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空の歌(スカイ・ソング)  作者: 碧桜 詞帆
序章 太陽の終わり
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5.瑠璃色の髪に、臙脂色の瞳

 街の最端部には荒野との境界線として巨大な囲壁がある。荒野の砂塵や嵐を遮るために建てられたものだ。どの街にも囲壁は存在するが、王都を守る囲壁の堅牢さは他の比ではない。囲壁は緩やかな湾曲を描き、王都をぐるりと取り囲んでいる。その数ヶ所に(ゲート)が設けられており、人々はそこから出入りしていた。

 (ゲート)の遥か前方、地平線の向こうに影が一つ現れた。

 広漠とした大地を颯爽と走るバイクが一台、街に向かって一直線にやって来る。

 荒野の走行には、一般的にバギーや軽量戦車が用いられる。安全性や整備(メンテナンス)のしやすさ、積荷の許容量など様々な利点を踏まえているためだ。逆に言うと、他の移動手段を使う人間はそういない。ましてやバイクなどといった、身を直接荒野の風にさらし、大地の起伏をもろに伝えるようなバランスの取りにくい乗り物に頼る者は稀である。均衡を保ちつつそれなりにスピードを出すためには、相当の筋力と集中力が必要とされる。それでも利用している人間は単に移動性を重視しているのか、もしくは物好きなのだろう。あるいはこんな、大の男すら敬遠しがちな乗り物に跨る女ともなれば、どちらも当てはまるのかもしれないが。

 バイクは(ゲート)を抜けて街へ入った。数メートル徐行したのち完全に停止。僅かな吐息と共に彼女は風に煽られて乱れた髪を掻き上げた。

 郊外は城下街よりも若干高地にあるため、(ゲート)付近は街を眺望するスポットとしても知られている。ゴーグルを外すよりも先に、眼下に彩る城下街を一望した。

 囲壁というたった一枚の壁を挟んで、むこうとこちらの世界は大きく異なる。こちらには賑わう人々の暮らしの色があり、喧騒があり、匂いがある。頬を撫でる風も活気づく街の息吹のようだ。

 やはり王都はこうでなくては、と目元を綻ばせた。

 でもそれはほんの一瞬に過ぎず、ゴーグルをずらし上げながら今度は目線を斜め上へ。緩いウェーブのかかった瑠璃色(ラピスラズリ)の髪とは対照的な臙脂色(ガーネット)の瞳が鋭く白壁の城を捉えた。

 毅然と構えたフォルセス城は、街の端からでもはっきりと窺える。

「一応顔出しといた方がいいかしらね」

 彼女の双眸には、微かに焦燥の念が潜んでいた。


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