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空の歌(スカイ・ソング)  作者: 碧桜 詞帆
三章 破滅と誕生の象徴たる塔
22/79

24.安堵と信頼と

 コーエンスランド軍兵のうち手前にいた七人がジンレイの存在に気付き、矛先を変えてきた。剣一本ではとても捌き切れない数だ。

「あのバカ!」

 リンファはすぐさまジンレイの前方――敵兵達に右腕を掲げて詠唱。

闇の国より齎されしアルバ・ステム・ライズ・イノーバ・火元素よ(ムスペルヘイム) ここに集え(リコル・エスト)

 掌の一寸先に展開された赤い魔法陣から灼熱の業火が飛び出し、敵兵達に降りかかった。ジンレイがそばにいるので威力は抑えてあるが、それでも直撃した兵士二人を再起不能にさせた。残りの敵兵は無論ジンレイが相手をしなければならないわけだが、突如他方から魔法攻撃を受けたことで隙が生まれた彼らを叩くのはそれほど難しくない。

「はっ!」

 助走の勢いに乗せて峰打ちで一人。そのまま横に流れてもう一人。すかさずしゃがんで反対から斬りかかってきた一人を横転させ受け流し、その間にもう一人の懐に柄を殴り込む。素早く身を引いて最後の一人がそいつと衝突したところで後ろから峰打ち。三人目の男が起き上がった時には、既にジンレイの狙いは彼に戻ってきていた。

「サンキュ、リンファ!」

「先に行くのはいいけど、周りは見なさいよね」

「ああ!」

 三十秒もしないうちに五人を仕留めたジンレイは、再び一目散に走り出した。溢れ返った敵味方の中に飛び込んで、前方に立ちはだかる敵を次々と薙ぎ倒していく。

 その様子を、後方で応戦しながら見守っていたリンファ。

「やれるじゃない。騎士団の入団試験に二度落ちたって聞いてたけど」

「でもジンレイ、剣を捨てずにずっと鍛え続けてるんス。鈍るどころか、ますます強くなってるんスよ!」

 キルヤがまるで自分のことのように誇らしげな顔をする。リンファはその言葉を裏付けるジンレイの立ち回りを見て、安堵の笑みを浮かべた。

「みたいね。安心したわ」

 だから、一人で突き進むジンレイの背が見えなくなっても、さして焦る気持ちは湧いてこなかった。


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