表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空の歌(スカイ・ソング)  作者: 碧桜 詞帆
二章 遠い日の憧憬
16/79

17.廃街に吹く風

 軽トラの荷台の上で、ジンレイとキルヤの様子を呆れ顔で眺めているリンファ。その隣に、戻ってきたアズミが腰を下ろした。

「ジンレイ達に話はしましたか?」

 彼らには聞こえないように音量を絞って、アズミが問いかける。

「…………」

 リンファは口を閉ざしたまま、変わらず彼らの方を向いている。暗黙のうちに察して、アズミはそっと目線を落とした。

「そうですか」

 懲りずにまた廃屋から廃品物を回収しようとしているキルヤと、それを怒って止めるジンレイが見える。キルヤは一生懸命交渉しているようだが、ジンレイは頑として譲らない。まるで兄弟を見ているかのようで、アズミは自然と目を細めた。

「ねぇ、万に一つの望みもないのかしら」

 彼らを見つめたまま、リンファは呟くように言った。

 アズミは返答に迷うが、子猫の姿に戻ったチロルの頭を撫でながら躊躇いがちに答える。

「今日、出立の前に最後の魔法力測定をしたんです。結果、昨日から今日のたった一日で二万も増加していました。他の候補者からこのような変調は確認されていません。恐らくは……もう、間違いないかと……」

「……そう」

 素っ気ない口調とは裏腹に、ジンレイ達を見つめる表情が僅かに歪む。

「このことは全て国王陛下に報告してあります。陛下の指示で現在、親衛隊総動員で彼女の護衛を務めてくれています。それと……」

「なに?」

「いえ、別件で報告を受けたんです。他惑星から何者かが入り込んだ、と」

「侵入者?」

 聞き捨てならない内容に、リンファは初めて顔をこちらに向けた。アズミは彼女の目を見つめ返し、神妙な面持ちで深く頷く。

「偶然にしては出来過ぎね」

 荒野の風が、暗雲を運んでくるかのように荒々しく吹き付けていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