城々根からの相談
「先輩、ほんとに来てくれたんですね。正直来てくれないと思ってましたよ」
「まあな。行かないと何されるかわからんしな」
行かないと後が怖いからな。
「ねえ先輩、今日の私どうですか?」
そう言ってくるりと回りだす城々根。何かを言って欲しいのだろうが、俺にはあざといとしか思わない。
「あざとい」
「むー、それだけですか?なんか他にないですか?」
「城々根の私服見たことなかったから、新鮮でなんかいいな」
「ふぇ?!そうですか。ありがとうございます」
めちゃくちゃ顔を赤くして俯いてしまった。めちゃくちゃ怒ってらっしゃる。そんな怒るなんて悲しい。
俺は一人で落ち込んでいた。
「そういや、今日はなんか用があったのか?荷物持ちならやるぞ?」
「いえ、今日は先輩に相談があって、呼びました。迷惑でしたよね?」
誰から見ても落ち込んでいる城々根だった。
「まぁ丁度妹に、たまには外にでたら?って言われたからむしろありがたかったぞ?だから迷惑じゃなかった」
「それ、嘘ですよね?それでも、気をきかせてくれてありがとうございます。先輩もあざといですね!」
「あざとくねーわ。それで、相談ってなに?」
「ここじゃなんですから、どこか喫茶店に入りましょうか」
「了解」
そう言って俺と城々根は喫茶店に向かった。
喫茶店に着き、落ち着いてからメニューを見た。
「城々根はなに飲む?」
「私はミルクティーお願いします」
「了解。すみませーん、コーヒーとミルクティーお願いします」
「かしこまりました」
そう言ってオーダーを聞いた従業員の人は戻っていった。
「それで、相談ってなに?」
「すいません、長くなると思うんですが、大丈夫ですか?」
「聞くだけならな」
「私、バイトして半年くらい経つんですけど、貯まったお金で友達の誕生日プレゼントを買ったんですよね〜。しかもそれなりに高いやつ。そしてその子の誕生日の日の昼休みにプレゼントあげたんですよ。その時は受け取ってくれたんですけど、昼休み終わる頃にゴミ箱みたら、袋から開けないまま捨てられてたんですよね〜。それみた時は悲しくなりましたけど、なんで捨てたのとかは聞かなかっんです。後日、話しかけても無視されるは、しまいには私がいない所で悪口言ってて、泣きそうになりました。その子、高校入って初めにできた友達だったんですから。その友達のためにバイトしてプレゼント用意したのに、友達だって思ってたの、私だけだったみたいです。それから、なんで私はバイトしてるのかなぁとか思ったりしてしまいました」
淡々と話していた城々根だったが、最後になるにつれ、どんどんと涙が溢れてきていた。そりゃーそうだろう。期待して裏切られる気持ちは一番俺が分かってるからな。
「なぁ、これは俺の話なんだが、城々根聞いてくれるか?」
「……はい」
「俺も中学の時は、人に期待してた。話しかければその気になって、自分では友達だと思い込んでた。ほんとは全然違ったんだがな。パシリや荷物持ちとかさせられてたっけな。でも俺はそれでも友達だと思い込んでたんだよな。まぁ使えなくなるといじめの対象に変わったんだがな。その時に、期待を裏切られ悲しかった。その時から俺は人に期待しないことにした。裏切られるのを知ってるからな」
「先輩もそうだったんですね。でも私……」
「まあな。なぁ城々根。そんなのは友達だと言えるのか?俺はそんなの友達だと思わない。まぁ城々根がそいつらと仲良くしたいっていうならとめないがな」
「どうしたらいいんですか?」
「俺に聞かれても困る。でも、これだけは忘れないでほしい。自分を馬鹿にしてるような奴らと仲良くするより、城々根が信用できるような人を見つけた方がいいと思うがな。まぁ俺は知らんけども。まぁ幸いにも城々根には社交性があるんだからな」
「先輩、ありがとうございます。先輩に相談してよかったです」
城々根は泣きながらお礼を言ってきた。少しでも力になれたのならよかった。というか、早く泣きやんでほしい。はたからみたら俺が泣かせてるみたいになっちゃってるから。
「なぁ城々根、そろそろ泣きやんでくんないか?俺もその、困るっていうか」
「すみません先輩。でも止まらないんです。勝手に流れてきちゃいます」
「それなら仕方ないな。ってそれじゃあ困る。俺が泣かせてるみたいになっちゃうじゃねーか」
「先輩が泣かせたんですよ。先輩があんな事言わなければ。でも、そろそろおさまってきました」
「ならよかった。後な、俺は城々根にはバイト続けてほしいと思ってる。だって城々根は俺の先輩なんだからさ。これからも色々教えてくれないと困る」
「ふふ、わかりました。しょーがないからバイト続けることにします」
「おう。これからもよろしく」
「はい!」
「それじゃ、そろそろ帰るか」
「ちょっと待ってください。この後用事ないんですよね?ならショッピングしに行きましょうよ!」
「めんどい、疲れる」
「いいじゃないですか。行かないと、泣かせられたって校内放送しちゃいますよ?」
なんて卑怯な。ある事ない事言われるだろ絶対。そう言われては断ることができないじゃねーか。
「よし、すぐ行こう。今すぐ行こう」
「はい!」
俺たちはショッピングモールに向かった。
「それでなにを見て周るんだ?」
「えっとですね〜。服を見ていこうかなぁと。そろそろ服買いたかったですしね。今回は先輩に決めてもらいたいですし」
「俺に服を決めてもらうとかなに言っちゃってるのこの子。はっきり言って俺にはファッションのセンスはないぞ?」
「それでもです。先輩に決めてもらいたいんです」
「お、おう。わかった。でも、期待はするなよ?」
「はい!初めから期待なんてしてませんよ!」
期待してないなら自分で選んでくれよまったく。
「先輩、こんな感じはどうですか?」
そう言って見せてきたのは水色のワンピースだった。シンプルなのがまたいいなと思った俺だった。
「まぁいいんじゃね?というか城々根は可愛いんだからなに着たって似合うと思うぞ?」
「可愛いって言われちゃった」
めちゃくちゃ顔を赤くして下を向く城々根。
また怒らせたみたいだな。そんな顔を赤くして怒んなくてもいいじゃん。
「ならこれにします。ちょっと待っててくださいね。買ってきますから」
そう言って城々根はレジに向かう。
まあなんだ。城々根を泣かしちゃったし、何か買おうかなと思った俺は、会計が終わった城々根と雑貨屋によった。
「少し待っててくれ。妹に何か買うからさ」
「わかりました。ならここで待ってますね!」
「おう!」
そう言って俺は中に入っていった。探してる時、ふと目に入ったものがあった。それはヘアピンだった。何故かその時はこれが城々根に一番似合うと思い、そのままそれを買うことにした。買い終わり城々根の元に戻った。




