47.†.~the hopeful gleam~
†.~the hopeful gleam~
激しく衝突する金属の音。時折飛び散る火花。
闇夜の下、静寂を破るものはそれだけだった。
騎士の剣と軍師の剣が相手の命を断とうと斬撃を繰り出しては、防がれ躱され空を斬る。この死闘が始まってどれくらいの時間が経ったのか。一瞬の隙も許されない緊迫した空気が闇を一層深くさせる。互いの顔もまともに見えない状況下で、星明かりに反射する刃だけが彼らの存在を主張していた。
「グリームランドを手に入れてどうする。目的はなんだ」
言葉なく火蓋を切り、言葉なく終局まで向かうはずだった。しかしその討ち合いの時間はあまりに長く、騎士が低い声で尋ねた。
すると、軍師も初めてその口を開いた。
「全てを有効に使わせてもらうさ。魔法も、土地も。コーエンスランドを復興するために」
「コーエンスランドの現状は我々も理解している。正式な場で援助を申し出るのであれば、こちらも快く協力する所存だ」
「ふん。もう全て遅かろう。こうやって武力行使に出た以上は」
自虐にも受け取れるが、彼がこうなったことに微塵も悔いていないのは表情を見なくても分かる。その迷いのない剣捌きが何よりも雄弁に語っていた。
「だがグリームランドとて〝太陽の儀式〟が失敗すれば我等の支配下につかざるを得なくなるさ」
「仮に太陽が昇らずとも、貴様達に屈することはない」
「アーヴァンランドの援助がなくとも、か?」
「……まさか、滅ぼしたのか」
「ああ。これでグリームランドと同盟を結ぶ惑星はなくなった。四百年前よりさらに惨烈な悲劇を前にして、果たしてグリームランドの人間は百年の闇に耐えられるかな?」
騎士の無言をどう受け取ったのか、軍師は言葉を続けた。まるでこれが真実だとばかりに強調して。
「人々は闇を恐れる。誰もその恐怖に抗えはしない」
「――いいや」
静かな反論だった。それは夜の闇に飲み込まれることなく懸命に輝き続ける星々にも似た、小さくも強い断言。
騎士は闇に包まれて尚、その瞳に確かな輝きをもって告げた。
「例え太陽が失われようと、グリームランドには光がある」と。




