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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

蝶になれない、芋虫たち。曼荼羅編

作者: たこちゃん
掲載日:2026/03/04


人は生まれた時から決められ人生を歩むのではないか。

あなたは、人の幸せも、また不幸、禍福など、おおきな宿命を感じた事はありませんか。――決められたように。うねる運命、避けられない環境など。

――人間の愛を求める衝動、幸福の核。真実のテーマは、男と女に生まれる。愛の行為、セックスは愛の和合。それから入る不遇の男(愛されない男)話。佛法を救いとするが…。男の抱く大曼荼羅の妄想。

それは下座行を本道とする菩提さとり幻想。

烏枢沙摩明王うすさまみょうおうに現世の救いをもとめ、

愛染明王あいぜんみょうおうに、愛即菩提あたたかさを夢みるシンジ。

女体が、菩薩。菩提への執着と、現実乖離。

風俗店が霊山おやまとなり、修行の疲れに寄る。

――そんな滑稽な風景。

破滅な、孤絶、貧困の警備員の私生活は歪む。

――そんな晩生の再生のゆめであり、

ボランティアであるく、掃除する男だ。

――カネ持ちの道楽でもない。

 己の生きるゆめは、

――佛と神への、繋めであった。(出家も得度もない)。

ただの、底辺に光明をもとめ、下座行そうじにくれる。始祖、釈迦牟尼世尊を夢みる。唱えるは大宇宙マントラ

――救いたまえ。下界地獄このよの無常のさま。

――南無妙法蓮華経。宗派門地に群れず、孤高のおじさん。

――現世安穏なし。カネなし、家庭なし、明日さえ何もない。ただ生きる。

――釈迦牟尼世尊を、菩提ゆめとし、街を掃除してあるく、変わり者。僧侶の格好して、下座行をする。

――奇行なシンジ。

 エロスと交錯する、大曼荼羅は、おんなたち。

 本来無一物。この男の唯一の救いは、

ソープランド「風俗店」だった。

自性清浄、シンジは菩薩おんなを、慈悲の夢とみて。


 (あなたの星が、虚空の曼荼羅に、輝きますように)

  


  ――あえて、小説家になろうで、

  ()()なる、短編を書きました。

  人生の挫折、宿()()

  その問い。恋愛の現実。

 ――不求得苦(えられぬもの)

 ――自己逃避。

 ――齢を経るという事。

 ――若さへの渇望と、執着。希望。

   そんな視点で挑みました。 

   生きるってすでに、()()()

   ――当て外れからはじまる。

   シンジこと、私。

   沈みかけの日本でもがいております。 

   

   グロテスクな底辺。貧困化の日本。

   ()()()()()()。すべて自分の責任であります。

   本当の()()すらしらない。わたくし。自分が変われば世界が変わると申します。

   ―――

『あなたは、()()どおりの自分に、()()、生まれましたか?』

 


「若い時は、いつも、()()()か――」

「自分は生きる()()があるのか!」

 この繰り返し。

 迷いを探れば、佛さまを思い出してましたから。

 

差別(しゃべつ)』――「仏教用語で、佛になれる、絶対、平等を信じました。」

 『釈迦牟尼世尊であります。』

『しかし、安い答えは、崩れました』

 「―――無常が取り憑いたのです」

『生きる価値――』

「そんな()()しで生きてまいりました。」


 それを若さと自分は思っておりました……」


 「可笑しいですかね。つまり、生か死かの直球、とでもいいましょうか」

 ―――

 「若さは、時間の感覚が無限でいて。――儚さを感じる。まるで小動物のように、しっかりと、死生観が座るような、感覚」

 「いま、ようやく、思い出しました」

 ……

「何をしてもダメな人間。要領がわるく、自らを卑下してきた人間が、自らの半生を後悔し、宗教にも騙され、残された預金さえ無いのに、――最期に辿りついたのは、奉仕の精神でした。」

「ちいさな善行。街のゴミを拾う(下座行)」です。」

「自分を責めることから、離れ、清浄な気持ちになれることが下座行そうじ。これが私の修行だと直感いたしました。」

――突然のことです。

――彼は云う。

「人は、生まれた時から、決められた人生を、歩むのではないかとおもうのです。」

一人の男、シンジは告白します。

――女の前で。

歓迎されるでもなく、憐れな男は、見た目で分かるほど、老けてみえるものです。何をしてもダメな人間。

「生まれてきて、そういう人間は世にいるものです。」シンジもその、道を歩んでおります。

シンジという、名前の男らしい。

女は、訥々と話す男に、目を剥いた。

しゃべりだすが、長い。

「たとえば、人の一生を、ショートムービーで三分にまとめたなら、いかに、儚いかでしょうか。」(生老病死を)。

シンジは云います。我が人生なるものを。

「悲観論者と蔑むものもは高みの見物なのでしょうか。」

「此処は、弱い人間たちの、星なのです」。

「だから、弱いものから食われ、自然界すら成り立つのです。」

収奪してなりふり構わずの、世界を。

「富めるもの、貧しいもの。」

「人は神から、命を与えられるのに。」

「それは否めません。宇宙に存在するという真理であります。」

「あたかも、人間の幸せも、不幸も、試練と共にあるなら。――悲しくもあります」。

貴女(あなた)も、振り返れば、そう思う事はないでしょうか。

失敗する人は、何をしてもダメ。反対に、運を、持った人は、何をしても成功する者。」

「あと、何も挑戦しない人も。」

「寝て果報あるものもあるでしょうし。」

「千差万別であります」

「……」

「は、」女は否定もしない。

シンジは、しゃべくる。

「つまりです、占いにおいても、実際に……勝者劣敗は決められている、形をかえてね。言葉でも、説明できない不可思議なことがあるように。」

「どんな人間も、才能や能力の有無よりも、運命や宿命によって左右される力こそ。本来の、いわばみえない力で進んでゆく。それを人は、宿命というのではないかと思うのです。」

「努力を否定するのではなく、肯定しての話。みずからの意志に基づいて」

「運命は、環境といえましょうか」

「そこに、人間の、営みに、愛こそが究極の宿命としてあるならば、煩悩なやみこそ。即菩提さとりにかえよう、愛染明王あいぜんみょうおうの功徳により――愛欲煩悩を、さらけ出して、さらに深遠にして、わたくしは、広大な宇宙を捉えたのであります。」


