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6.商業施設で過ごす(後編)

 こうやって一つ一つシミュレーションしていくわけだが、大事なのは自分の能力値をきちんと把握しておくことと、時代の流れをきちんと知っておくことだ。


 脳内では完璧でも、実在の自分と時代にそぐわなければすぐ破綻して、それは死に直結してしまう。ゲームの世界ならリプレイやリセットが可能だが、現実の世界で人間が生き返ったりやり直したりできることは、まずあり得ない。だから、生きる確率、生き残る確率を少しでも上げるため、自分や今の世界を知っておくことは必要不可欠だ。


 ほかにも、今のシミュレーションでいうと、新作の丈夫素材のカバンのメーカーを知っているかだとか、長期保存食料の味の良し悪しとか、サバイバル用品が実際に素人でも使いやすい性能かどうかとか、そういう情報を常に最新データにしておくことも重要になってくる。


 いつなんどき起きるかわからないことに備えるためには、常日頃から情報収集を怠らず、考え続けて計画の見直しを定期的に行うことが最も大切だ。いつまでも古いデータや常識に囚われていると、いざという時にそれが最大の悪手になってしまう危険性がある。何が起ころうとも生き延びることに重きを置くシミュレーションでは、柔軟に臨機応変に対応できることも求められる。そしてそれを可能にするのは、自分が持っている情報量に比例する。時には閃きも必要だが、知っているのと知らないでいるのとではその後の行動に大きく影響してくると思う。


 さらに付け加えるなら、免許や応急処置、身体を鍛えるなどの自分自身の強化もやれるならやった方がいいことは間違いない。そういった資格や身体の強化がされていれば、取れる選択肢は増えるし、より確実な選択を選べる可能性も上がるからだ。


 とまぁ、そんなことを考えてショッピングモールをうろついていれば、2,3時間なんて容易く過ぎていく。これが咄嗟の時にも出るよう思考や身体に覚え込ませなきゃならないから、大変と言えば大変な労力だ。


 だが、しかし。


 哀しいかな、ここショッピングモールにゾンビは出ないのだ。施設への各出入口に立っている警備員が入口でゾンビを取り押さえるからだ。目視での確認漏れがあった場合 (そんなことはほとんどないが)、施設内の入口に設置されている生体センサーによって感知される。ゾンビだとわかった瞬間即座に捕らえられてしまうのだ。


 だから、この中でパニックが起こることはよほど大群で押し寄せない限りあり得ない。県や国が設置しているゾンビ対応課が機能している以上、大量のゾンビを野放しにすることがない現代の状況では、映画の世界だけで見れるフィクションなのだ。


 現実と照らし合わせて、ないとわかっていてもなお、シミュレーションしてしまうのが僕の哀しいサガだ。なんたって、ロマンがあるじゃないか。


 今日もそうやって数時間を過ごし、いたって平和的な人間の生活が目の前に広がっていることに多少の物足りなさを感じないではないが、だが、それが現実というものなんだろう。

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