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EO -解放せし機械、その心は人のままに-  作者: 臣樹 卯問
第七幕 真実の中に浮かぶ活路
138/164

7-5 相克、再び

 -西暦2079年7月24日08時35分-


 ガシャリ


 ガシャリ


 床を騒々しく鳴らす足音は、その者の硬質さと重厚さを指し示しているかの様であった。

 彼は急ぐ風でも無く、ローダーを使わずに九十九折に見える通路をただただ歩いて進む。


 進む道行きでは、所々開放されずに破壊されていたり、歪みきって放置された隔壁が存在していた。

 どうやら一号が階層から外へ出る為に破壊したのだろう。

 歪んだ隔壁は途中で破壊を諦めたものなのか、すぐ近くの通路の壁面自体が掘削され破壊されている。


「派手にやらかすもんだな。まぁ、お陰でこっちは楽に進めていいけどな」


 そこかしこにある防衛機構が片山を襲う事は無かった。

 動力をカットされたのか動作自体を停止している物もあれば、一号が破壊した痕跡の見える物もある。


 彼片山は急ぐ訳でもなく、ゆっくりと彼女の足跡を辿っていた。

 自分の伝言がアキラを通して二号に伝わっているのなら、彼から一号へと片山の襲来が伝えられるはずだ。

 今頃地下からこちらへ足を戻している可能性も高い。


 前回の襲撃の際の戦闘を省みる限り、彼女が搦手を使うつもりは無いだろうと片山は読む。

 それだけ自身の性能に疑いが無いのか、それともただ愚直なまでに目的に忠実なのか。

 片山にとってはどうでもよい事ではあるが、彼女と向き合う以上はどうあっても考えなければならない懸案であった。


 通路の終わりである二十七階層の階段まで辿り着くと、隔壁はどうやら上層へ向けて破られている様だ。

 単純に上層を踏破し屋上から外部へ出る方が早い……そう選択したのだろう。


「気が短いっつうか……いや……そんな娘じゃなかったもんな……」


 今一度、過去に依頼で会話した時の彼女……向井祐実の事を思い起こす。

 穏やかで線の細い娘だったと記憶している。

 母親と細々と生きてきたのに、何故こんな事に巻き込まれなければならないのか……そう小さく呟いた彼女のそんな言葉は、片山の心に小さく刺さっていた。


(あの時の後処理は先輩に任せたっきりだったが……もう少しやり様もあったのかもな)


 だが今更後悔したところで、彼女の今の境遇は何も変わる事が無い。

 せいぜい出来る事と言えば、真っ向から復讐の意思を受け止めて……その上で一号を止める事だろう。

 それが復讐する意思を霧散させる事なのか、それとも物理的に動作を止める事なのか。

 そのどちらになるのかは、片山にも今は予想がつかない。

 

 とにかく彼女と邂逅しなければ始まらないと、片山もまた屋上への道を選択する。

 一歩一歩、何かの覚悟を決める様に階段を登っていると、階下から自身とは違う硬質な足音がせわしなく響き始めた。


(早いな……もう来たか)


 晃一から聞いていたアキラの位置情報。

 その場にいたはずの二号が、晃一に頼んだ伝言を聞いてから到着するには短い時間と思える。

 彼に許容出来る最大限の速度でこちらに向かって来たのだろう。

 

 二号と彼女の関係性はもう一つ見通しがつかないものの、力による主従関係があるのは確かだった。

 彼による一号の力への宗教とも取れる盲信。

 いや、強い者に従うという本能なのだろうか。


 一号の命令がある限り、二号の介入は無いと片山は踏んでいる。

 わざわざ伝言を頼んでまでこの場へと呼んだ理由は簡単である。

 この決着に対する見届けを片山が望んでいるからだ。


 自身が敗けた場合はどうでもいいと考えており、一号が敗北した時に二号を納得させる為、と言った方がいいだろう。

 力量至上主義と思える彼ならば目の前で起こった勝ち負けに関して、安易に物言いを付ける事も無いはずという、そんな打算の上での行動であった。


 片山に追いついた二号は、十数段の階段を挟みカメラアイから殺気を飛ばす。

 濃密なそれを涼風でも浴びたかの如く受け流し、片山は彼に軽い口を利いた。

 

