17.廃街に吹く風
軽トラの荷台の上で、ジンレイとキルヤの様子を呆れ顔で眺めているリンファ。その隣に、戻ってきたアズミが腰を下ろした。
「ジンレイ達に話はしましたか?」
彼らには聞こえないように音量を絞って、アズミが問いかける。
「…………」
リンファは口を閉ざしたまま、変わらず彼らの方を向いている。暗黙のうちに察して、アズミはそっと目線を落とした。
「そうですか」
懲りずにまた廃屋から廃品物を回収しようとしているキルヤと、それを怒って止めるジンレイが見える。キルヤは一生懸命交渉しているようだが、ジンレイは頑として譲らない。まるで兄弟を見ているかのようで、アズミは自然と目を細めた。
「ねぇ、万に一つの望みもないのかしら」
彼らを見つめたまま、リンファは呟くように言った。
アズミは返答に迷うが、子猫の姿に戻ったチロルの頭を撫でながら躊躇いがちに答える。
「今日、出立の前に最後の魔法力測定をしたんです。結果、昨日から今日のたった一日で二万も増加していました。他の候補者からこのような変調は確認されていません。恐らくは……もう、間違いないかと……」
「……そう」
素っ気ない口調とは裏腹に、ジンレイ達を見つめる表情が僅かに歪む。
「このことは全て国王陛下に報告してあります。陛下の指示で現在、親衛隊総動員で彼女の護衛を務めてくれています。それと……」
「なに?」
「いえ、別件で報告を受けたんです。他惑星から何者かが入り込んだ、と」
「侵入者?」
聞き捨てならない内容に、リンファは初めて顔をこちらに向けた。アズミは彼女の目を見つめ返し、神妙な面持ちで深く頷く。
「偶然にしては出来過ぎね」
荒野の風が、暗雲を運んでくるかのように荒々しく吹き付けていた。




