死神にあった話
今日死神にあった。
“あった”というよりは“遠目に見た”という表現が妥当だろう。
それもしっかりと見えた訳では無い。
何となくそこに何かいるんだろうなって感じた。
私はほんの少しだけ霊感のようなものがあるらしく、普段から直視はできないものの「幽霊がいる」みたいなことは“わかる”。
私より霊感の強い人だったら黒いモヤが見えたりとか、ガッツリほん怖見たいに“白い着物を着た黒髪の女性が見える”とかなんだろうけど、私のは“見えない”けど“そこに女の幽霊がいる”っていうのが“わかる”感じなんだ。
それで話戻すんだが、今日は感じたソレが幽霊じゃなくて死神って感じた。
“見えない”のに確かにそう感じたんだ。
そしてそれが“彼”つまり男であることも感じ取れた。
私はその時(え?とうとう私、死神と普通の幽霊見分けられるようになった?)とも思ったし(小説で死神の新キャラだそうと思ったからそう感じただけでは?)とも思った。
それから数分して車を運転していた時のこと。
カラスの死体を見た。
私の記憶上、カラスの死体を見るのは初めてのことだった。
最初にカラスを見た時は、黒い帽子や衣類が道路に落ちていて車は皆それを避けてるだけなんだなっと思ったのだが、近づいてようやくソレがカラスの死体であることに気がついた。
綺麗に目を閉じていて。“息を引き取った”とか”安らかに眠っている”という表現が1番しっくりくる気がした。
その時何となく(ああ、カラスってちゃんと死ぬんだな)と思った。
前にどこかのネット記事か何かで、“カラスの死体がないのは死んだカラスの遺体を仲間が食べているから”というふうに聞いたことがあったので、おそらく死体を見た時に安心したのだろう。
しかし初めて見たことが原因か、不吉だと感じた。
そして当然悲しかった。
生き物の死というものは胸が締め付けられる。
どちらかといえば田舎なほうなので、虫や動物の死骸を見ることはよくあった。
なのでそろそろ慣れてきたかなぁと勝手に思っていたのだがそんなことはなく、虚しかった。
そしてカラスの死体を見てから数分が経った頃だったと思う。
私は“先程死神を見た(感じた)”ことを思い出した。
その時“彼は死神だった”と確信のようなものに変わった。
思い返してみればあの時のカラスの死体は、車に轢かれたにしては綺麗すぎた。
傷を負った部分がちょうど下になって見えないだけにしては血痕がどこにもないのが不思議だった。
例えるならそう、命だけが綺麗になくなった様だった。
そう思った時私は(ああ、あの時の死神はこちらに仕事に来てくれたのだな)と思った。
“切り取った”とか“奪った”という表現ではない。けしてない。
カラスを真っ白なシーツで優しく包み込み、そのままあの世に運ぶ。
そんなイメージだった。
忘れる前にこの話は書きたかった。
もうとっくに帰路についていたので今から車から降りて
カラスに気づいてあげられなかった悔やみと、塩も花も備えられなかったせめてもの償いで線香をあげようと思う。
もちろん、仕事をしに来た死神の彼に感謝の意を込めて。
今さっき、線香をあげてきた。
線香をあげる前、仏前の灰の前辺りに、白いモヤのような、煙のようなものが見えた気がした。




