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うさぎとくま

作者: 杉乃中かう


 とあるところの丘の頂上で、うさぎとくまと神さまがいました。

 どちらが優れる者か。どちらが劣っている者か。あるいは違う考えがあるのか。

 知りたい方は続きをどうぞ。


天空に高くあるおひさま

どっしりとしずまるおほしさま

そよ風ふわりと生き神さま

ちいさくまんまるなうさぎ

大きなまんまるくま

摩訶不思議(まかふしぎ)なこの世の話


「いい天気だね」

「…そうだね。だけど明日は雨が降るらしいよ。神さまがそう言っていたんだ」


のどかな丘でうさぎとくまがいました。

うさぎは毛づくろいを。くまはおひさまの光を浴びて、うたた寝ごとくまぶたを閉じては開いてを繰り返し、まどろんでいます。


「下界は大変な騒ぎだって聞いたよ。どこもかしこも戦だらけで、神さまは当分休みがないってね」

「…うん、みたいだね。ボクと君の対立ができているよ。ボクらは争っていないのにね」

「むふふ。私は君が大好きさ。力強いくまは私のできないことをやってくれるんだから、ありがとうって気持ちでいっぱいさ!」


うさぎはにっこりと笑って、くまにどれだけやってもらっているかを伝えました。


「まずは生まれてきてくれてありがとうなんだよ。同時期に生まれた大事な友達がそばにいるのは、私の宝物なんだ」


くまはうたた寝からぱっちり目が覚めて、聞いてくれています。


「それからねー、穏やかなところにとても安心感があるんだ。いざとなれば、勇猛(ゆうもう)志士(しし)となる君を知っているから、とても心強いんだ」

「うんうん、ボクも君の賢いところ好きだよ。とろいボクは考えるのが苦手だから。そのぶん、力はあるよね」

「お立てても何も出ないぞー!わっはっはっ」


うさぎは飛び跳ねます。よほどうれしかったのでしょう。くまはそんなうさぎを微笑ましそうに愛嬌(あいきょう)を見ています。


うさぎのまだまだくまのことを伝えたいようです。くまの周りを飛び跳ねて言います。


「君は山でどっしり構えているから、私たちは自由に生きている。いなきゃ誰が面倒見るのさ。君以外いないんだよ。私たちを束ねることができる動物は!君のおがけで自由なんだ!」

「それはお互い様だよ。ボクはここが好きなだけ。そう感じるのは君の持ち前の愛嬌で仲良くやれているからだよ。ボクは自由を与えた覚えはないんだから」

「んふふ。知ってる!知っているよ、そんなことは!私がどれだけ君の存在で助けられているかを言っているんだ!ありがとうを分け与え合う関係は素晴らしいんだ!」


うさぎは飛び跳ねます。まるで祭り時の騒ぎようです。

そよ風もよろこんでいます。


そんなうさぎを見てから、ポツリと言いました。

「ボクは怖がれている。大きく見れば必要なことだけど仲間が倒されるごとに胸が苦しいよ」

「くま君…」


もの悲しい風がなびき、辺りは無風になりやがては(なぎ)になりました。

くまの心情につられてか、空模様も雲が出てきました。

うさぎはくまの前で止まり、くまを見つめました。


下界ではくまの仲間たちが倒されるのが見えます。

山から追い出され森に避難しても追い出され、食べる物住むところを彷徨い歩き見つかれば、倒されていくのです。

他の動物も同じで、苦しく悲しい涙を流して、一日生きることに精一杯の暮らしをしています。

うさぎも他人ごとではありません。愛嬌で仲良くできても下界では仲間が倒れていくのを少なからず見ています。だから、悲しいのは一緒でした。


「どうして仲良くできないんだろうね。私たちのように」

「仕方ないよ。仲直りの仕方も、仲良くしていく力も見失っているんだから」

「そうだね。忘れていることがあると、どうしても思い出せないか」

「うん、だから神さまが頑張っているんだ」

「これくらいで済んでいるのは神さまのおかげだもんね!」


うさぎとくまは仲良くできる子たちなので、仲良しです。他の動物と仲良くできる優しい心根なのです。

心からありがとうと感謝して言えるのは素晴らしいことです。

好き嫌いはありますが、他の動物たちのことを理解しようと受け入れて最後には一緒に遊んでいるのはいつものことです。


ふわりと日に当たる風が二人のそばを通り過ぎていきます。


「神さまはよろこんでいるよ」

「うん、次の御代が来るからね」

「ああ、一握りの人が世を導いていく。その光景は見放せない。綺麗な魂が輝きを放ち人々に伝播(でんぱ)していくんだ」

「皆、ぽかんって口を開けて見ているだろうなー」

「願うのは全ての生き物が穏やかに暮らす世界だ」



そうして、うさぎとくまは輝かしい御代が来ること、生き物が穏やかに暮らせる世界を願うようにそっと見ているのでした。



                 

                    おわり



うさぎとくまは同じ、動物です。

小さいと大きいの目に見えてわかること、かわいらしさ猛々しさの区別がありますが、それはすべて差があるからです。

もし、うさぎしかいない世界ならばうさぎがかわいいということを知覚することはなく、逆にくましかいない世界ならば猛々しさを勇猛な志士として友達とあいなることもあるでしょう。

それらは皆、働きの違いがあるからです。

働きの違いがなければ、そこから何かが生まれることもなく成長することもなく変わろうとする違いに気づき心改める快心ができないでしょう。

快心すること。

それをうさぎとくまを生みたもうた神まさは「よろこび」と表現しています。

生むこと死ぬこと成長すること変わること、全ての行為がよろこびです。神さまはよろこびがあるのがなによりうれしいのです。

うさぎのかわいらしさとくまの猛々しさもどちらも愛しい我が子なのです。

間違った考えを持つ者は時節がくれば、それらは通用しなくなり歯痒い想いをしながら差別や害あるなしで判断する我よしの者自らを選び取った道だとして、自身を推し進めるでしょう。

学の世はすみました。

金の世もすみました。


あるのはうさぎとくまの違いを心よりよろこびとして現し、どちらも愛しいと友だと、仲良くする愛の世になります。


わけへだてなく愛すること

わけへだてなく善いも悪いも判断することなく働きの違いを尊ぶ大和の魂と還ることを願います

生きとし生けるものはすべて私から生まれた大事な生命

無駄なことなど何一つなく

偶然などは起こりえず

すべてはきちりきちりと

組み合わさって作られた

神の息吹き


真の学に勉学いらず

神を学ぶに神と分け隔てせずして接するべし


皆の弥栄に感謝申し上げます

うさぎとくまの友情に心よりよろこびとしてたてまつります

皆が楽しく暮らせますように

皆がうれしく笑って暮らせますように


和になって踊る神さまが目に浮かびます

うさぎとくまと手を繋ぎ仲良く暮らすそのような世界になること

和が広がり、大和となりよりよろこびが持続する世界になりますように

笑ううさぎ

笑うくま

笑う神さま

よきかなよきかな



   

                杉乃中かう 拝

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