「光輝く、菩薩たち、清浄静寂にして、動静をひとつにする、悟りの境界に」。

―――。

「シンジという、私の命は、

佛神へ、感謝と祈念の始まりでありました。小さな私の、不幸にも、恵みが生まれました。ーー貧しき私にも、笑いに変えたのです。」――愛の力であります。

そんな興奮を、愛欲菩提さとりとして。

女をやや上目でみます。


男の数をみてきた冷徹な瞳。女の面は、笑っていて、笑っていない。

眼は、芯がある。突き刺すように。

女の特有の眼差し。

シンジを小馬鹿にしているのが、小鼻の膨らみに言葉を含ましたようでした。それほど、無関心の面で見ております。

シンジはそれを知っているように、みておりましたが、云います。

………

「穢れ、汚れ、そして、わたくしが愛を得られず苦しみさまよう。その本願こそを、風俗店で求めました。おカネを払ってであります」。

シンジは眼を半眼にします。

「見ての通り、わたくしはモテません」。――容姿も、冴えない。

痩せた芋のようである。

生まれた土地が、日陰であったのだろう。よく見れば僧侶のような、袈裟をきている。ーー変わった客。

――賢そうにもみえません。すべてが、しまらないネジで止めたような、マヌケが感じてならないのですから。――伝わるのは、緊張のないシンジの間延びしたような顔でもあります。

――シンジは、いいます。

「決められたとは、単に、結果論ではありません。」

「私はそれに、気づいたのです」。

「――あなたはどう思いますか!?」

――女は、目を丸くした。

――なんだこの男は!


運命か、宿命か、そんな事をきいているのか!?

「理由、――しらないそんなの」

女はめんどくさい感じて答えました。

…………

すると、また、

――男は、喋りだします。

「私は生まれた時から「決められた」人生を歩んでまいりました……」

「蝶に成れない芋虫が、蝶になりたいと願ってもなれません。――私は芋虫だったのです。」

「もとから、種が違う、芋虫は蝶になれる筈もありません。蝶でない者。成虫にさえなれない。貧困の環境。くわえて、宿運、宿命に、流されました。」

「不出来な(シンジ)。美をいつしか考察し、観るようになります。なぜ、美しいかを」。

「美とは、恵まれること。の意味であります」

「わたくしこと、シンジは、愛を求めても、えられませんでした。だから、此処に――風俗店ならやさしくしてくれると思い、いわゆる天上の音楽(天国に流れる音楽を云う)、神の創造を経験おもい、悟りを得たい、欲望の昇華を望みたいと思いました」。

「体験することは、生きる意味でありますから」

「体験とは、貴女を抱くことです」。

「幸せ、愛、それらを混合しているのかと思われましょう。そうです、愛はおおきなもので構成されて、内包しているのです。ですので」。

頭がイカれている。

女はマジマジみます。

シンジはいいます。

「執着の力といえます、私にとって美は、豊満な愛でありました、佛法に合わせて、愛を求めたのです」。


「おのれの不遇だけを、いえば、単に、罰あたり。」

「いま思えばそれだけ」。

「人は、みえない制限された人生を歩むもの」

「よく想えば、拒否できない宿命とやらも。」

「…………」

「そして、種(因縁でさえも。)」

「そんな、観念が、生まれながらに感じておりました。出来る人、出来ない人。それすら、分からずに苦しんだ青年期。中年期。初老に至るまで。」

「そうです。宿命ですよ、若い時は分かるはずはありません」。

「蝶になれない、芋虫……それは私自身」

「何かしなければならないのに、それがわからない。それでいて底辺に落ちたのです」。

シンジという男は、五十を過ぎている枯れかけた男であった。


 ――()()()()()()男である。

 異常者だ。女は思った。

 同じ台詞せりふをいう、役者のような。

 ――そんな彼は、女を見つめたまま、

「芋虫とは、そういう意味です」

「苦海一生、地獄めぐりです」

「生まれて苦海。」

「話は、すこし、変わりますが、死ぬにあたり解放浄土を、希望にかえました。解放とは(苦しみ)でありました。佛法しかないと」。

「私は、芋虫とたとえていいました。」

「葉っぱの裏で、雨にうたれ、蟻がきたら逃げて這いずり回り、鳥がきたら、一目散に、穴の中に隠れる。食物連鎖の下層ですから。」

――情弱な生き物は、目をみればあきらかである。

虫も、動物も、そして人間も。

シンジという男は、チンケな瞳をしていた。

漫画にしたら、面白い目の形をしている。三角のような、眼。

魚のような、前しか、目えないような、恥すらないのか。この男――そう女は、思うのである。

――あらゆる幻覚をみた感覚。あざとい笑顔が、あった。幻覚ではないようだ。

――物悲しそうな眼をして、哀れんだ。

(人相をみれば、幸せからかなり遠いと思う、皺が入っている。泣き顔にもみえて。)男は、話すのだ。


不幸の者の色をして。

(蝶になれない芋虫。まんざら、表現として、外れていない)。女はおもった。

女も、直感がいいのだろう。

(蝶になるとは、変身のことか。それとも、この男の幸せの、幻想なのか)。

不確実性の連続が、人生。しかし、運命やら、宿運など、男も女も、たしかに生きている。

世間、世相も、平和やらも危うく、不況もましているので。そう思う。

個性を尊び、自由をもとめる人間ばかりになってしまう日本において、生きる競争が無数に現れれば、この世は地獄になる筈の道理ではないか。

(だれも、足を止めることもなき、思考。)

――男の言葉の、その意味さえ、問わないのは、女が男に対しての、いわば手加減でもあった。

――無視のように。

此処の風俗店では、この風景は、驚きに値しない。

だれでも、何かを抱いてくるからである。スケベにはかわりない。だか、この男は、佛やら、菩提なら、ーー聞き慣れない言葉を吐いてくる。

女は、ふと思う。

こんな惨めさを、思うと。

自身をおもうと。

表裏――。人間とは、お金が絡めば、悲劇も、喜劇になり、見下す真理さえ生まれるのであって、まさに、修羅、餓鬼の世界でも見える時がある。

生死さえままにならない。

この世界の喜怒哀楽。あらゆる階層にして、コメディになってくるのは何であろうか。ーー悲しみでさえ、人間を軽くするのは、(お金で)あったから。おカネ、この一言は、人間の重みとやらを変える。

