3-16 愚犬呼びし遠咆
-西暦2079年5月28日13時40分-
大葉やアキラ達の訓練は順調に行われていた。
大葉の個人訓練メニューに関しては、早くも環とのセットが義務付けられてしまっている。
柔らかい、と言うよりは些か頼りない彼が環に振り回される、そんな光景が各所で目撃されている。
アキラはというと、山中が用意した専用兵装の慣熟訓練に熱を入れていた。
彼の特性を十全に活かせる仕様で作られたその兵装であったが、当然ながら馴染まない内は振り回されるだけであった。
だが使えば使う程にその性質を理解したアキラが手綱を握り始め、今では山中の想定を超えた運用を見せつつある。
木村は文句一つも言わずに、そつなく訓練メニューをこなし続けている。
しかしここまでと変わらないのは、決して実力の全てを見せようとはしない事である。
技術班ですら彼の機体特性は未だに解明出来ないままでいる。
郁朗の発電能力の様に数値で表し易い特性なら兎も角、EOの特性というものは自己申告にて発覚するという事を皆が理解していた。
故に本人が判らないと言う以上、調べ様が無いのである。
千豊達上層部にしても、彼が蜂起した場合にそれが最大の懸念材料になるのは判ってはいるのだ。
だが現時点で木村を刺激して余計な騒動は巻き起こしたくは無い。
そう考える彼女達の意向により、彼の手の内を強制的に明かさせるという事は避けられていた。
ただし格闘訓練時の傾向から、機体の動作に関する特性が発現しているのは間違い無いであろうと、郁朗から技術班に報告が入っている。
技術班は特定する為のデータを些細な物も逃さずに収集し、少しづつ蓄積され始めたそれがようやく解析の足掛かりになりつつある、というのがこの件の現状であった。
(あれからも木村自身は動く気配が無いんだよなぁ……外からの動きがあるまでこんなピリピリした生活が続くのかな……キツいったら無いや)
郁朗も表面上は飄々とした態度で木村に接している。
だが彼が監視対象である事を考えると、その挙動を一つとして逃す事は出来な為、郁朗のストレスは積み上がり、彼の心を蝕みつつあった。
そのストレスの捌け口はというと……
「ギブギブギブギブギブギブギブギブギブギブッ! 勘弁してくれッ!」
ダブルチキンウイングとレッグロックを掛けられた上、そのまま背中から圧力を掛けられて寝転がってしまった環。
彼の断末魔にも近い悲鳴が演習場に響き渡る。
郁朗の溜めに溜めたストレスは、環との格闘訓練によってあっさりと消化されていた。
要は体のいい、ただの八つ当たりある。
「タマキは相変わらず腕を取られるとすぐ詰んじゃうね。もうちょっと捌き方を覚えた方がいいよ?」
「やれたら苦労しねぇっての。アキラと一緒にすんじゃねぇよ」
「タマキ……お前、もっとイクローさんの動きを……ちゃんと見た方がいいぞ……力の使い方が物凄く参考になる……腕を弾こうとするだけじゃ……だめなんだ……」
側で見ていたアキラが環に積極的にアドバイスをしてきた。
「じゃあどうすんだよ?」
「もっとこう……」
アキラが環の腕を取り、腕を組み合わせる。
「流す感じで……そう……それをもっと早い……動きに合わせて……」
アキラは基本的に物静かだが、面倒見の良さは隊内随一かも知れない。
郁朗に限らす、組織の人間達複数がそう思わせるケースに度々遭遇している。
喋り方はハキハキしていないのだが、コミニュケーションはきちんと取り相手を蔑ろにしないのだ。
口数の少なさも言葉を彼なりに懸命に選んでいるからであって、何か含む所がある訳や冷たい態度の現れ等では決して無い。
むしろどちらかと言えば人懐っこく、郁朗は物静かなのだが寄り添ってくれる大型犬、という印象を彼に持っている。
今では大葉も彼に教えを請い、格闘技能が少しづつではあるが確実に上向きになりつつあった。
