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ぼっちな俺だがラブコメな日常  作者: こめっこぱん
どたばたな一週間
10/58

ほんとーの事を話した俺は

 「ーー光太、起きて。起きてよ~!」


 何度も肩を揺すられ、嫌々目を覚ました俺は、なぜここに咲久野がいるんだ?と思った。ていうか、せっかく人が気持ちよく寝ていたのに、起こすなよ!と少し苛立っていたが、外を見るともう太陽が沈んでいて夜になっていた。それを見て、苛立っていたのがおさまった。


 「起こしてくれてサンキューな。それじゃ、夕食食べに行くか」


 俺は、重い腰を上げて咲久野と一緒にリビングに向かった。リビングにつくと、いきなり綺羅星先輩が話しかけてきた。


 「野雫目くん!朝あったこと、もうひろまってたよー!何があったんだい?お姉さんに言ってみなー!!」


 「そうだぞ、野雫目。上級生のところまでその噂が流れていたから、なんかあったんだろ?話してみろよ。少しは楽になるだろ」


 綺羅星先輩も国見先輩も俺の事を心配してくれている。いつもは変な先輩なんだがな。と思いながら、俺は、この人たちにならほんとーの事を話しても分かってくれるんじゃないかと思った。


 「わかりました。咲久野に教える約束してましたから、ついでに先輩方にも教えますよ」


 「なら早く教えてー!」


 綺羅星先輩が急かすので、俺は急いで話すことにした。


 「昨日の帰りに、俺は一人で本屋に行こうとしました。するとそこにナンパされていた少女がいたので、その少女を助けることにしたんです。ちょっと強引に腕をくんでその場を後にしたんですが、それを同じ学校の人に見られてて、朝その事について言われたんですよ。俺だけならまだよかったんですが、少女の悪口まで言っていたので、少し腹がたって噂になった事を言ったんですよ」


 「そんなことがあったのか。大変だったんだな」


 国見先輩は俺の話を聞いた後、俺の頭を撫でてくれた。それがとても嬉しかった。


 「野雫目くんは全然悪くないじゃないか!」


 綺羅星先輩は、いつも変なこと言っている先輩の姿はそこにはなかった。少し他の人に怒りを覚えているような口調だった。


 「光太はナンパされていた人を助けただけじゃん!」


 咲久野も少し怒っているみたいだった。

 俺の事を本気で心配してくれる先輩方や咲久野に、俺は嬉しくなった。


 「学校ではこの事は誰にも言わないでください。お願いします」


 俺は頭を下げた。


 「なんで?光太は全然悪くないんだよ?いった方が光太がいじめられることないじゃん」


 「それでもだ。言わないでくれると助かる。そもそも、クラスでも最低ぞこの俺の事を、先輩方や咲久野がなにを言っても意味ないですから」


 俺の事を庇うと、逆に先輩方や咲久野がいじめの対象になる。と思った俺は絶対に言わないように促した。先輩方もわかってくれたのか、言わない!と約束してくれた。


 「ほんとーにそれでいいの?」


 咲久野はいまだに心配してくれているが、俺は大丈夫。とだけ返した。

 その話をしたことで、皆暗くなったため、夕食も喉を通らなかった俺は、自分の部屋に戻った。ベットのなかで今日先輩方や咲久野に言われたことを振り返る。正直いって嬉しかったのだが、まだ先輩方を信用することはできなかった。俺はそのまま眠りについた。


 ーーいつも通りの朝を迎える。当然咲久野は俺のベットで寝ている。そういえば昨日、ルールを決めようとかって言ったけど、結局決めることできなかったもんな。それじゃ、仕方ないと思い、俺は咲久野を起こした。


 「咲久野、早く起きてくれ」


 咲久野の肩を揺する。咲久野は目を擦りながら起きた。


 いつも通りの日常が再開した。学校に行けば悪口を言われる。自分でやったことだから、そうなってもしょうがないと思っていた俺は、予想通りの結果だったため、そこまで辛くはなかった。