、一瞬に、吹き飛ばしてしまう。

おカネがなければ悪にさえ、裁かれる現実社会を。たとえば納税であるし。


神さえ、持ち出して争う人間だもの。女も多感であった。


シンジは

明日、死のうか、生きようか。シンジは悩んでいた。今を生きるこの瞬間を。と云います。


――シンジという男は、一言でいば、此処に迷いこんだのではなく、目的地として来たような、感じさえ感じるのには、驚きを隠せない。

老いた、疲れた。そんな感じで。


佛法より、温かき、愛する女に抱かれたなら、死んでも良かった。とさえ云うのだから。


女は、蔑む。

眼をみれば、わかった。冷たい瞳。


以外に、擦れていない初老男性なのか、

不明なのである。未成熟。まさに小心者なのであろう。これは、大人子供という(さなぎ)にもみえてくる。

成人になれぬ男。未成熟のいまの老人。


小刻みに震えている。

みっともないとさえ、思う。女である。


夏なのに。憐れにも、だれも目にとめない。冷たくない。これが学歴教育であり、社会的常識てあり、差別なき社会のベールである。

人間が、小さくも、女にはみえた。

チンケな男にもみえた。冷笑はとまらない。シンジは手を女に引かれてゆく。


マットプレイ前に、しばし時間がある。


此処は風俗店だから。

貧困で、痩せたような、腕。足。爪先。

汚れまで、そうみえた。投げやりな客。酒に溺れた客もいる。共通しているのは不満に満ちている。女は思う。


シンジは、

未熟な精神なのか。

一人佛法、僧のなりをして。

一人ごとを云う。

――小馬鹿にして、適当にあやして返せばいいのである。

サービスをするしない、は女の裁量でもある。

(勿論、仕事だからするが当然。)


この、身体を売る商売は、女は、心から嫌になっていた。わけても、このような男と会うたびに。苦しい。

うまくいえないが。 

偏見を除いても、平均がわからなくなる。ーー女の話である。

女の人生観すら、狂いだすように。

平衡感覚が、常識とやらも、一線が壊れてるように。(お金のため)。

(おカネさえあればと)

不特定多数の客なのだから。

男は、孤独や、やりきれないものなど、それを性欲とまるめて抱えてくるのである。

女も、この男もか。と感じた。

しかし突き放す。


男という生き物を見て来たが、ろくな男はいないと。――心理であろう。

(お客様なので、みなイイ男であるが、お金であるから)。強くなければいけれない。女は、拒食症になった過去さえある。男のせいで、ある。

精神の病であろう。女も疲れていた。

いい男を抱けば、違うのだが。

そうはいかない。


この業界は、いろいろある。女は、男に適当に相槌をうちながら、話をしながら、準備をしなければならない。

他愛の無い世間話。

今日は休み!?仕事!?

よく風俗店はくるの!?など。


――そうして思う。


貧乏な男、貧弱。それに反して、女もいつも自分を鏡でみる。

風俗店は、いつもキラキラ、チャラチャラな軽い音楽が流れている。

――そこから、海底のように、湧いてくる、お客様。女は此処は下界か、天界か。女自身は天使か。自身がわからない時さえあった。


(何であろうか!?)

迷うのだった。

カネのために、売る。それだけ。


天使も、悪魔も、同居するソープランド。夢の国。混在する泡を立てるのに。汚れも落としたい。マットを引きながら、女も死にたくなることさえある。

シンジに少し待たせ、

自身の身体を洗う。

そして、浴室、マットを用意する。

お湯を出す。一連の作業。


――女は、お金を呪う気持ちで、財布に詰め込む夢で、毎日を数える。

なんとか、カネをためて、此処から出る。その夢だ。

風俗店で働く女の仲間は、ストレスでこの仕事を辞めるものも多い。病んでしまうからだ。もちろんすべてではないが。

しかし、女は、知っている。闇を。


新人を売り出す、店。どこも同じ。

闇は闇であり、光にすらなる。


――そうして、この、今日は珍客だ。

(忌々しい。皆、同じ穴から湧いてくるようにもみえる。)

(なんで私がこの男の相手をしなきゃいけないの)。

皺の入った一万円札を浮かべて、笑う顔を作る。

……。

落ち着け。女は、深呼吸をした。


彼だけが特別ではなく、

お金もちで、プライドの塊のようなやつ。

インテリで、傲慢な男や、

下品醜悪な者。恥も無いような年齢不詳の生き物。

もはや、夢の中の、生物として、割り切って、相手をしていると思わないと。

ダメなのだ。

仲良くなることなど、微塵もない。見下す奴も、持ち上げる者も、裏に潜むのは人間の欲の波を観るように、一様に女は眺めていたのである。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

なので、割り切る。

不信はつのり、お金だけが、信用できるーー。

彼女たちは、お金のために、沈み、稼ぐ。

這い上がる為に。

明日の為に。戦う意味を固めて。

最先端の時代で、

軽薄な時代で、

()()()()()を強いている二人。

 思考さえ。それらを、のみ込んで。シャワーをだして、湯加減をみて、女は浴槽に湯を張る。


 男を洗わねばと。汚い男。

 憐れな男へ、泡をたてる。

 クルクルと泡を手で作る。

 女は、水が好きである。

 浴槽のお湯が溜まる。


穢れを流してくれる、水。

キモい男を前に。言いしれぬ余韻は、(なぜこんな奴に身体を任せる仕事についたか、の後悔だ)。


「ふぅ……」。

――聞こえないような溜息を吐く。

 はみ出した男たちをのんでゆき仕事に。自らもはみ出してゆく精神を支えるのに。必死。

 黒いようなちんこがみえる。

 これを咥えなければならない。

―――

 女は瞳を閉じた。過去を振り返る。

 ……

――女は大学中退をした。男に騙され、カネを取られたからだ。それで借金をした。二百万。惚れたのは女だった。

イケメンで。誰もが羨む美男子。

これが仇になった。

そうして風俗店に入る。それで――世の中はどんなもか知っている。やはり、おカネ。金だ。

世間では、大不況で、倒産が増えている。

日本はどんどん貧しくなる。

それに生き方さえ、仕事の数も減る。

女は、結婚できなければ、年収をあげるしかない。

勿論、学歴や、キャリアがあってこそだが。

少しでも、その土台がら踏み外せば、誰も、否定はできない底なし沼に落ちる。

このシンジという男のように。こんな珍客だけは死んでも嫌だ。


女は、利口な方である。男を愛して、失敗しただけ。割り切る。

(女には、言葉にできない、トラウマがあった。しかし、その心理を誰に打ち明けたこともない。過去の話だ。


――愛を失った(彼との別れ)、この喪失感。この身体を売る仕事は。この高額な仕事でさえ、もしかしたら、愛を取り戻す過程でさえ、あるのかもしれない。そんな一縷の望みをどこかで幻想をいだく。

