82.†.~the hopeful gleam~
†.~the hopeful gleam~
そこには淡い蒼穹が残った。
「これが太陽創生魔法か」
「そうだ。直に太陽が昇る」
空を見上げていた二人はその終わりと共に目線を下ろした。正面には闇夜の下では見えなかった互いの姿が露わになっている。
死闘を繰り広げた相手の顔を、双方はしばしの間凝視し合った。
先に視線を逸らしたのは、黒き鎧を纏う軍師だ。
彼は身を翻し、騎士に背を向けて歩き出した。
「退くのか」
「今回は、な」
太陽創生魔法が発動してしまったのなら、もはやコーエンスランド軍が戦う意味はない。死ぬ覚悟はあっても、引き際を間違うのは愚者のすることだ。
ただ、それはあくまで軍兵を率いる軍師の立場としての行動にすぎない。
「ますます欲しくなったよ。この惑星が」
騎士は、その背のむこうで軍師が笑ったように思えた。軍師はそれだけ言い残して、振り向くこともなく去っていく。
太陽神殿の前に一人残った騎士は、黎明を告げる光が今現れようとしている地平線を静かに見つめ続けた。
やがてその先に新しい太陽が昇る。全ての人が待ち望んだ光。そして、彼女の願った希望の光だ。
騎士はもう一度高空を仰いだ。
「守りますよ、貴女が守った世界を。この命尽きるまで」
〝空は希望を歌う〟。それが永久に真実であるために。
グリームランド。
その名の意味はきっと、この瞬間に在る。