「よう、随分お早いお着きだな。生憎とまだ始まってないからよ。安心していいぜ?」


「…………」


「今この場でやり合うってんなら受けなくも無いが……あの嬢ちゃんが何て言うだろうな?」


「……チッ。一号は?」


「何だ、もう連絡済みかと思ってたぜ。俺もまだ嬢ちゃんには接触してない。上に向かってんのは確かみたいだがな」


 二号はその言葉を聞くと、ジャミングが解除された事を今更ながら思い出した様だ。

 慌てて通信を送っている様は、まるで子を想う親の様でもあった。


「…………一号が屋上で待っている。逃げるなよ?」


「失礼な奴だな、この身体を見て察しろってんだ。リベンジしに来たんだよ、リベンジ」


「なら早く行け……これ以上一号を待たせるな」


「まぁ、待ちなって。あんたには一つ約束して貰わんとな。俺が勝ちそうになってもだ、手出しはしてくれるなよ? これは要請とか命令とかそんなもんじゃねぇ。お願いってやつになんだろう。まぁあんたの事だ、どう言ったとしても一号が勝つとしか言わんだろうけどな」


「…………」


「あの嬢ちゃんが劣勢になってお前が手を出して、彼女が納得するとは思えない。どんな結果になるにしてもよ、俺との諍いはこれで終わりにしてやりてぇんだ。俺が負ければ嬢ちゃんの復讐は継続で構わん。だが、俺が勝てばもう手仕舞い。こういう形にでもしてやらにゃあ、あの子はいつまでも修羅であり続けるぞ?」


「……まるで負ける要素が無い様な口ぶりだな」


「当然だ。負けるつもりでわざわざこんな所に来るかよ。どうしてもそれを飲めないってんなら……屋上(うえ)に上がってから先にあんたとやったっていいんだぜ? その手足をもいで身動き出来なくしちまえば、そうそう邪魔も出来んだろ?」


「…………」


「俺の古巣の連中や今の同僚に手を貸してくれたからこその申し出だぜ? 普段の俺だったら問答無用であんたに襲いかかってブッ壊してる所だ。上に着くまで少しは時間があるしよ、少し考えてみてくれや」