――女は、世相を暗くするものを呪う。

(政治のことはよくわからない)ただ肥え太るものは、既得権益の連中ということは分かる。いつも貧しいものが泣く世の中だ。

このシンジという、ヘンテコな男も。

言い訳ばかり、何が佛だ。何が菩提だ。菩薩とか、理由わからん。


それにうんざりして、彼女すら、涙も殺して生きた。弱い人間に、ヘドがでる。

私とは違う。――そういう心理は、(同じ類として)

――選別するのは、もしかしたら同じ不幸の、センサーで感知するからであろうか。

 女は、そう感じた。

大雑把に。誰に語るでもなく……。風俗店で夜職を選び、お金を貯めて何かをしょうとするのに、女はその先がわからなかった。


女は愛に騙され、堕ちた。


この男は、堕ちて、さらに堕ち行く。


シンジという、貧しい男には、わかる筈もないだろうと、見下して。

――――。

シャワーの音量が意識を呼ぶ。数百万の貯金も出来たが、今では辞めれない。


この街に、目的なんて何も見つからない。お金だけ。お金があればなんとかなる。そう信じてきた。

お金のために、こんな男の相手をせねばならない不遇をたらせば、身勝手だと言われるだろう。

――皮肉な話だ。


(この男、なんだろう。)そうおもった。

女は、今日、苛立ちを覚えた。重ねてみたのは、情弱な、この男と、女の、弱い精神なのに。邪険に嫌うのは、女は直感でわかっていたのかもしれない。

ーーあがらうことのできない、運命や宿命を。シンジの佛の話は、まるですべてが嫌味にきこえた。


風俗嬢の女の前での場面である。

優しい女を演ずる、そんな元気もない。

ひとの悩みなど、女には興味がない。


泣くこともない。彼女自身。

とりわけ、女性たちが稼ぐ場所は、風俗店タブーでもあるし。(貧困日本の女性たちの働く場所、秘匿その場所は必要な場所であるから、世の中はなんとも、上手くできているのか)。

理由があって、働く場所、――風俗店だからである。光があたる場所でもあり、

闇の部分は否めない。利用せねば、這い上がれない。 


そこに――

前置きして話し出す男がいる。女をみて、妄想で楽しんでいら変態野郎。

しかも僧形。(裸体になった男をみて)

時折、合掌のようなポーズをしている。

――殴りたいと、思った。

「マットの上で仰向けになって」女は言った。

「は、はい。」

シンジは寝た。


「人は生まれながらに決められた人生を歩んでいる。――もっとも、分かりやすくいえば、能力というものでしょうか。」と。

――同じ事を繰り返すなと女は思う。が、聞いてやる。


 言語が時折、とまるときがあり、間がとれない。

 ――――

毒を、飲んだように、苦しいさまを見せるのですが、演じているのでしょうか。

僧のなりをしております。坊さんのように。平素闊達でもない。

知見のように、海のような知識も無い。

――そんな言葉にならない思いが込み上げる。


なのに、悩みを喝破するでもなく、飴のように、舐めるような言動。不快でしかない。

間髪入れず、女は、バッサリと、いいます。

「あなたは言語しゃべりが、遅いなあ」。

「え」男はたじろいだ。

小馬鹿にしたのである。


――女はまだ若い。神経がそのまま、反射的に罵った。

――揶揄したのです。男は歳下の女性に言われて少し、ムッとしました。

彼と対する女は、

対象的に、女性は、賢そうな人相をしております。

オデコは広く、眉は美しく、鼻梁は細い。肌は白く、美人の類であります。唇はやや薄く、瞳は整形のような二重でありました。

シンジは、歳下の女性に、馬鹿にされた。いかに、どんなことがあろうと、許されるものではない。としりながら。シンジは笑う。想えば、この女性は(プロフィールに年齢28歳とあり)――まるで芸能人の、それであります。綺麗なドレスを着た写真で魅了して、エロスのすべてを商品にした物にみえたのですから。

――拍子抜けしたのです。

 男は妄想は、儚いと知りました。


 ――やはり、失望は大きい。


 …………

 女は、関係ありません。女は、気も使いません。

 ――キモい。それだけ。

 ――すべて裏切る女。

しかも、喋りが遅いといわれて。悩みを打ち明けながら。この無様さ。その男は、眼を細くします。

――滑稽であります。

足蹴にされたような、感覚。

普通なら、怒っても良い筈だ。 

なのに、(お客の)シンジは笑った。真意はわからない。この男は、怒りを楽しむように、笑いました。南無とばかりに。

馬鹿にされるのに慣れているのだろう。

そうに違いない。シンジすら、笑いの中に、潜むような、なんとも、やりきれない横顔が、暗がりの室内に滲んでみえます。

「ああ、そうです。おもった事も、言えず、いつも相手の事を優先し、合間を取る自分は、それでいて不器用な人間でありました」と言います。

また同じ繰り言を…………


 苦海巡めぐり。ーー苦役と称する労働者。

彼は、

大人子供のような、【大人】でありながら(すでに齢五十路とおもわれる)幼い目。

未熟なような目の揺らぎ。

みれば、頭髪は、剃っているようにみえる。ハゲているのか、坊主なのか、照明が暗いのでわからない。目の皺が際立つ。

孤独、孤絶、陰影は、絵の具にもない、土で溶いたような血の色があります。

風俗店には、いろいろあるものでございます。

わずかな若いような光は、稚拙な言動にあるように思えるのである。

たとえば、生きてきた経験が浅いのか、特に、知的障害でも背負ったような感じもあり、回りくどい話し方をみても、宿命的な、要領の悪さなどあるとみえるし、まんざら外れていないようにみえた。彼は健常者なのであろうか。しかし健常から外れない。それだけ。異常な、はみ出た男。

ギリギリアウトにならない、異常のなに人間なのだろう。

付け加えるなら、シンジという男は、いつも失敗するたちでありました。

素直であり、嘘のつけない馬鹿正直。それが仇となり、人から揶揄されたり、利用されたり、いわゆるどうでもいい(単に使われて捨てられるような)扱いになっただけなのであります。


