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空の歌(スカイ・ソング)  作者: 碧桜 詞帆
二章 遠い日の憧憬
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20.襲撃

「何だ?」

 黄昏塔の裏手に立っている兵士の一人が、地平線の向こうに上がる砂塵を発見した。周囲の兵士もそちらに注目する。

「竜巻か?」

「それにしたって風が吹いてない。不自然だろ」

 その正体を見極めようと皆が目を凝らす。その砂塵は徐々に大きくなっていき、……否。近付いてくる。

 敵襲だ。

「隊長に知らせろ! 大至急だ!」

「おい、正面にも砂塵が!」

「挟み撃ちする気か」

 既に目前にまで迫った装甲戦車の大軍。隊長からの指示はまだだが、護衛としてここは守り通さねばなるまい。兵士達が武器を取り、戦闘に備える。

 しかしあろうことか、初撃は背後からだった。

「悪く思わんでくれよ」

 すぐ後ろ。数少ない護衛魔術士の一人が風魔法をぶつけてきたのだ。

「命まで取ろうってわけじゃねぇんだからさ」

「貴様っ! 何を!」

 兵士達は味方の魔術士が反逆行動を起こしたことに注意を囚われ、気が付いた時には敵の侵入を神殿付近まで許してしまっていた。

「まずい!」

「ひるむな! 敵襲は想定内のことだ。奮闘せよ!」

 瞬く間に太陽神殿周辺で戦闘が勃発する。太陽神殿の東側にて警護に当たっていたワモルは南北側に起こった出来事をおおよそ把握できていた。同時に上がった砂塵も、その正体も、そして北側で何やら異常事態が起こり迎撃態勢を取れなかったことも。

 援護するなら北側だろう。だが、ワモルはすぐさま南側、太陽神殿の正面へと向かった。

 恐ろしい速さで戦況が悪化していく。魔法的戦力が望めないにしても、相当の武力を結集させたはずだ。想定外の問題が多過ぎたのか、敵の手口が鮮やかなのか。どちらにせよ、このままでは現状把握もままならないうちに押し負けてしまう。

 正面に着くと、既に最悪の事態が起こっていた。

 今まさに太陽神殿内部に敵が駆け込んでいくのが見える。十数人、恐らく軍師とその新鋭であろう者達が入り込んだところで、ワモルは入口の前に辿り着き、それ以上の侵入を阻止した。しかし太陽神殿内は現在祭司が二名のみ。追撃しなければ〝太陽の神子〟候補者達が危ない。

「勝手に持ち場を離れるな!」

 すかさずワモルも太陽神殿へ入ろうとした時、副隊長の怒声が降りかかった。

「俺は単独行動の許可をもらってる!」

「だからどうした。お前一人で何が出来る。戦場において単独行動は味方の混乱を招くのだと知らんのか」

 行動を統一し、不本意な負傷を防ぐために隊則はある。だがしかし、集団行動をすることで目的が果たせない場合、隊の命令に従う義務を一時的に免除するとして国王から特例を与えられているのだ。それを否定されては話に終わりが見えない。

「それにお前は親衛隊の一員として同行してきたのだろう。ならば隊長の命令に従え。中へは我々が行く。お前は外で敵を抑えろ。これ以上中に入れるな」

 二の句を継げずにいるとそれを肯定と見たのか、またはこちらの返答など傍から気にしていないのか、副隊長と古株の隊士達がワモルの横を通りすぎ太陽神殿内へ入っていった。

「おいっ……!」

 確かにワモル一人では候補者全員を守り抜くことは不可能だろう。仲間同士の連携が取れていない状況では敵に付け入られるのがオチだ。しかし――。

 逡巡するワモルの前に、次の瞬間、敵の大軍が迫った。副隊長の指示に従うのは不本意だが、これ以上侵入を許したら本当に取り返しのつかない事態になりかねない。

「くそっ……!」

 ワモルは奥歯を噛み締め、やむなく敵兵の撃退にあたった。


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