 そう言い切った片山は二号に背を向け、階段を昇り始める。

 二号が片山から感じた気配は余裕という言葉でしか表せなかった。

 確かに以前の片山とは身体自体が違うという事もある。

 だがそれ以上に……纏っている気配が普通では無いのだ。


 それを感じる事が出来る二号という人物について少し語ろう。

 彼もまた、六号と同じく極東の暗部の人間として生きてきた男である。

 六号と違うのは一般人から暗部へと道を進んだのでは無く、生まれた時から暗部の住人であった、という事だろうか。


 強者が弱者を食らう。

 それが当たり前の認識として横行する世界、彼の生まれた廃棄地区というエリア。

 環の暮らしていた比較的緩やかな地域もあった様に、その全てがそうという訳では無いのだが、暴力が生活に直結する地域も存在したという事である。


 力無き赤子として生まれた落ちた彼の幸運の最たる所は、強者の庇護と教えを得られた事だろう。

 彼の父親はその腕一本で暗部を纏めあげてきた男である。

 企業からの依頼で表沙汰に出来無い事を起こす組織。

 現代社会で言うなれば傭兵団、もしくは民間軍事会社という言葉がしっくりくるのではなかろうか。


 そんな一団の中で幼少期から過ごしてきたのだ。

 彼がそんな世界で生き、その身につけた序列決め方は至極判りやすいものである。

 ただ強ければいい。

 彼はそれだけに注力して研鑽し続け成長、十代半ばを越えた頃……自身の父をも倒して組織を率いる立場に立ったのである。


 自身よりも強者である事を示さない限り、彼は誰の言葉も飲み込む事は無かった。

 そんな力量至上主義が二号の代になってより先鋭化した結果……彼を従わせる事が出来る人間が居なくなったのだ。

 当然組織の古株との軋轢がそこかしこで生まれたものの、歯向かう年長者の粛清を繰り返して見せる事でその声も小さくなる。


 だが声が小さくなった代わりに反逆者の暗躍が増える事となる。

 そして十数年の時間をかけて、組織は彼の知らない所から瓦解を始めていった。

 二号は見の置き所を失なったタイミングで機構に拾われる事となる。

 今以上の強靭な肉体を得られるという事で転化を即了し、一号と邂逅。

 初戦で完膚無きまでに叩きのめされた事で彼女の力に心酔、忠誠を誓った。

 技量差では無く性能差による敗北ではあったが、負けは負けとして受け入れるのが彼の流儀である。

 

 そんな彼が今、片山に対して感じているもの。

 その正体は幼少期に見た父親と同じ……戦う者だけが持つ絶対的な獣性と言っていいものであった。


 紛う事無き強者の気配。


 二号の戦う人間としての本能が、彼との衝突を欲し始めていた。

 だが彼の中には絶対者としての一号の存在もあるのだ。

 揺らぐ心境を鋭い気配として片山に向ける。

 

「…………」


「……何だ? 俺は男に尻を見られて喜ぶ趣味は持っちゃいないぞ?」


 この反応である。

 二号の視線に感づいた片山は前を向いたまま、軽くそうおどけてみせる。

 だが不用心に背を向けている様に見えてその実、後方への警戒を一切怠ってなどいないのだ。

 彼の胆力と慎重さを併せ持てる姿勢に、二号は驚嘆するしか無かった。


 二号は自身の中に存在する二つの欲求に苛まれながら、選択の時限である屋上への道を進んだ。

 そして……。


「おう、悪いな。遅くなっちまった」


 輝度の低い階段の照明とは違う、日中設定の都市照明の明るさ。

 それが片山のカメラアイのレンズを僅かに焼いたその先で……悪びれもしない彼の言葉に、一号は身動ぎもせずに彼を睨みつける事を応えとした。


「一号……済まない」


 片山に続き屋上に姿を見せた二号が、一号に対してかけた第一声はそれであった。


「……二号?」


「……そっちを選んだって事でいいんだな?」


 二号は片山の問い掛けに対し、無言のままの構えから拳を打ち出した。

 彼の中で闘争への欲求が、一号へ付き従う事への欲求を凌駕したのだろう。


「二号!!」


 二号の行動の意味を察した一号の怒声が屋上に暴風の如く響く。

 だが彼は己の闘争本能だけに従う事を決めた為、その聴覚回路に彼女の怒りが届く事は無かった。


 ゴウッ

    ゴウッ


 二号の拳の風を切る音が片山の顔のすぐ側を掠めていく。

 一号は始まってしまった戦闘を、困惑しつつも歯噛みしながら見詰めるしか無い。

 この戦闘への介入を片山が許さない事は明白だろう。

 ここに至るまでの道中、二号が彼から何らかの選択を与えられたのは口振りからも確かなのが彼女にも判断出来た。


 となると二号への攻撃は片山に止められるだろうし、二号を無視して片山を攻撃しようにも、それは正面からの決着を望む自身の妄執が許さないからだ。


「二号ッ! 手を引けッ!」


 そう叫ぶ事が精一杯であった。


 そして困惑していたのは彼女だけでは無い。

 彼女とは全く別の理由で片山もまた、困惑に襲われていた。


(不味い……この身体の反応の速さは何だってんだ? ハンチョーが言ってた何もかもが五割増しってこういう事かよ!)


