61.希望を
「………………」
放心するユリエナの頬を涙がぽたぽたと流れ落ちていく。はっと我に返って頭を振り、涙を拭った。
「ジンレイっ……!」
ジンレイがこの壁の向こうで戦っている。
自分はただここにいることしか出来ないのか。……何か、何か彼の力になりたい。
もう一度、縋る思いで周囲を見回す。だがやはり自分の足と繋がっている鉄球以外視界に入るものはない。それでも何かせずにはいられなくて、例え一ミリでもいいからと皮の剥けた手で再度鉄球を引っ張った。けれども、やはり一寸たりとも動かない。
――何か……何かないの……? ジンレイがあそこで頑張ってるのにっ……。
悔しさで流れた涙が、転んだ拍子に服の中から飛び出していた光石に滴り落ちた。
「光石……?」
ジンレイが近くにいるため共鳴反応で光を放っている光石。淡い光だが、不思議と心を落ち着かせてくれる。それを見つめていると、ユリエナの脳裏に太陽創生にまつわる口承の一節がよぎった。
「…………〝闇夜の終わりを告げる時、空は希望を歌う〟」
今までざわめいていた心がすっと静まっていく。ユリエナは瞳を閉じた。
――希望を、歌う。