 そんな学校が終わり、今は帰宅中である。隣には勿論咲久野がいる。


 「帰ったら、忘れないようにまずルールを決めようぜ」


 「わかった!」


 あまり口数が多くなかったため、沈黙状態が続いた。それでも俺は、その沈黙が苦ではないと感じていた。


 ーー寮につくと、俺たちはそのまま部屋に向かい、ルールを決めることにした。


 「まずは寝るときなんだが、一人で寝てくれると嬉しいんだが、まだ無理だと思う。だから、俺は最初から床で寝るから、咲久野は俺のベットを使ってくれ。咲久野は、自分の部屋から布団を持ってきてくれ。多分一度も使ってないやつがあると思うから」


 「寝るときも、一緒がいい」


 咲久野は駄々をこねるが、これだけは譲れない。一緒に寝たら、俺の精神が持たないからな。


 「それは無理だ。普通は、男女が一緒のベットで寝るなんて事はありえないからな」


 「やっぱりそうなんだね。ーーわかった」


 なぜか落ち込んでいた咲久野だが、俺はそれを無視し、話を続ける。


 「お風呂に関しても、やっぱり俺と入るべきじゃない。そもそも、男女で風呂にはいるとか、一歩間違えれば警察沙汰だからな」


 「でも、私一人でお風呂に入れないもん」


 「そこが一番の問題なんだよなぁ......綺羅星先輩とかに頼んでみるか」


 「綺羅星さんはやめて。怖いもん。私、光太以外と入れないもん」


 なぜ男の俺と入るのは大丈夫で、綺羅星先輩は無理なのだろうか。まあ確かに、あの人と風呂に入ったら、色々と疲れるとは思うがな。

 一方咲久野の方は、なぜか泣きそうになっている。


 「ならこうしよう。今まではお互い隠さずに俺だけが目隠しをして入っていたが、これからは水着を着て入ることにしよう。そうすれば全然大丈夫なはずだ」


 「水着か......私持ってないんだよね。海に行くことなんてないしさ」


 「そうか......なら明日買いにいこうぜ!」


 「明日は、養成所でレッスンがあるから無理かな」


 「そっか、ならしょうがないか。買いに行けるまでは今まで通りに風呂に入るか」


 「うん!!」


 咲久野は嬉しそうだった。俺と風呂に入ることがそこまで嬉しいことなのか、と思った。ていうか、裸を見られていいのかよと今更ながら思う俺であった。


 「そういえば、養成所ではどうしてるんだ?一人だと泣いちゃうのに、ちゃんと出来てるのか?」


 「なぜかわかんないんだけど、養成所にいくと、一人でもなかないんだよね」


 なんでだろ?と咲久野は首をかしげていた。


 「自分でもわかってないのかよ」


 なんじゃそりゃ、とあきれていたが、養成所では頑張っていることに、自分自身の事じゃないが、嬉しくなった。


 「今、どんな感じなんだ?」


 「筋がいいね、って言われてるよ!一週間後には主役の子のオーディションに参加しない?って言われてるんだ。だから、主役になれるよう、頑張る!」


 筋がいいって言われてるのか。正直、驚いたわ。声優としてデビューしたら、今の関係は終わってしまうんじゃないか。頭のなかでそんなことを考えていた。


 「悪い、もう寝る」


 「ーーわかった。少し待ってて、今部屋から布団持ってくるからさ」


 俺も一緒に咲久野の部屋にいった。布団をもち、自分の部屋にもどる。

 俺はもう眠りに入りたかった。目標がない俺とは対称的に目標がある咲久野。俺は正直、咲久野の事が羨ましいと思った。咲久野だけじゃない。この寮にいる人全員だ。皆なんらかの目標がある。


 「こんなんじゃ、だめだ」


 小さい声で言ったそれは、隣のベットで寝ている咲久野にも聞こえなかった。

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