 以前の身体とはまるで別物。

 その速過ぎる機体のレスポンスによって、逆に動きの精彩を欠いている。

 脳の描いているイメージと身体の動作の速さに相当な齟齬が生じているのがその原因であった。


 新しい身体への慣らしも無しに、覚醒からたった数時間で戦場に立っているのだ。

 無理も無い現象と言えるだろう。

 逆に考えるのならば、一号との開戦前に別の相手との戦闘の機会を得られた事は幸運だった。

 脳と身体のズレを解消するには物騒な相手であったが、今の片山の肉体はそれを物ともしないだけのスペックを持っているのだから。


 硬質化した二号の右腕のアンチショックジェルが、超重量の鈍器として振り下ろされる。

 片山は回避せずに真っ向から受け止めるつもりの様だ。


 二号は勝利の確信まではいかないものの、少なくないダメージが通ると確信した。


 ズシン


 交差させた両腕を頭上に掲げ害意を受け止めた片山。

 物理法則に則って彼に襲いかかった衝撃が、彼の身体を通り越して地面へと伝わる。

 片山の足元のコンクリートが衝撃を受けた事で剥離し飛び散った。


 このまま押し込めば潰せる、少なくとも抵抗出来ずに膝をつくはずだ。


 二号の脳裏にはそんなビジョンが映っていた事だろう。


 だが受け止められた二号の右腕は、それ以上深く沈む事は無かった。


「!!」


「速さだけじゃねぇ……馬力の方も……只の改修って訳じゃあ無さそうだなッ! ハンチョーッ!」


 倉橋への感謝とも言える気の入った声と供に、二号の豪腕を押し返し始める。

 ブラッドドラフトを起動していないにも関わらず、彼の強大な膂力へとあっさりと反発してみせたのだ。

 片山が思わず快哉の声を上げるのも当然だろう。


「悪いが嬢ちゃんとやり合う前に、あんたの身体で色々試させて貰うぜッ!」


 二号の重い腕を腕力だけで跳ね上げる。

 片山の腕との接触部分のアンチショックジェルには、焼けて削られた様な跡が残っていた。

 よく見ると片山の腕部装甲の形状が、先程よりもエッジの利いた形に変形しているではないか。

 その鋭角は赤熱化しており、溶かしたアンチショックジェルからのものだろう煙が上がっていた。


「……何だ……それは?」


「俺も詳しくは知らん。ただ使えるから使ってるってだけだ。さぁ続けるぞッ!」


 片山の腕部に存在するのは、形状変化を利用した高周波振動ブレードと呼んでよい物である。

 通電、もしくは伝達補正の為の補助神経回路からの命令を受けた装甲は、その形状を斬撃に適切なものに変更。

 極限まで薄くされた装甲鋭角の先端を、超高速変形を繰り返す事で振動させる。


 発生した振動は熱量を発生させ、物体を溶断するに至るという訳だ。

 これも新型装甲の硬度と靭性を伴う性能が無ければ、存在する事のなかったギミックだろう。


「だらッ!」


 裂帛の気合と供に振り下ろされる手刀……いや、それを通り越した野太刀の様な腕刀が、二号へと袈裟斬りに襲いかかった。

 

 高周波振動という武装に思い至らない二号は、衝撃を逃がそうと前腕部にアンチショックジェルを集め、厚さだけに任せた防壁として自身の前面へと展開した。


 溶断されるとしてもさすがにこの厚みさえあれば。


 その発想は戦う人間としての本能が生み出させたものだろう。

 確かに以前の片山の身体であるのならば、最善といえる防御手段だったに違い無い。

 だが現在の彼の攻撃を抑えるには悪手と言わざるを得ない。


 チッ!