――シンジは女を眺めていいました。

――ふと、横顔が夜叉にもみえました。

菩薩おんなは、正面をむくと現れます。二面あるようにみえたのです。

女とは不思議でありました。

シンジは、おんなを知りませんでしたから。

――シンジの顔は、呆けております。

彼の瞳は、細いのであります。眉は伸びてますが、少し太く、気性はやや、穏やかなでありそうで、起伏があるのが感じます。内心は荒い気性か。と思う女。

阿呆な、憐れなシンジだ。おんなは、菩薩でありますが。それでさえ気品を絶やしません。男を憐れみ、呑んでゆきます。


女は、人を見る目が自然と備わっておりましたから。

やや間があり、シンジは、細い歯を見せました。その顔は、痩せたジャガイモの様に見えます。……


「私は、徹底的な敗者でございます」。

「低賃金の警備員。恨むことなどなく、ひたすらに、生きました。ただブラック会社で飼われて、情けなく生きております。」

「――もう三十有余年、勤めてますが、まるっきり、初任給扱いです。」

 「笑えません。この歳で。建て前は、ベテラン」 「……このありさま。」

「結婚など、到底むり」

『――()()()に働いたんですが』。

「人の幸せとは、いつも自問しました。何もつかめませんでした。金もたまりませんし。それを誰かのせいとはいいませんが。確かなのは、そういう人間を集めてビジネスにする会社に、まるで大きなクモの巣に引っ掛かる人間が、わたくしなのですよ。それでいて。いまさら、こんなインフレの時代になり――

すべてがお手上げ状態になりました」

 …………

「――困窮と窮乏。」

「それでもウチの会社にもね。深刻な人手不足。人材投資もなし、福利もなし」

「安くつかうだけの、警備員なんですよ。誰でも取り替え可能な安価な仕事。」

「――もう、死にたくなりましてね。少しまえまでは有給も取るなと平然といいました。」

「わたくしは、捨て駒であります。わらえます。それで我慢して、生きておりました。優秀な人間から、私の警備員の世界は辞めてゆきます――」。

この男は、死ねばいい。

――女は思いました。冷酷さが、彼女の割り切りかたでありました。なぜなら、それを許せば、彼女自身が生きれなくなる。どこかで、彼女自身も、分かっていることだから。この世の有様を。

 ――

「笑ってください」。

シンジは、うなだれた。

「利益にありつけない人間とは、私であります」。

「ろくに、大した親孝行など、できません。掃除や、洗濯、身の世話の手伝い、母の介護で」

 「――しかし、気が病みます。」

 ……

「私は能無しなんで」。

 ――

「だから、みずから、お坊さんのなりで、自分の浄土をみつけるために、出家したんです。」

「お寺なんぞにも、帰属しない、出家です。」

「お寺は、おカネをとります。払えないのです」

  …………

「はっははっはっ」。

 ――男は笑うが声が小さい。なんと情けない。女は

軽蔑した。だから女は無視した。

 …………。

「はじめから(そこ)に属してません。帰属するような宗派もありません、師僧もおりません。自由意志を貫きます。かのーーお釈迦のように、悟りを得たまま、裸足で歩く始祖をめざしてまして。そこにシンジは己の大曼荼羅ほとけを根ざすのです。原始仏教いばらのみちを。

「そこに、ふと、浄土宗やらのお言葉で、背中を押してくれました」

「宗派など、寺にも帰属せず、本来宿運命運も、千差万別ならば、ーー生まれる行も、選ぶべきは、己であります。ですので」とシンジは、熱弁してつづける。

「――煩悩即菩提ぼんのうそくぼだい」「人間の持つ煩悩(欲望・怒り・迷いなど)そのものが、そのまま悟り(菩提)へと転じ、本来一体である」という大乗仏教の教えであります。生死即涅槃しょうじそくねはんと対で語られますが。煩悩を敵視して捨てるのではなく、悩みや苦しみといった現実の生命活動の中にこそ、悟りや喜びの源泉があると捉え、それを転換・昇華させることで真の幸福に至るならば、それを、私の愚鈍の悩み、若き日より、今に至るまでの孤独を、愛に捉え、――女性の胎蔵する(シンジの抱く煩悩こそ)愛の姿で、無明こそ鑑みようと、こうして風俗店を、巡るように、女性たちを、菩薩とみて、行をするわけであります」。

「諸仏諸神、宇宙法界、ありのままの姿こそ、愛の曼荼羅まことと観念いたしております。」

(変態野郎か!?)

何を言ってんのか、理由もわからない。

「はあ!?」。

キモ、なんやこいつ。ゲスやわ。

女は気持ち悪い、と思いました。

「キモ」声がでました。

しかも笑いながら。歳したであるのに。

勿論、それを知っての事である。

女は空間をつくる雰囲気を得意としていた。

話しを聞いてやる立場になっておりましたから。

不思議と裸に、互いがなれば、緊張が解けてもくるのであります。

女は、男にとって、

上位になっておりました。(まるで、子供の相談でも聞いているように)。

シンジはこれを愛と、感じているかはわからない。

侮蔑、さまざまな言い方もあるが、シンジは馬鹿にされているのである。しかし、

シンジが神聖化するのは、越えれない、女のしたたかさ、それに尽きました。

女の方が歳も智慧もある。

シンジの性格だと、そう思っておったのでしょう。上手だと。

――上手くいえない、男の不器用。孤独、わずか一生をも百年もいけれぬ人間に、男はなにを菩提とするのか、女には滑稽でありました。


――執着が愛ならば、放すことが必要なのに。離せないのだから。


女には馬鹿にされておりますが、それも介せず、喋ります。

――そして、シンジは、いいます。

 愛の色盲なのでしょう。わたくしは。

 心の眼が、曇っている。 


 女は思った。この男は。

――芋虫。まんざらだ。女は思う。


愛を菩提として、釈迦牟尼世尊が、悟りを得た、菩提樹が、女にみえておりました。だから、シンジは、女の乳房を吸いました。まるで果物をもぎ取る手のように、ぐいと、引きました。

