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15 四人暮らし

 勇者パーティからの報告により神獣の噂は瞬く間に王都で広がってしまった。しかも何故か神殿により神獣がルミナス村を守護していたということにされてしまっている。


 現在ルミナス村では神殿から絵画家や芸術家が派遣され、聖女ミルフィーヌと神獣の絵が描かれたり、石像が造られている。何というか神殿の行動がとても早い。リタには申し訳なかったけど、ルミナス村のために神獣の姿でじっとしてもらっている。今のところトマクの実を与えておけば喜んで従ってくれるのがありがたい。


 ルミナス村としても神殿との関係をよくしたいのが本音なので、僕もそれにお付き合いして新しい教会の建設が完了したらリタと一緒に頻繁に顔を出そうかとも思っている。


 その際には人型の姿よりも神獣の姿で現れた方がいいのだろうね。これで村の役に立てるのであれば僕もうれしい。


 今回の件を何とか乗り切ったことでルミナス村の観光事業は良い方向へと進み始めている。そう、正式に神殿から観光化へのゴーが出たのだ。


 現在はいろいろと建設ラッシュで、今ある住まいは区画整理とかで無くなることが決定している。やはり農村をいきなり観光地にするにはそれなりに整備が必要とのこと。


 長く住んできた愛着ある我が家だけども、神殿からいっぱいお金が出るそうで村人全員が賛成。僕だけ反対するわけにもいかなかった。


 村のみんなは宿屋だったり、定食屋、お土産物屋など希望に応じて街道沿いに住居兼お店という佇まいになるそうだ。


 うちは農家継続なので、街道から少し離れた畑の近くに家を建て直してもらうことになっている。周りに家はないし、街道や新しく建てる教会からも離れているので観光地化しても割と静かに過ごせるのではないだろうか。


 ということで、愛着あるわが家もあと少しで取り壊しとなるのだけど。


 そんな我が家に現在激震が走っている。一緒に住まわせろと急に聖女がやってきたのだ。


「は、はあ!? 聖女様は本当にうちに住もうとしてるんですか?」


「リタさんが本当にルミナス村に迷惑をかけないか近くで見張る必要がありますからね」


「リタ悪いことしない。ご主人様とトマクの実があればそれで十分。聖女は邪魔しないで」


「神殿は許可しましたがそれはあくまでも私が一緒にいるからです。ホーリータラテクトという種族は神殿の文献にも記載がありませんでした。新種のモンスターなのですから、いくらテイムされていると言ってもしばらくは様子見が必要でしょう」


 そういう訳で、なし崩し的に我が家は僕とレティの二人暮しから一気に四人暮らしとなってしまったのだ。


 ちなみに一緒に聖女が住むことにレティが早々に許可を出してしまったことで僕も断りきれなかったというのもある。


「レティはいつから聖女様と仲良くなったのかな?」


「仲が良いというか、共同戦線というか……」

「レティちゃん!」


「あっ、何でもないの、お兄ちゃん」


 まあ、成り行きとはいえ僕もリタをテイムしてしまったので余り強く反対できなかったというか。聖女がレティの近くにいることで勇者アシュレイの暴走を抑えてくれるかもしれないとか、とりあえずこちらも様子見とさせてもらおう。


 ちなみに勇者アシュレイは王都ルイーンズパレスへと一旦戻っている。出来ることならもうルミナス村には来ないでもらいたいのだが難しいだろう。


 剣聖と賢者コンビについては生まれた村に凱旋するとかで旅に出てしまった。お前らもそのまま帰ってこなくていいからな。


 それにしても、レティもリタを見る目が警戒している感じがしないでもない。それはリタも感じているのだろう。僕がレティを大切に思う気持ちはリタにも共有されているので、どうしたらいいのか悩んでいる感じだ。


「リタさんはもう少しお兄ちゃんから離れた方がよくないかな」


「ご、ごめんなさい」


 リタはテイムした時から僕との距離感がとても近い。人の暮らしに慣れていないというのもあるのだろうけど、その辺は徐々に慣れてくれればと思っている。


「レティ、リタはまだ進化したばかりで人型にも慣れていないんだ。優しく接してくれるとお兄ちゃんもうれしいな」


「う、うっ……。わ、わかってるよ」


「レティちゃん、それよりも部屋割りについて決めませんか?」

「そうですね! ミルフィーヌさん」


「部屋割りも何もうちには二部屋しかないんだ。僕はここで寝るから三人で相談しなよ」


 今までは二つあった部屋を僕とレティで分けていたんだけど、急に二人も増えたら僕はリビングで寝るしかないだろう。


「お兄ちゃんは仕事大変だし今いる部屋でいいよ。だけど人が増えたから日替わりで隣で寝させてもらいたいの」


「はっ? どういうこと」


「だ、か、ら、お兄ちゃんのお布団で一緒に寝るから」


 そう言ったレティは顔を赤くし、ぷいっと怒った表情でキッチンの方へと行ってしまった。


「初日はレティちゃんで、次の日は私がご一緒します」


「ちょっと待って、何で聖女様が僕の布団で一緒に寝るの!?」


「無理を言っているのは私の方でもあるので、それぐらいは我慢します。気になさらないでください」


「いや、いや、気にするって。あっ、リタは? リタはどうするの?」


「リタさんは人の暮らしに慣れるまで、家の中では私とレティちゃんで面倒を見ます。ですので、今夜リタさんは私と一緒に寝てもらいます」


 どうやらリタはレティの部屋に固定で、レティと聖女が僕の部屋に交互にくるということらしい。


「優しく接してほしいとは言ったけど、それはそれで大丈夫なのかな……」


「ご主人様と一緒に寝れないのは寂しいです」


「リタさんがここで人として生活していくにはいろいろと学ばなければならないことがいっぱいあります」


 聖女の言うことも一理ある。リタが人の姿で生きていくとなると、覚えなければならないことはたくさんある。それは僕が教えるよりも同性であるレティや聖女に任せた方がいいのかもしれない。


「リタ。しばらくはレティや聖女からいろいろ教わった方がいい」


「うー。ご主人様がそう言われるのなら仕方ありません」


 その言葉に反応するように何故かレティと聖女がハイタッチしていた。

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