 数瞬だけの接触音の後、訪れたのは静寂。

 素材の溶解した煙と供にアンチショックジェルは十戎の海の如く割れ、内部骨格とも言える二号の腕部本体を一瞬で露出させた。


「ッ!!」


 二号はただ驚きの呻き声を上げるだけであり、その隙は片山を相手にするには十分に致命的と言えるものである。


 片山は剥き出しになった腕部に狙いをつけると、打撃からの握撃、握撃からのサブミッションへと繋ぐ。

 彼お得意の関節破壊コースにより、二号の左腕の肘と肩は露出から僅か五秒で破壊される事となる。


 破壊される瞬時には痛覚を切っていたのだろう。

 二号が痛みに狂乱する様子は無かったが、彼からは明らかな焦燥の波動が浮き上がっている。


「どうせやめろっつっても続けるんだろう? ……後につっかえてんのをこれ以上待たせるのも悪ィ。身体の動かし方も解かってきた所だ。とっとと終わらせちまおうぜ」


 片山は腕部のみに展開していた高周波装甲を、あろうことか全身で展開してみせた。

 これは倉橋すら想定していなかった身体の使い方であり、『理論上は可能。だがまさかやるとは思わなかった』という類のものである。

 彼の天性とも言える戦闘センスが身体の使い方を学習、昇華した結果として生まれた戦い方なのかも知れない。


 片山の装甲の鋭角部に触れたものは、溶断される運命が待っている。

 片腕を失った二号は自身を襲ったショックからは立ち直りつつあったものの、難攻不落の要塞を思わせる片山に対して打つ手を無くしていた。

 だが戦人として足掻きたいと思う本能が、この闘争から引く事を拒絶させもするのだ。


 思考する事を捨て、身体の動くままに二号は仕掛ける。

 その所作はある意味、武人としては至る(・・)境地に達したのではなかろうかと思わせる程の……滑らかで自然な動きだった。 


 対する片山はと言えば……こちらは旺盛な闘争本能を静かな刃へと変えて迎撃の構えを取った。


 空気を巻く二号の一撃。

 その無心から放たれた右貫手は空を切る。

 彼の伸び切った右前腕へと、片山の腕刀のカウンターが斜線を残した。

 斬撃によって半ば程まで溶断された右腕は、アクチュエーターにまで損傷を受けその機能を半減させる。


 ゴウッ


 それは折り込み済みとばかりに、寸暇も与えずに二号は左足を放った。

 だがその攻撃すら完全に捉えられ、片山の右の腕に抱かれる事となる。

 

「終わりだッ!」


 指先まで高速振動させた彼の左の貫手が、EOの構造上の弱点の一つである場所へと真っ直ぐに打ち抜かれた。

 下半身の動作を司る腰部の神経回路が極々小さな破壊音と供に砕け、その役目を終える。


「機体の性能のお陰と言やあ……本当にそうなんだがな……まぁ、恨みっこ無しで頼むわ。あの嬢ちゃんの相手もしなくちゃならん。そこでぐったりしてろや」


 片山はそう言うと二号を担ぎ上げ、これからの戦闘の邪魔にならないであろう場所へと運んだ。

 機能の落ちた右腕と頭部以外が動作不能に陥っている以上、邪魔する事もそうは出来無いだろう。


「悪いな、随分と待たせちまった。イクローから聞いてると思うがよ、お待ちかねの再戦ってやつだぜ。犬塚のオッサンの事もあるから一応聞いとくが……今のを見てやめる気にはなんねぇか?」


 一号の正面に再度立つと、片山は彼女にそう告げた。

 ブラッドドラフトを使うに及ばず、装着重装型である二号をあっさりと完封したのだ。

 降伏勧告としては十分な要素と言える。

 だが一号は静かに首を横に振るだけだった。


「そうか……じゃあ……やるしかねぇんだな……」


 片山のその言葉を合図に、双方の意思は戦う者へと纏う空気を変貌させ始める。

 アジトでの戦闘で地を舐めた片山の逆襲が……今始まろうとしていた。




 復讐と逆襲。

 現時点、極東での最高峰のギミックを持つEO同士の予定調和とも言える戦い……どちらの情念が勝ちを拾うのか、それを知るのは底意地の悪い運命の神のみ。

 止める者と止まらぬ者の激突まで……残り僅か数秒であった。

お読み頂きありがとうございました。

引き続きご愛顧頂けると嬉しく思います。

それではまた次回お会いしましょう。


2016.09.06 改稿版に差し替え

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