「痛っ」

――シンジは押されました。

突然なので、女が引き離したのです。

「やめて!」

「えっ」シンジは泣き顔になります。


女は素になっておりました。こんなチンケな人間に、なんでわたしが。

シンジの境遇など、

知ろうともしませんが。汚らしい目つきで睨みました。


「風俗店に通う、始めの第一理由は、重いかもしれませんが、愛を探求する、強さを知りたかったのです。世間さまの云う、愛の強さを」。

 また、いった……

 …………

(愛!?)女は、胸糞悪いものを感じました。

「愛!?」女は吹き出しました。

シンジは云います。

童貞の腐ったなれか。――腹から胃液がでそうに、不快になります。

「私は、生まれてから、宿命を感じております。」

「世間で、云います、負け組ですよ。分不相応に風俗店に来ておるのは、希望なのです。」

「女の人とマトモな恋愛もしたことありません。」

「笑ってください。いいんですよ」。と。

「……」。どうだろう。女も感じます。


「救われる()()()。」

「わたくしは」

「生まれつき、愛されない男なのかもしれません」

「いろいろありまして、高校から社会人になる頃、宗教に入信したのですよ、そして」

「宗教にだまされ、お金を騙され、しまいに、風俗店通いがやめられない。――明日、死ぬ、それを今日よりも明日と信じてこうして生きてきました」。

「ですが、私の煩悩をとめられません」。(愛されない苦しみ。)

「…………」。シンジは続ける。

「最近なのですが、行きつけの、メンタルクリニックのカウンセラーに、あなたは、風俗依存症といわれたのですよ。そんな事はない、とすこし、怒鳴ってしまいました。そのカウンセラーがいうに、私の幼少期に、両親が離婚した経験から、愛が変形したたようで女性を愛せなくなりました。と、いいますが。いま思えば、私の問題であったのです。――勿論、過去の事実をカウンセラーは述べたのですがね。私は女性が常に、優位に見えてしまって、神聖化してみえて、それが原因で風俗店に通ってしまうというのですよ。そう真実なのどから。女性を優位にみてまう、そして、極めつけに愛せない(男なのです)」。

「私は幼い頃、両親が離婚して、それも起因しているのでしょうが」。

「欺瞞、憤懣、真実を渇望し、佛さま、いわゆる仏教に傾倒しました。自身が教祖となり、菩提心を、此処、大曼荼羅の発願とし、巡る決意をしたのです。ーーいわゆる、霊場のおやまと、同じです。」

「おやま、霊山と同じ、意味です。」

「風俗店は私の、菩提心なのです。いわばホーム。世間の薄暗いような理由はありません。ですので」

「だから、私は風俗店は、私の、修行の場ですと、キッパリ言ってやりました」。

「射精して、スッキリするだけでなく、私の修行の場所。宇宙の呼吸を感じるのです。」

「私は自分の宗教をつくりました。」

「私は、風俗店の女性たちを、大宇宙の曼荼羅の、諸天善神。呼吸し遍満する菩薩にみえたのですから」。

「エロスは天衣に見えて。釈迦牟尼世尊は、いつも、苦しまぬ、境地にみえました。」

…………

 なんなんだ、この男は。

 だから、女は、言ってやりました。

「あなたは、あなたの悟りを開いてね!」

 ――女は強かに笑いました。

「はぁ。」

「………」

「はい。」

毒ついた女の心を悟ったように、シンジは、やがて警戒しだすようになっていった。女の態度が悪くなっている。

ちんこを口でくわえても、手で粗雑にシコいて、終わろうとしている。射精(しこ)すればおわりなのだが。

シンジは射精する間に、修行の苦しみ、もっといえば、街の中で、彼がしてきたボランティアのトイレ掃除、ゴミ拾いなど、下座行として、みずからを枷としての日々の、黄金の記憶の合体でもあったからだ。

「あの、お尻を見せてください」

シンジはお尻が好きでありました。

菩薩の沸く、法華経のように。

シンジは、もう一度、お尻を眺めたいと言った。

 ……体位を、ずらす。

(気色悪い奴だ、女は思ったが仕方ない。)大宇宙の星たち。星とは、性器(しるし)()()()()()()()

 性欲菩提――。

 宇宙のホコリさえ、星になる、神秘たち。シンジは、魅惑でありました。

 生まれ、散る。星たち。有象無象。

――宇宙の神力、神秘。この造形。ダイナミックなお尻、まさしく地球の胎内でありましたから。

「あぁあ。」いってしまいました。

女は手コキで、陰茎を、激しく、シコリましたから。

女は、たくさんでたぞ。と、笑って、シャワーですぐさま流しておりました。

シンジは、いつまでも、この下界からぬけれないと悟りました。

六道輪廻このせかいの、欲界、菩提さとりをもとめ、烏枢沙摩明王うすさまみょうおうのように、我が身、我が魂はそのまま覚悟の上にあります。六道輪廻このしくみ、私の不浄をも、熱とかえて、我が身の力になります」。

「ただの糞尿、汚濁でなく、天上てんの露にも雨にも変えりて、土にも恵みとなり、蓮の葉にも栄養そようになります」。


「みな、お世話にる、六道せかいの菩提、菩薩のくりき」

「ならば、天恩。その身を、天地天罰じごく天国不浄ふじょう天人五衰ふしだらといえど、清浄天地、清浄天人、汚濁悪政はらんの世を、いかに救おうか、と悩みましたところ、まず、己を磨く行として、トイレを掃除致して、悟りの門を開かんと、一念発起したのであります」。トイレのすがたこそ、不浄の姿、綺麗にいたすことを、我が身に変えようとしたのです。烏枢沙摩明王――の行であります。

と誇らしげにシンジは笑った。

(シンジは下座行こそ、佛神の道と感じておりました。人の為に、お役に立つこと。菩薩行と発願しておりました)。


女は、舌をだしました。

もはや人知しらん不能しらんとばかり。


シンジは、女の尻を舐めておりました。

そうすると、たくましい牛のお尻にもみえました。

その姿。命のかたまり。この形容。どれぼど時間を熟し、模したものか。

ーーそれがお尻でありました。エロスとは生命でありましたから。……

「わたくし、地獄、苦しみだけの世にうまれても。悔いはありません。シンジはひとり事をいいました。

「……」

女は嗤います。

ーーはぁ!?。女は、唖然とします。

シンジは、朗々と、また述べます。

「――たとえ餓鬼のごどく、常に飢えや渇きに苦しむ世界であろうと、、清浄の行します。街にあるトイレをボランティアを申し出て、綺麗にして、歩こう。それが、まず、心の行であり、お経を合わせての一体行と致します。汚い私、汚い穢れ。清浄を同一する本人わたくしの、行であります。

