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17 一緒のお布団

「し、失礼しましゅ」


 少し緊張した面持ちのレティが僕の部屋の前に立っていた。兄妹で一緒に寝るのは数年ぶりになるのかな。


 あれはレティが流行りの風邪で寝込んでしまい高熱が続いた時のことだった。外は嵐で、雨風の音が激しく叩きつけていて、まだ家を補強する前だったからレティも怖かったと思う。


 風邪というのは体に耐性が出来るまで無闇に治さない方がいいらしいと聞いたことがある。何でもかんでも魔法で回復させればいいというものではないようだ。


 人の体というのは生きていくうえで様々なことを学び強くなっていく。これは村長の受け売りなんだけど、あながち間違っていないと思っている。このあたりは魔族と違うところなのだろう。


「熱は体の中で風邪と戦っているからって言ってたな。レティ、辛いと思うけど辛抱してくれよ。何か欲しいものはあるか?」


 体の熱は上がり過ぎないようにスライムが身体をひんやりと冷ましてくれる。明日には食欲が回復してくれたらいいんだけどな。


 栄養失調からは改善されてきているけど、まだレティの体は小さくて弱い。


「お、お兄ちゃん。あのね、今日だけでいいから一緒に寝てほしいの」


 僕がレンの体に入った頃はいつも一緒に寝ていたものだけど、いつしか、一人で寝ると言い出したのはレティの方だった。当時は少しさみしく思ったものの、妹の成長を喜ばしくも思ったものだ。


「うん、わかったよ。レティは甘えん坊さんだな」


「ち、違うもん。違くないけど……」


 布団に入ると僕の背中にすぐ抱きついてきて、熱っぽいレティの体がとても心配になった。それでも、しばらくするとスヤスヤと寝息を立て安心したように眠りについてしまった。


 あの時以来かー。どこか懐かしい記憶と、まだ甘えん坊だった頃のレティとの懐かしい想い出だ。


「本当に一緒に寝るんだ」


「しょ、しょうがないんだもん」


 別にしょうがなくもなんともない。少し狭いけどレティの部屋で三人で寝ることだって出来るのだから。まあ、レティもまだ十二歳だし寂しく思うこともあるだろう。


 最近は畑仕事が忙しくなって家の中のことは任せきっりになっていたしレティにも苦労をかけていた。たまには妹のわがままを聞いてあげてもいいだろう。僕は布団の半分を空けてレティを入れてあげた。


「ねぇ、お兄ちゃん覚えてる? 私が最後にお兄ちゃんと一緒のお布団で寝た時のこと」


「覚えてるよ。レティが風邪をひいて寝込んだ時だろ?」


「うん、そう。あの時ね、頭がボーッとしてて身体は熱いはずなのに、とても寒くて凍えそうで私もう死んじゃうんじゃないかなって不安だったの」


「あーうん。確かに辛そうだったもんな」


「でもね、お兄ちゃんの背中が温かくてね、いつの間にかぐっすり眠れたの。私、身体が弱かったからいっぱい迷惑かけたけどこれからはもっとお手伝いするからね」


「それは頼もしいな」


「うん。あ、あとね、お兄ちゃん一人で寂しい時もあると思うし、た、たまにはこうやって一緒に寝てあげる」


 そう言ったレティはあの時のように僕の背中を抱きしめるように腕をまわしてきた。


 あの頃と比べてレティの体は大きくなっているようでここ数年の成長を感じさせる。


「畑も増えるんだよね。お兄ちゃん一人で大丈夫なの? 私もそろそろ外で一緒に働けるよ」


「今までもスライムたちが面倒みていた畑だからそこまで大変ではないんだ。でも、収穫とか箱詰めする作業は少し大変になるかな。それはレティも少しづつ手伝ってくれてるから助かってるんだ」


 最近は家の中の仕事から出荷業務を少しづつ覚えるようになってきたので僕としても助かっている。


 それから出荷業務が増えてきたので専用に出荷小屋を用意してもらうことになった。これも神殿からの予算とのことで新しい家とセットで建ててもらうことになった。


「それならいいんだけど。あっ、でも今度からリタさんも手伝ってくれるかな。トマクの実を食べちゃいそうだけど」


「そうだね。リタには神獣様としての仕事もあるらしいけど、基本的には周辺のモンスターの駆除になるからね。手の空いたときには手伝ってもらおうかな。ご褒美にトマクの実をあげれば喜んで手伝ってくれるよ」


「だね。ところで、神獣様の仕事って何するの?」


「うん、なんかね。たまに神殿に神獣様の姿で現れてほしいんだって。なるべく日中の人が多い時の方がいいとか大司教様と聖女様が話してた」


「あー、あの、少しだけいやらしい目をした人だね」


 大司教様、どうやってその位置まで登りつめたのか甚だ不思議でならない魔力も全然ないぶくぶくと太った人だった。聖女が丁寧に案内をしていたのでそれなりに偉い人なのだろう。


 でも、人の世界というのは魔力や腕力だけで全てが決まるわけではない。きっと、大司教様にも僕には見えない素晴らしいところがあるのだと思う。少しだけいやらしい目はしていたけど基本的に神職者特有の礼儀正しさを持ち合わせているようだったし。


 それにしても、レティとたわいもない話をしながら一緒に寝るというのも新鮮だな。これなら確かにたまにはいいかもしれない。


「お兄ちゃん、明日はミルフィーヌさんの番だけど、いやらしいことしちゃダメだからね!」


「わ、わかってるよ」


 そうか、しばらくはローテーションで何故か聖女と同じ布団で寝なければならなかったのだ。まさか自分を殺そうとした敵と一緒に寝ることになるとは人生何があるかわかったものではない。


 おそらく、聖女はまだ僕やリタのことを疑っているのだろう。僕は暗黒魔法を気づかれないように細心の注意を払わなければならない。


 寝る時まで気が抜けないなんて聖女の奴め……。

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