その大葉は木村と相対していたが、投げられて地面に背中をつけた所だった。
「……受け身を取れるとこうも違うものなのかぁ……アキラ君様々だなぁ」
彼自身もそれを実感している様で、なんとなく格闘訓練を受けるのが楽しくなりつつある様だ。
「さて、今日はちょっと早いですけどそろそろ上がります。各自メンテナンスを受けてから座学を――」
郁朗が訓練の終了を告げようとした時に、滅多に流れる事の無いアジト内の放送が演習場のスピーカーから響く。
「藤代さん、大葉さん。至急オペレータールームへ。至急です」
「大葉さん、急ぎらしいので行きましょう。タマキ、木村さんとアキラと一緒にメンテを先に済ませておいて」
「あいよ」
郁朗はチラリと木村の方を見るが、特に動じた様子は無い。
彼絡みの騒動なのかも知れないという予感を胸に、大葉と共にオペレータールームへ直行した。
到着した郁朗達を待っていたのはオペレート班の班長・鹿嶋、それと間崎であった。
「一体何があったんです? 放送まで使って呼び出すなんて」
「えっと、えっと、えっとね、イクロー君。あの、あの、あの、あのね」
「中学生かお前は。落ち着けよ、鹿嶋。班長のお前がそんなんじゃ話が進まねぇじゃねぇか。スマンな藤代、コイツはイレギュラーに弱くてよ」
「あう……ゴメンナサイ。あのね、今日うちの班の子が街に出てるのは……」
「ええ、知ってますよ。長瀬さんが楽しみにしてたみたいですから」
「それでね、その……うちの副班長の柳原がね……居なくなったらしいの……」
(柳原さんて……ああ、あのメガネ美人さんか)
女性にしては長身でスタイルも良く仕事も人並み以上にこなし、班長である鹿嶋をしっかりと支える才女というのが周囲の評価である。
一部の人間から完璧超人とも呼ばれる彼女の事は、郁朗も何度か会話を交わした事があるので知っていた。
そんな人間が音沙汰も無く居なくなる。
これは何らかのトラブルに巻き込まれたとだろうと郁朗は判断した。
「それがただの迷子じゃないから僕達を呼んだんですよね?」
「話が早くて助かるぜ。これは一応部外秘なんだがな、俺達の身体の中にはナノマシンが存在している。感染症の予防接種って名目で全員が射ってるんだが、このナノマシンがPPSナノマシンって訳だ」
拉致や裏切りの可能性を考えれば十分想定内の措置だと郁朗も考える。
一見監視されているとも取れるのだが、曲がりなりにも反政府組織なのだ。
互いの位置情報の確認は勿論、皆の信用や業務遂行の為にも必要な物なのだろう。
「それは判りました。で、柳原さんは今どこに?」
「長瀬が泣きながら連絡してきたから、こっちの端末で柳原のPPSを追跡したの……そうしたらゆっくりとしたスピードでEブロックの南側廃棄地区に向かってるみたいで……」
「考えられるのは木村が何かしでかしたって事なんだが……まだ状況は判らねぇ」
間崎の推測に郁朗も頷く。
「ただこのまま柳原を放置って訳にもいかねぇんだ。オペ班の副班長ってなると、アジトに関して持ってる情報も下っ端とは桁違いだからな。本人が喋る気は無くても、薬を使われちまったらどうしようもねぇ」
(それで僕と大葉さんって訳か)
救出に赴くのにEOである必要性は無いかも知れないが、万が一重火器でも持ち出されれば並の兵力では歯が立たない。
そしてEOの出動を前提とするならば、広範囲索敵要員として大葉は外せない。
そして間違いなく想定される対人戦闘。
経験は少ないながら、実戦での対人戦闘・制圧のキャリアを持つ郁朗に、その白羽の矢が立つのは当然と言えた。
「判りました。拙速でいいので、今すぐ動きましょう。間崎さんの所の人、一分隊借りてもいいですかね?」
「おう、元からそのつもりだからよ。対人戦の強いのを地下の駐車場に集めておいた。そいつらを連れて行ってくれ」
