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77.静寂の時 & 78.感謝の祈りを
フォルセス王宮がそびえる丘陵にて、ディーフィットと騎士が佇んでいた。
二人はただただ城下街と荒野、そして空を眺望している。荒野から吹く風が、静かに通り過ぎていった。
やがて騎士が感嘆の声を漏らし、やや前に立つ国王の脇でそっと口を開く。
「無事役目を遂げられたのですね、姫様は……」
「ああ」
言葉は交わされても、依然と静寂に包まれていた。二人の間を漂う黎明の時はどこまでも静かだ。
「……日が昇るな」
地平線に迸る一閃を見つめてディーフィットは呟く。そっと、その時を待つかのように。
「……明けたのか?」
城下街の広場に誰かがやってきた。街の中で最も綺麗に東の空を見渡せるこの広場に、人々が次々と集ってくる。
そして、地平線のむこうにダイヤモンドリングの一片にも似た眩いばかりの光が現れると、人々は自然と安堵の笑みを浮かべた。
「イリシス様、神子様、再び朝を迎えられましたこと、深く、深く感謝いたします……」
街を包んでいた緊張や不安が、その光を浴びてそっと溶けていく。