――愛はある筈ですから。

――愛のために。

――菩薩おんなは微笑みました。

 「そうか、そうか」と。

世には物好きもあるものだ。と思います――

「感謝にみちて、人と愛和し、たとえ畜生のごどき欲望のままに生きる世界であろうとも。」シンジは続けます。

「修羅なり、争いばかりの世界に生まれても。」

「人間を愛して、汚れを見ようと。ーー汚れとは、本質を見ようと挑む決意であります。垢であり、業であります。」

天上てんじょうの音楽のように、悟りは生命に流れます。喜びや楽しみは永くは続かない。――ただし、真理は揺らぎません」。


「今日は、気持ちよかったです。」

「今度、シンジは千日行をします。これは私の千日行。(自分のきめた修行)

――街を綺麗に(掃除、下座行)をします。

――ゴミを拾い歩く、過酷な行です。」

「ひたすらに、他者を思い、ゴミを拾う。この重みを知る、行であります」。

「佛を知り、己をしる。不浄をしり、人の不徳、善徳を噛みしめる。大慈悲自然界ほとけさまの清静作用を、大徳し、行する。お経は唱えるにあらず、行の一体。」

「南無妙法蓮華経や、光明真言など。」

「無辺に、輝きだしますよ」

「もちろん」

「空き缶や、各地のトイレを、掃除を願いたて、烏枢沙摩明王の行をするのです。烏枢沙摩明王とは、不浄を払う佛さま。そこに、善徳神力かみさまと今世に知らせて、愛を深めんと、大願をしたのであります。まさに、私の行。」

「わたくしの菩薩行です」。

「へぇ。なんだか、モノは言いようね」

女は、燻るような、笑顔と、口もとが歪み、片方がつりあがります。

シンジは、謹んでいいます。

「良かったら、あなたも、どうですか!」

「しませんよ、絶対に」女は、嗤いました。

――シンジにしてみれば、至極、最上級のデートの誘い文句でありましたが。


女は、嘲笑(わらう)


「でも、面白そうね」。


「指名を沢山してね。考えてみるわ。」


――リアルな現金で、男を試しました。

案の定、シンジはおカネが厳しいのか、目を細めました。

「佛だの、悟りだの、いじましいのよ」

女は、あまりにおかしくて、嗤いました。「あーっはっはっは」と大声で。

冷めた枯れた、タイミングは冷酷でした。

その時、

シンジは女の肛門を、眺めておりました。大地の土の形容。

シンジはお尻が好きでしたから。

――派手さはないが、

――自然の真理。

――婉曲美と、

 生成幾重の潮のながれが、みえます。

まるで、天地のように、盛り上がる大地のように、眺めておりましたから。

宇宙の臍を観るがごとく。生命はここから生まれると。

宇宙の創造主と見立てて、お題目やら、真言を唱えておりました。

 ―――恍惚に。

女体は人間を生み出す佛たち、と重ねました。まさしく、シンジは菩薩を、みておりました。

これは、シンジの佛さまを抱く、理想形でありましたから。

 ――生命の大地。

――神の地球(ほし)とばかりに。

 シンジは、幸せでした。


 その、ー体観が、シックスナイン。

 男女が互いに、陰部の秘部に触れ合う。

 原始的な頂に立って、

 生命をみる幻想に()けました。

 ―――

 シンジの顔の前にお尻が乗る形であり、シンジの陰茎が女性の顔にある体位になっておりましたから)。

 ――すると急に、

 運動をすると、腸がうごきます。

 ゴロゴロ、と何度か、響きます。

 なんでしょうか!

――ゴロゴロと女の腹から音がします。女は今朝食べたフルーツと、納豆など、その他、発酵食品のサプリのせいで、【ぶう、きゅっ】と、凄まじい屁が出てしまいました。

「わ、あら、らら……あららら」

「いや、ごめんね、出たわ、やっと!」

「便秘でさ」

 シンジが笑うと思ったのでしょう。

シンジは、その時、女のお尻を眺めていたのです。屁は匂いは、なかなか去ることがありません。

――臭い、腐った魚のように。

――生ゴミのように。

諸行無常といいますが。匂いは、女の聖なるものを破壊しだしました。

凄いスピードであります。

 ――饐えた匂い。いままで女が、菩提、如来とか、大曼荼羅とか、方便、表現しましたが。ことごとく雲霧、蒸発してしまいました。微塵に。

――恐ろしい限りでございました。

シンジの荘厳な佛の世界は、嘘のように消えてしまいました。黄金の佛、菩薩たちは、忽ち消えます。

臭い。あまりにも臭い屁であった。

ぷーっ。ぶっ。間断な音は、遠慮もありましたが。


「煩悩即、ぶ――」。

 女は言葉で、ジョークを言ったのですが、返事は無し。

――女は嗤いました。シンジは、瞼をとじて、泣き顔でありました。


「ーー青天の霹靂ね」女は夜叉の顔で言いました。


天界の天女も、地へ、堕ちるほど。

とにかく腐った匂い。

肥溜めのような香り。肉体の可愛いらしさとは、あまりの対比で、ありました。

ぷーー。ぶぶ。ぶり。

豚の鳴く声。

雷のように、雲を裂きます。

空中散華、荘厳仏界は、裂けました。

女の美しい肛門(ほし)

から放たれた音。

男の脳膜を、鼻腔まで、つらぬいた。


「がぁ。」シンジは眼を大きくした。

細い目つきが、開眼おおきくなりました。

唇から唾がたれます。

――赤ん坊のように。

――があ。顎に力を込めたから。


 想像するに、大きなトラウマになる姿であります。

電流がながれたように、苦しみました。

――地殻変動。

――生まれる予感。

――小さくも、おおきな覚醒を。

 大宇宙の深淵の、虚空の、諸菩薩、大曼荼羅は架空のモノに成り下がり、女は、単に性欲の糧でしかなくなっていたのです。神の遍満の美が。

 ……。

 単に性欲のハケになり、菩薩たちは立ちどころに消えました。

あれほど、霊山(おやま)とたとえ、生きるゆえの、愛の執着とやらも。

ーーああ悲しい。この結末。

余程、その屁とは、恐ろしい。

仏天はたちまち崩れ去り。霊山と崇めた風俗店は、餓鬼畜生、どころではありません。飼育小屋のように臭い。

 空気は抜けません。

お釈迦さまも、裸足で逃げるだろう。

シンジは執着菩提ぼんのうと、この肉欲と愛にしがみついておりましたが。憐れなさま。鼻が曲がります。

 屁の、お経により、宇宙が回転したのであります。わずかな緩み。

――菩薩たちは、一斉に天国へ消えて参りました。屁は天空へ、宇宙へ、菩薩たちを返しました。

――シンジは、怒りを覚えました。

――覚醒の反作用でしょう。

【此処は、屎糞所(しふんじょ)地獄か!】と呟いて、袈裟のようなボロを纏い、首に掛けて、店から逃げるように、走り去りました。シンジの衣服は、衣に穴をあけたような、袈裟(糞尿衣)でありましたから。

