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悪逆の魔法使い  作者: こんぶ
南国編
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第五十話 始まり始まり

「聞いたわよ、ディアベルから。貴方ここの階層ボスを倒したんだってね」


「あぁ」


「私が強くなれたのはこの迷宮(ダンジョン)のおかげかもしれない。迷宮(ダンジョン)内にいる間は外の時間が殆ど立っておらず、尚且つ強さに合わせてその階層にいられるんだから。こんな所に飛ばされたけど、私が一番幸運なのかもね」


「さぁ、な。他の転移者にはまだ会ってないからな」


「そうなの?まぁ私はここでまた少し修行してから次の層へ行くわ。第八十層から幹部級の強さのモンスターが一階層当たり四体出ることがわかったの。そしてその四体でちょうどボス程度の強さだってことも」


「ほう」


「だから、それが倒せたら次の層へいく」


「早くいけるのにか?何故だ?」


ブラッドは答えが分かっていたが、それでもなお訊いた。


「そうね。自分が死ぬとわかっていて上層へ行く馬鹿なんて居ないわ」


「ふ、お前は賢いな」


「そう?この世界の人がみんな馬鹿なんじゃない?」


「かも、しれんな」


「ねぇ、他の転移者に会ったらよろしく言っといて」


「なんと?」


「忍浅葱は迷宮(ダンジョン)攻略者だって」


「分かった」


ブラッドは浅葱と言葉を交わして、そしてディアベルに別れを告げる。


「そうか、何から何まで助けて貰って申し訳ない」


「別に俺は助けようと思ったわけじゃない。邪魔だったからだ。それに、俺はあの女以外はどうでもいい。お前たちがどこで死のうと死ぬまいと何ら関係などない」


「……そう、か」


「そうだ」


ディアベルは若干引く。


「ではな」


「あぁ」


その割に挨拶はちゃんと言うんだ、とディアベルは驚く。


そうして、ブラッドは迷宮(ダンジョン)を出た。



風が吹く。

ブラッドは寒さを感じる。


「……」


『……寒っ!?』


「寒いな。昼間はあんなに暑いというのに不思議なところだ。砂漠付近は」


『……!ブラッド様、上!』


「……?」


ツァリに言われブラッドは上を見上げた。


「おぉ」


地は真っ暗だったが、夜空は一面の星に覆われていた。


「綺麗なものだ。これほどまでのものを見たことがない」


『そうですね、気候のせいでしょうかね〜。私もこのレベルはなかなか見たことないです…』


暫くして、ブラッドは星を見ることをやめ、前を向いて、自分の泊まっている宿へ歩き出す。


(…俺は一体誰に何を伝えたいのだろうか)


ブラッドの顔が少し曇る。

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ブラッドの必要とする素材は、

猛毒蠍(ポイズンスコーピオン)の甲殻と尾。

そして、闇蛙(ダークフロッグ)の皮、疾風兎(ウィンドラビット)の前歯、それから炎人(ファイアマン)の心臓、廻る兵器(サイクロン)丸々一体。

そして極め付きは不死鳥(フェニックス)の心臓と雷龍(ライトニングドラゴン)の宝玉。


「……全くアルペのやつ、面倒極まりないものを出してきやがって…」


しかし。

ブラッドは今何を糧に動いているのか、あまり分からなかった。

その点で言えばこのアルペの依頼はありがたいものなのかもしれない。


「……しかし、何だこの違和感は」


寝起きのブラッドは不快そうに眉をひそめる。


(何かを忘れている気がする。大事な何かを。)


しかしブラッドは思い出すことが出来ない。


女神を吸収した際に、欠けてしまったのだ。しかし取り戻すことは容易だ。

気づくことさえ出来れば。


「まぁしかし、迷宮(ダンジョン)を見る限り、不死鳥(フェニックス)の心臓と雷龍(ライトニングドラゴン)の宝玉は無さそうだな」


『逆に言えば!』


「それ以外は集まるだろうな」


ブラッドはホテルにて起床し、シャワーを浴びて洗顔し朝食を取り歯を磨いて服を着替え髪を整えて外へ出る。


「さて、アイツらと今日も行きますか」


ブラッド・リ・ディアベル。

実年齢は十七歳になるか。

精神年齢は三十をとうに越えていた。



────────遠くの国。


とある騎士。


「……遅い!」


「はいッ!」


ハリの良い女性の声が大聖堂に響く。

身長の高い女性とそれと比べれば低いが一般的に見れば普通の身長の女性が、全身に甲冑を纏い何かをしていた。


「我々はこの街を、ひいてはこの国を守るべく過ごしている。知っているな?」


「はっ、上官様」


「ふむ」


彼女は帝国騎士上官。

その上に最上位騎士がいる。

そして帝国騎士にはその上がいる。

最上位騎士のそのさらに上を行くもの、それは。


「五神…」


五人の神とさえ称される強さを誇る五人。俗称して五神。

そして、──


──帝国の騎士にはさらにその上が存在する。それは──


「天上人、ヴァイス様」


それは帝国最強。

或いは人類最強。

単騎にして最強。


帝国の守り神、天上人、ヴァイス。

種族は人間種(ヒューマン)であるが、肉体の能力はとうにその域を逸脱している。


「さて、今日も街をパトロールするか」


この二人がかなり下層の人間という訳では無い。

いやむしろ上層だ。

なぜなら帝国は──


「闇の深い国だな、やはり」


──一人の上官騎士、タミアは言う。


周りにいる奴隷たちを見ながら。


五十話です。ここまで続けられたのも皆さんのお陰です。

ありがとうございます。

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