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獅子と私  作者: sin
本編
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1話

好き勝手にやらかしています。時代背景や政治など何も考えていません。

後宮へのお誘いの手紙が最初に我が家に届いたのは、私がちょうど18歳の誕生日を迎えた日だった。




お察しの通り、お誘いとは名ばかりの半強制的召集である。

その記念すべき一通目を鼻で笑って破り捨てると、それほど間を置かずして同じような内容の手紙が再び我が家に届いてしまった。

それならばとあたかも他の郵便物に紛れて見えなかったんですのよという体で暖炉にくべ続けていると、とうとう3カ月たったある日、最終勧告がやってきた。おどろどろしい雰囲気を醸し出すその手紙には、私が最後の正妃候補者であり、かならずやお越しくださいませと書かれていた。できるならば「なんでこないの?馬鹿なの?」くらいは付け足しそうな荒々しい筆跡だった。

私が鼻で笑おうが暖炉で燃やそうが何しようが、手紙が来ているというその事実は最早変えられなかった。暖炉に火を入れるには時期が悪くもなっていたのだ。



この時期、後宮には、国中から集められた家柄の由緒正しい華美な娘たちが押し込められていた。よほどのことがない限り、その中から正妃が選ばれるに違いない。この国の後宮は、一種の花嫁選定場だからだ。国王陛下が婚期に差し掛かっても特定の相手を有していない場合、無条件で由緒正しい家柄の娘たちが集められ、後宮における女のデスマッチが繰り広げられるのである。

おお怖い。いつの時代も女の戦いとは醜いものである。



残念ながら私のお家はこの国でもそこそこ大きな、由緒も正しすぎる公爵家である。お家の面子を保つためにも、この誘いを断わることはできなかった。手紙の件は、最後の悪あがきのようなものだ。



召集に応じるのがあまりにも嫌だったので、ならば違う姉妹にと考えたが、最愛の美しいお姉様は早々に国一番に大きな公爵家の次男坊(尋常ではないイケメン)と結婚していたし、わが愛しの妹は、いくら将来の美貌を匂わせていても現在数えでたったの5歳だ。どう控え目に見ても犯罪である。

ならば私が公爵家に残ってお婿を取ろうとも考えたが、公爵家は文武両道のこれまた美しいお兄様がお継ぎになったばかりで、しかももう珠のように愛らしい男の子がお生まれになっている。お家の存続は全く問題がない。問題が無さすぎて驚愕したほどである。なんだこの模範学生みたいな公爵家の子どもたちは。1人くらい道を外れてもいいだろうに。



私の両親はこのお誘いに諸手を上げて喜んだ。これは恐らく、私が日常で不用意にいった言葉のどこかが「後宮に入りたい」と捉えられたのだろう。自慢ではないが、私はベタベタに甘やかされて育った。私は後宮に入りたいと願ったことはなかったはずだ。むしろ全力で拒否していた。彼らが私の意に反することをこうも堂々としてのけるとは考えにくい。

両親の甘やかしっぷりはそりゃあもう目も当てられないほどで、辛辣なメイド、そしてそのメイドに共にお世話になった最愛のお姉様の存在がなければ、頭が空っぽのとんでもないわがまま娘が誕生していたことは想像に難くなかった。ありがとうお姉様。夫のフランツさんは今日もイケメンですか?






さて、現実逃避から戻るとしよう。これほどまでに毛嫌いしている後宮だが、よくよく考えれば、私にとって、後宮入りは野望を叶えるチャンスと見ることもできるのだ。

私の野望、それは、『めんどくさくない人生を送る』。これにつきる。

何れにせよ、公爵家の令嬢である限りは、どこかに嫁ぎ子を為す責務を負う私にとって、その野望への道は切り立った崖より険しい。世の中はいつだって不条理だ。嫌だよ結婚なんてめんどくさいことするの。私は勝手気ままなシングルライフを過ごしたいんだよ。


後宮とは、いかに自分を美しく賢く見せ、王妃に適しているかを見せつける、言わば自分べた褒め大会の会場である。つまり、言い方を変えれば、王妃になるという意気込みを持っていない人間は空気と同等の存在として扱われるのだ。婚期がある程度過ぎるまで身を隠すいい隠れ蓑になってくれるとも考えられる。日がな一日部屋でごろごろして本を読んでおいしいお茶を飲んで派閥争いに加わらないようひっそりと生活できれば、私の野望は叶えられたも同然である。


適齢期を過ぎた頃に後宮から離脱すれば、現在屋敷に舞い込んできている頭に血が上ったとっちゃん坊やたちからの大量の求婚はぐっと減るだろう。私はそのまま陛下のお手付きとして傷心(笑)の未婚を貫くことができる可能性がある。お兄様は両親よりも更に胸の悪くなるほど私に甘いので、屋敷の片隅くらいは貸してくれる。


そうはいかなくとも、ぐっと減った求婚者の中からじっくり吟味して、落ち着いた結婚生活が送れる旦那さまを選べるかもしれない。いかんせん、今舞い込んでいる見合い話の中で、私と静かに結婚生活を送りたがっている素敵なダンディはお見受けできなかった。






ジャンルは恋愛としていますがたぶんあんまり恋愛しないと思います。こんな調子で万事進んでいきます。

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