飄舞は首を傾げていた。

 首を傾げたくなるのもわかる。

 六カ国とも表面上ではなくちゃんとした友好関係を英雄という共通人物によって築けるのではないかと思ったのだろう。

 同盟参加もすんなり行われているようだし。

 

 

「問題は、人間の国ドゥーベスタなんだよ、飄舞。」

 

「えっ?」

 

「あの国は自分達人族以外を見下してる、ずっと昔からな。なのに奴等は同盟に参加した。自分より劣っていると思っている他国との同盟に。しかも、参加したはいいがこの解放祭以外ではまったく他国との交流を持たない。」

 

「それって…。」

 

「英雄殿に…神の力をその身に宿す神子様に目的があるから参加してるということでしょうね。」

 

 

 自分の淡々とした言葉に慌ててこちらを見上げるのを視界の端で捉えた。

 視線の意味を察し、大丈夫だというように飄舞の頭を優しく撫でると安堵したような笑みを浮かべてくれたことにホッとする。

 

 その時、各国の代表者の準備が整ったのか出入り口に立つ文官が名前とともに入場を告げると会場は静かになり、皆目上の者に対しての礼を取った。

 

 

 

 

「そういえば、今回のドゥーベスタの代表者、いつもの宰相じゃないぞ。」

 

 

 礼の体勢のままソウリューが側に寄って小声で告げてきた言葉にどういうことだという視線を向けた。

 あそこは毎度胡散臭そうな顔の宰相がやって来ていたはずだが。


 

「顔をベールで隠した小柄な女と騎士だ。…気を付けていた方がいいかもな、俺の勘だが。」

 

「っ…。」

 

 

 数日前に降りた父からの神託が思い出される。

 あの時確かに人族に気をつけろと言っていた。

 目線を上げ、入場してきた一団を見ればやはりドゥーベスタの代表者はソウリューがいった通り、ベールで顔を隠した真っ赤なドレスを纏う小柄な女と純白の鎧を纏った男。

 本当に嫌な予感しかしない。

 

 

「最後にアリオクレイア女王紅玉様、異界の巫女レナ・スメラギ様のご入場です!」

 

「っ!?」

 

 

 最後に告げられた名前にすぐさま顔を上げ、周りも驚いたようにざわめく。

 そんな場所にアリオクレイアの正装を纏った女王に連れられるように一人の少女が入っていくる。

 

 黒髪黒目の小柄な見た目の貫頭衣に似た服装を纏った少女とは隣の女王と楽しげに微笑んでいる。

 異界の巫女、それは情報屋がとてもよく知る人物。

 

 

「何故いるんです…母さん…。」

 

 

 周囲にも聞こえたかどうかで呟かれた言葉。

 同時に分かる、父の残した言葉の意味。

 

 人族に気をつけろとは確実に母である異界の巫女が関わっているのは間違いない。

 でなければあんな神域でもない場所に簡易の結界で作り出した神域を作ってまで滅多にやっては来ないのだから、あの人は。

 

 すぐにこの会場にいるであろう子飼い達にだけ通じる音で指示を出す。

 多少の音の中でも拾えるように訓練はしている。

 

 最大級の警戒を、代表者の異界の巫女の警護を最優先に、と。

 

 すぐに了承の音が四方から微かに聞こえた。

 後は自分の正体がバレない程度にどう動くべきか、特に異界の巫女にバレるのはいろんな意味で不味い。

 自分の行動範囲、それが現状で一番頭の痛い問題だった。

 

 

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