「PPSを追跡して近隣まで移動、大葉さんのレーダーシステムで正確な位置と相手の人数を含めた周辺情報の確認。突入して制圧。このくらい単純な方がいいでしょう。柳原さんはPPSの事は?」
「勿論知ってるわ……彼女が転向したり裏切るなんて事は……絶対に無いの……私達の助けを信じて待ってると思うから……お願い……イクロー君……」
鹿嶋はそう言うとヘタリと椅子に座り込んでしまった。
「大丈夫です。PPSの事を知ってる人間がですよ? 裏切るのにこんな簡単に追跡を許す訳が無いじゃないですか。そうでしょう?」
鹿嶋は青い顔をしながらも、自分にも言い聞かせる様に頷いた。
彼女が落ち着いた事を確認した郁朗は、大葉へと向き直り頭を下げた。
「大葉さん、こんな短期間の訓練でいきなりの実戦……それも対人戦闘のある現場に連れ出す事になっちゃってすいません。でも……あなたの力が必要なんです。力を貸して下さい」
「私なら大丈夫だから、そんなに謝ったりはしないで欲しいかな。私はもう、ここの一員なんだって思ってるよ。仲間が危ない時に自分の力で役に立てるなら、そんなに嬉しい事はないんだから」
「……大葉さんがいてくれて心強いですよ。頼りにしてます」
大葉と部屋を出て行く最中、郁朗は間崎とのすれ違いざまに、懸念材料である木村の事についての念押しをする。
「間崎さん、これが木村の件なら間違い無く何かを仕掛けてきます。何があっても良い様にだけは……」
「ああ、判ってる。その場合雪村と中条は俺が預かるって事で構わねぇな?」
「はい、お願いします。じゃあ大葉さん、行きましょう」
郁朗と大葉は足早に地下駐車場へ向かう。
背後のオペレータールームから、間崎が大声で何か指示を出しているのが聞こえてくる。
だが今の郁朗にはその内容に気を留めている時間は無かった。
二人が地下駐車場に着くと、そこには間崎の小隊の戦闘班員が六人、車両への機材や物資の積み込み作業を急いでいた。
郁朗が分隊長と思しき男性に声をかける。
「お疲れ様です。僕達の装備も?」
「ああ、間崎の大将に言われてるからな。重火器は必要無いって事でいいんだよな? 新型の粘着硬化弾と予備弾倉、そんで大葉さんの生体レーダーユニット。後は念の為にお前らの強制駆動燃料だな。こんだけしか積んでねぇんだが、問題無いか?」
「十分です、ありがとうございました。じゃあ行きましょう」
郁朗と大葉は礼を言うとそのまま車両に飛び乗った。
間髪入れず車両のモーターに火が入り、猛スピードで地上へ続く勾配を走りだす。
生身の人間の砕ける様を前回の作戦で目にした郁朗にとって、柳原の安否は重いものなのだろう。
(情報なんてどれだけ漏れても構わないから……なんとか無事でいてくれ……)
そんな彼の想いと共に車両はスロープを駆け上がり、地上へと飛び出した。
一時間後、郁朗達は廃棄地区とCクラス地区の境目ギリギリの街道におり、PPSの反応を目標にして猛追していた。
十分おきに本部からは柳原の位置情報が届けられ、直近の報告でPPSの移動が停止したと伝えられている。
想定されていた通りにEブロック南側廃棄地区の西端で反応が止まっており、今はそこに目掛けてモーターが焼ける勢いで車両を走らせている。
PPSナノマシンは注入された本人の血流によって発電して稼働している。
その為保持者が死亡した場合には、心停止後一分もしない内にその動作を停止する。
PPSの反応がある内は生命の問題には至っていない、という事が郁朗達の精神的な面で好材料にはなっている。
但し、生命の無事は確認出来ても何をされているかは判らないのだ。
車両に乗っている全員がジリジリとした焦燥感に襲われながらも、とにかく今はポジティブに思考し柳原を救出する事だけを考えている。
「反応のある地点まであとどの位です?」