貧相なすがたで、部屋を抜け出し、駆けでます。

 普通なら、女との、別れも楽しむのですが。

 ――履物は、草履でしたので、転びそうになりました。

 それをみて、

 ――女は、睥睨し、不遜に嗤ます。

「――お客様お帰りです! 」と乱雑にいいました。

 電話をして、見送ったのです。

「なんだうぜぇな……」女は、腹を抱えて、笑いだしておりました。

 ――屁で答える女。 

女はさすがに、やりすぎたと思ったか、愁眉になりました。

 …………

――後日。

――女は、悟りを得たようです。

ちんまりとした風俗店みせをやめて、こんな男に相手にされないように、菩薩になりたいと、願ったのでしょう。

彼女から、お店の店長に、「仏教マニアの男性から、学んだことがある。ーーくだらいとおもった変わり者の珍客だったが。大きな収穫があったとこと。

――宿命という枷を外すこと。

――自分の運命すらも、

飛び越えて、変革しろ、ということ。愛の求める力など。言葉にはならないが。

――多くを残しました。


()()()()()()()()()するな】という事だろう。大曼荼羅あらゆるものは宇宙に呼吸して、いろんな人間たちを、育てている。

――女は荷物をまとめて、辞めました。丁度、一年前の春であります。

シンジはまだ、下座行をしてんのか!?

――女は、時折、思いだすときがある。


 意図しない、あれ。

【――オナラである。】

 性欲は清浄(しょうじょう)にして、()()()()

 大宇宙に遍満する、塵やガスさえも、おおきな作用を起こすものである。

 

 

 ………

 南無烏枢沙摩明王うすさまみょうおう

 南無、愛染明王あいぜんみょうおう

 南無妙法蓮華経、すべての菩薩たちに、

 ()()()()()()()()

 大日如来のおんなたちに。

 ――南無阿弥陀仏。

 すべてに光あれ。

 感謝してシンジは霊山(風俗店)から出ました。  

 (すべてに感謝)

 ……

 ――惨めな男である身を責めず。

 ――精一杯生きる。大切さ。

 「孤独な荘厳の夢を宝にする」

 「それでさえ、糧にしょう」

――菩薩おんなたちに幸あれ。シンジは手を合わせて遥拝しました。

 善行、下座行そうじが世界を変える。

 そこから、始まった事。


 どんなことも、視点をかえてみる。

 ――身分や境界をすてる。

 ――自分が変われば世界が変わる。

 ――馬鹿になれ。

 ――行動しろ。

 彼は、自己満足して下座行そうじをして自らの罪業消滅を、祈りあるいてゆく。

 才能なき者の、固執妄想の半生。

 それを解き放て。

 とでもいうように。

――皮肉なのは、菩薩おんな――に愛されないことだ。

――あらゆる菩薩行の、まだ途中。

――愛はあるか。

――もちろんある。誰かの為にする思いの深さに、菩薩行は曼荼羅として胎蔵きのうするのだから。


 格差社会に紐付けられて、

 自由意志さえない今。

 残された命にあらがい、

 他者と比較し、幸せを測る。


 理性で動くのか、

 常識でうごくのか。

 シンジは己を信じて歩く。

 釈迦牟尼世尊を夢みて。


 (内容が()()になりましたが、ご容赦ください。)


 「――たとえばこの話を、名僧がかいたなら、もしくは、名のある作家がかいたなら、それは名作なのです。――わかりますか? 」それが()()()()

 ――虚しくなるもの(お金や、名声でさえも)。

 


 ()()()()()()()()()()()()()()|。


 書くことは、意志です。

 喜びに変わることを、作品にしたいと思います。

 ――よかったら、コメントで、教えてください。


――読んでいただきありがとう御座います。 

 ブックマークと、評価を頂くと、励みになります。

              感謝いたします。



          終わり      



宿命、宿運、それは波間のよう。

うまくいかない。――人生を、振り返る。

そこに空白が生まれる。わずかな言葉。

行間のように。宿命を呪わず、言葉で和まして。

詩を作る心を持つと、少し楽になる。

――嵐は人生を、小舟のごとく、もてあそぶ。

――わずかな平安は、きらめく、幸福の波のうねり。

つながり、広がり、ながれゆく。

やがてたどり着く愛の大海。虚空の曼荼羅。

シンジの佛は、菩薩は女であらねば、答えではない。

――覚悟、その一念発起であったからだ。

しかし、女人の屁がいけない。美との亀裂。

――菩薩となり、黄金浄土であるはずの理想が。

――音楽も、文学も、愛になり、かなめになっているがノイズは形相を崩す。

 されど、

――烈火の愛染明王のたとえ。愛欲すら悟りかえてしまうほどの愛を、求道として。シンジは、生きたい。

――その炎は消えない。永遠のゆめ。

 …………

 あなたは、どう思いますか?

 …………

 良かったら、感想、評価お願い致します。

 ありがとう御座います。

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若き日から、運に恵まれず、友にも恵まれない。そんなシンジという男。警備員をして生きるが、低賃金の底辺の生活も、インフレで貧困にあえぐのだか、そんなシンジは仏教に傾倒する。――愛されないゆえの答えは、善行をして、功徳を詰んで、釈迦牟尼世尊のような、愛の光源に、大曼荼羅を重ねること。――それは女性たちのすがたであり、彼の――菩薩そのものであった。風俗店で遭う女性を菩薩とみたて、ボランティアで街中のゴミを拾い清掃する傍ら、ソープランドで菩薩(おんな)に、自分の身の上を話すが、嫌悪され、侮蔑される。  
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