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ローファンタジー 腐少女

ふと目を覚ます。ぼんやりとした視界に最初に入ったのは、白衣を着た研究者らしき人達と、その人たちが操作するパソコンや機械だった。私の目線は、研究者たちの頭よりも高く、おそらく2メートルくらい上。そして、体を動かそうとしても、動かなかった。上を見上げ両手を見ると、私の両腕には鎖が繋がれていた。下を見ると、同様に両足にも鎖が繋がれている。

つまり私は、吊り下げられているって事だ。服は簡素な白いワンピースだけど、ところどころ穴が開いていて、そこからそれぞれコードが出ている。そして、そのコードは研究者たちのパソコンに繋がっていた。


「お目覚めかね? 試験体ナンバー8よ。今回は随分と長く眠っていたようだが、気分はどうかね?」


私に話しかけてきたのは、偉そうで丸い眼鏡をかけた研究者だった。というか、私の名前って試験体ナンバー8っていうのね。まったく記憶が無いのだけど。


「・・・あなたは誰? 私は、どうしてこんな格好をさせられているの?」


「おや、記憶の混濁かね? 会話は出来る様だから、完全な記憶喪失というわけではあるまい。それならやはり、先の実験の負荷が強すぎたせいか。しばらく様子を見る方がよいか?」


「演技という可能性もあるのではないでしょうか? 記憶喪失を装い、私達の油断を誘っていると考えることもできます」


眼鏡の近くに居た女性の研究者がそう言った。元の私の事は全く思い出せないから、今の私には演技の仕様がないのだけど、それはあの人たちには分からない。


「ならば、追加の実験だ。まずはデータを抜き取れ。前の実験データと見比べれば分かるはずだ」


「はい」


女性の研究者が、自分の前のパソコンを操作しはじめた。しばらくすると、私の頭に電流が流れる。


「があああぁっ!?」


頭が割れるように痛い。電流が流れ終えると、私はぐったりとしてうつむく。痛かった代わりに、少しだけ記憶が戻った。

私は過去、何度か実験と称して体をいじくられている。さらに、何の為かは分からないけど、様々な訓練も施されていた。運動能力の向上、銃やナイフなどの武器の扱い、色々な格闘技の知識。そして、最終調整として私の体に何らかの薬品を流し込んだ。そのあまりの激痛の為に私は意識を失い、記憶も失っていたみたいだ。


思い出した記憶では、私の年齢は14歳のはずなのだけど、10歳よりも前の記憶を思い出すことが全くできなかった。思い出せる限りの昔を思い出しても、この研究施設の内部で過ごした記憶しか無かった。


「博士、データの比較が完了しました。見てください、実験前のデータと比べ、明らかに異常値を示しています。この異常値が、記憶障害の原因なのか、それとも他に何か体に変化が起きているのかの判断はまだつきかねますが、非常に興味深いデータです」


「ほぉ。確かに面白い結果だ。では、もっと詳しく調べようでは無いか」


博士と呼ばれたさっきの眼鏡の研究者が、喜悦の表情を浮かべたのを見て、私は危機を感じた。何とかして逃げないと、死ぬまで実験をし続けられるだろうことは想像に難くない。私は、ダメもとで右腕を引き、鎖をひっぱってみる。


ギリギリギリ、パキンッ。あれ、案外あっさりと鎖が千切れた。じゃあ、左腕も。パキンッ。左腕の鎖も千切れ、少しの浮遊感のあと私ははだしで着地する。千切れた鎖をよく見ると、鎖が千切れたわけじゃ無くて、私の腕にはめられていた枷が腐ったように溶けていた。


「誰だ! なぜ試験体の枷を外す! ワザとでないなら、さっさと枷をもう一度つけてこい!」


博士は、私の枷を誰かが間違って外したのだろうと予想したみたいだ。私は両足についていた鎖を、それぞれ片手で握る。感覚的に出来ると感じ、鎖を握りつぶす。鎖は、腐ったように千切れた。よし、これなら逃げられる。私は体につけられていたコードも無理やり外し、研究者たちが居る方とは反対方向へと走る。


「なっ!? 逃がすな! 馬鹿め、そっちは壁しか無いわ!」


博士がそう叫び、他の研究者に私を捕らえさせようとする。確かに、そこには壁しか無いけど、今の私なら問題にならないはずだ。両手を壁につけ、溶かす。壁は簡単にドロドロに溶け、私は廊下に出ることが出来た。だけどその廊下は見たことが無い廊下だった。

だから私は、勘だけを頼りに走る。ぺたぺたぺたと裸足の足音が響く。出口への階段が見つかればいいのだけど。


ところで、ここって地下なの? 地上なの? うーっ、上と下、どっちへの階段を探せばいいんだろう?


 

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