『このまま全力で飛ばしてあと二十分もかからないって所だな。5km手前で減速を開始、救出準備の段取りにかかる。プラスでもう少しかかると思っていてくれ』
「了解です。大葉さん、車両が減速を開始したら、レーダーユニットの起動。強制駆動燃料も使って発電効率を最大まで上げて下さい。それで5kmは届きますよね?」
「問題無いよ。山中さんから貰った仕様書だと最大索敵半径は、強制駆動燃料を使っておおよそで7km強あるらしいから」
「お願いします。PPSの反応の周辺にある生体反応を全てピックアップして下さい。建物の中の様なら、出来ればでいいので詳細な位置情報も頼みます」
「判った、出来るだけやってみるよ」
こうして細かい段取りを終え、減速地点へと到着。
間崎の小隊の人員が兵装のチェックと準備を始めた頃、大葉も強制駆動燃料を装着しレーダーユニットを起動させて情報収集を開始する。
一見すると大葉が黙って俯いているだけに見えるが、彼とレーダーユニットは莫大な量のミリ波のやり取りを行っていた。
「……………………来た。建物の中に居るみたいだね。生命反応は……PPSの反応が柳原さんだとして……三……四……七……うん、七人だ」
分隊長を除いた戦闘班の人間達は、その言葉の時点であんぐりと口を開けて大葉を眺めていた。
「位置関係はどうなっています?」
「建物が何階建てかまではちょっと。さすがにマップデータが揃って無いから、細かくは判らないんだけど……高さが十メートル弱の所にあるから……柳原さんとその周りに三人、建物の三階辺りにいるね」
更に別の何かを探るっているのだろう。
情報を映し出している彼の増加装甲のバイザー越しに、大葉のカメラアイが薄く光った。
「残りは高さ0メートルで建造物外、二人ずつが二組。片方は動かないでじっとしてる。もう片方は三分周期ぐらいで、十五メートル四方の経路を動いてるから……こいつらは建物の見張りと哨戒なんだと思うよ」
大葉からもたらされる情報の細かさに分隊長と郁朗すらもポカンとし、一同は言葉を失っていた。
差し当たっての情報は全て出尽くしたと判断したのだろう。
バイザーを上げた大葉が郁朗達のその様子に直面すると、少し困惑を覚えている様だ。
「…………どうしたのかな? 皆さん黙っちゃってるけど……私、何かしちゃったかな?」
「大葉さん……あなただけは敵に回したくないですね……」
「え? え?」
「話は間崎の大将に聞いてたが……うちの分隊は雪村の的になった事がねぇからな。これ程とは思わなかったわ。いやぁ、確かに藤代の言う通りだわ……」
大葉は未だに理解が出来ていない様で、頭の上に疑問符を飛ばし続けている。
自分の仕事の意味を理解して貰う為に、仕方なく郁朗は説明を始めた。
「えっと、よく考えて下さいね? 大葉さんがレーダーユニット無しで、タマキと狙撃作戦に参加してるとします。狙撃準備を整えていると敵にその位置は全部バレていて、逆にそこを適切な戦力で狙撃されるんです。怖いと思いません?」
「怖いけど……あ!」
「そういう事なんですよ。今回の作戦でも相手は何人いるか、どういう配置でどう動いているか、そんな事が全部こっちに筒抜けになっちゃってるんです。攻める側としては作戦が立て易くていいんでしょうけどね。攻められる側からしたら……」
「たまったもんじゃないね……」
大葉は想像をする事が出来たのか、身体を掻き抱く様にしている。
「今でも大概凄いのに、もう一段階上の構想もあるって言うんですから……どうなっちゃう事やら……」
「そういえば山中さんが言ってたんだよね……個人や車両で携行出来るレーダーシステムで、ここまでの精度を出せる物は自分の知る限り存在しないって……いやいや、これがそんなに凄い物だとは思わなかったよ……」
(いやいや。凄いのは大葉さん、あなたですからね?)
