ファンタジー 記憶喪失
「ここは・・・どこ?」
目が覚めると、そこは海岸だった。けれど、私には海へ出た記憶はないし、船に乗った記憶も、飛行機に乗った記憶もない。
「って、あれ? 私、誰だっけ?」
自分の名前や直前まで何をしていたかの記憶すら無い。なので、ここがどこなのか全く分からない。自分の体を触れて確かめる。
「服装は、Tシャツにジーパン。胸は控えめだけど、体のラインは良い方よね。言葉は話せるけど、やっぱり他の事は分からないなぁ」
日常生活の記憶はあるので、完全なる記憶喪失では無いみたいだ。それが、ここに居ることになった影響なのかは分からないけど。
「前は海で、後ろは山と。水平線の向こうまでは、目立つ物は何も無し。服は濡れてないし、海水なら乾いたあとでも塩とかは残るから、やっぱり流れ着いたとかではないはず。・・・その前に、この前の水は海だよね? それとも、大きな湖?」
私は穏やかに打ち寄せる波に向かって歩く。砂浜は歩きにくく、スニーカーにも砂が入る。見た感じ、水は綺麗に見えるので、右手でちょっとすくって舐めてみる。
「しょっぱいから、やっぱり海だね。で、ここはどこでしょう」
「ぎゃおおおお!」
私の質問に答えてくれたわけでは無いだろうけど、後ろから獣の様な叫び声が聞こえる。まあ、その前に答えになって無いんだけど。私は、その声の主を見ようと振り返る。・・・振り返らなきゃよかったと後悔する。そこには、見た事も無いような化物が居た。体長は、私の目線よりも高い位置に頭があるから、恐らく2メートルを超える。私の身長を160cmくらいと仮定してだけど。まあ、145cmくらいだとしても誤差だろう。
「って、悠長にそんな事を考えている場合じゃない! 逃げないと!」
その化物の見た目は、恐竜に近い。トカゲが2足歩行したような見た目で、ワニの様に尖った歯が並んでいる。ただ、その化物は槍を持っていた。つまり、手と頭脳が発達し、器用さも道具を扱う知能もあるという事だ。服は、何かの動物の皮の様なものを着ている。ゲームで言えば、リザードマンみたいなものかな?
その化物を仮定リザードマンと名付ける。そのリザードマンは、私の様に槍を向け、突っ込んできた。
「やばいやばいやばい、何あれ! ここって地球じゃ無いの!? まさか、ガラパゴス諸島の進化はここまで世間と違うとか!?」
私はとにかく走り出す。と言っても、砂浜は走りにくく速度は出ない。その代わり、リザードマンはこういう地形を走り慣れているのか、足がそういう作りなのか、明らかに私よりも早く走ってくる。
「追いつかれる!」
私は、真後ろに迫ったリザードマンが槍を構えるのを見て死を悟る。ああ、記憶が無いまま、自分が誰とも分からないままここで死ぬのか、と。
「・・・簡単に死んで、たまるか!」
私は振り返り、構える。格闘技をやっていた記憶は無いけど、自然と構えることが出来た。リザードマンが槍を突き出してくるのが見える。そう、見えるのだ。私は、それを紙一重で躱し、リザードマンの首に手刀を突き出す。私の指がリザードマンの喉を突き破り、リザードマンは力が抜けて槍を落とした。
「・・・勝った? 嘘っ、私、強い?」
記憶が無いままではあったけれど、私は戦う術を持っているようだ。