大葉以外の全員の気持ちを心で代弁した郁朗は、それとは別に改めて山中という男の紙一重ぶりを実感するのであった。
目標地点の1km手前で郁朗と分隊員四名は降車、作戦行動を開始する。
大葉と分隊員二名は不測の事態に備える必要性ありとの判断で、車両の周辺を索敵、新規に敵対勢力が現れないか車両の警護を兼ねて警戒にあたっている。
既にPPSの移動停止から三十分が経過していた。
薬物を使われているとすれば、何らかの情報が奪われていると考えるのに十分な時間である。
とにかく急げと二手に別れ、外にいる歩哨の制圧に取り掛かった。
郁朗は建物入り口正面に居座っている見張りを無力化する為、路地を挟んだ向かいの廃ビルの中から様子を伺っていた。
既に建物周辺を彷徨いていた歩哨は、別働隊が無力化に成功している。
今は彼等が建物の側壁に到着するのを待ってる所だ。
彼等が側壁から飛び出したと同時に、新型の粘着硬化弾で歩哨の武装を無力化。
飛び出した別働隊によって拘束されるというプランである。
粘着硬化弾の発射管を備えた左腕を構え、歩哨の武装へ向けて照準する。
別働隊が到着したのだろう。
側壁からそっと腕が伸ばされハンドサインでのカウントが始まる。
歩哨の二人は周辺哨戒している人員をアテにしきっているのか、正面だけを警戒しており全く気がついていない。
カウントが0になり分隊員が飛び出した瞬間に、郁朗の左腕の発射管から圧搾空気により粘着硬化弾が射出される。
今回用意されたのは散弾では無く、射程を伸ばした新型のスラッグタイプの粘着硬化弾であった。
ライフリングも切られている為、それなりの命中精度を誇っている。
ベシャリ
着弾と同時にスラッグのシェルが破砕され、粘着剤と硬化剤を吐き出した。
歩哨達の武装はサブマシンガンだったが、銃口から機関部までを紫色のコーティングに覆われ固着されている。
彼等は何が起きたか把握出来無い内に、更なる不幸に襲われた。
横合いから分隊員達にスタンロッドで電流を伴った打撃を見舞われたのである。
声を発する間もなく二人は身体の自由を失って地面に崩れ落ち、郁朗達に建物内部への道を開けてしまう事となる。
入口前で一度集結した郁朗達は、内部への突入策の段取りを打ち合わせる。
「こいつら軍人上がりじゃない。間違い無くそこらのチンピラレベルだ。動きが素人過ぎる」
分隊長が郁朗にそう伝えると、全員が頷いた。
「柳原の安全さえ確保出来ればどうとでもなる相手だからな、彼女の身柄は藤代に任せるのが賢明だろうよ」
との分隊長の一言で、外壁の窓から郁朗突入し柳原を確保。
内部から分隊員達が突入、挟み撃ちで一網打尽にするという事でまとまった。
万が一籠城でもされてしまえば、柳原の身の安全が保証出来ない。
そして何より時間のロスが一番怖かった。
ここで抜かれた情報次第では、アジトで一悶着あるのは間違い無いからだ。
通信ノイズが二回。
その合図で内部から分隊員達が突入、同時に郁朗が窓を割って外部から突入する段取りだ。
郁朗は一度大きく跳躍して二階の中程まで到達、壁に指を突き刺して壁面を登っていく。
目的の部屋の窓近くの足場で自重を支え、突入の合図を待つ。
ザザッ ザザッ
合図が鳴ったと同時に室内に飛び込んだ郁朗が見た物は、半裸にされ気を失っている柳原……そして彼女に裸で伸し掛かっている刺青をした男だった。
お読み頂きありがとうございました。
引き続きご愛顧頂けると嬉しく思います。
それではまた次回お会いしましょう。
2016.05.13 改稿版に差し替え
第四幕以降は改稿が済み次第、幕単位で投稿します。