第三十四話 到着
南国フィリアにブラッドはようやくたどり着いた。
国境が見え、その関門を抜ければフィリア国に入国した事になる。
ブラッドは元国王から貰った万能の割符があるので安心して国内へ行ける。
「…こ、この割符は…!」
「ってことで宜しく」
ブラッドは易々と国内へ入る。
顔パスのような気分で、何か心地よかった。
とりあえず、このままSSSを探すのは困難なのでブラッドはとりあえずアルペに言われた素材を取りに近くの森へ行く。
確か、南国の森にいるのだったか。
猛毒蠍。
その毒針と装甲が必要らしい。
他にもまだまだあるが、とりあえず一番近いものがそれだったのでブラッドは取りに行く。
「…お、いた」
いかにも獰猛そうなそれを手で鷲掴みにする。
そして、蠍は勢い良く一刺しする。
「あぶね」
が、ブラッドは悠々と避ける。
「…」
猛毒蠍は何度も何度も刺しつづけるが、その度に毒尾は空を切る。
その距離は五十センチもないのに、だ。
「…!!」
そして、猛毒蠍は恐怖を感じ出す──
──(仲間を呼ばねば)
その猛毒蠍はある特定の周波数を発し、仲間を呼ぶ。
──カサカサカサカサ。
「ん?こんなに大量にいたのか」
そして──
◇
それは芸術の一言であった。
何十という猛毒蠍の毒尾攻撃を全て避けるのだから。
同時に。
そして捕縛し、どこからか取り出した柄の黒い短刀で的確に急所を切りつけ、即死させていく。
「…!?」
そして、蠍たちは初めてこの人間には種を以てしても勝てないと悟る。
そして──
「あぁっ!おい逃げるな!」
◇
「まぁ大分手に入ったしいいか」
ブラッドは山を下りながら言う。
とは言え小さな山で、もう終わりなのだが。
しかし乾燥地帯と言うのに、砂漠などが一切ないのは何故だろうか。
不思議な話である。
「…ん?」
山を降りた時、三人の男女とブラッドは会った。
「…」
男が何か言ってきたが、無視して歩いていく。
何だか辺鄙な格好をしていると思われたかもしれない、とブラッドは素早く歩く。
あくまで平静。
「あのッッ!!」
「……?」
「貴方、ですよね、猛毒蠍を怯えさせたのって」
◇
最初は何かとてつもない失態をしたのかと思った。
もしや、この国にとってあの蠍はもしかすると敵ではなく味方なのかもしれない、とか。
「…あの蠍がどうか?」
「いえ、やはりそうだったんですね」
「?」
「貴方こそ、今ギルドに最も必要な人材です!」
「あぁ、俺もう登録済だから」
「えぇ…!ってそりゃそうか」
「帝国ギルドだけどな…って言うか、誰だお前たちは」
「俺たちはこの国フィリアで最近冒険者を始めました」
「…そか。じゃ」
「ちょまぁって」
「……?」
ブラッドは流石に何度も呼び止められ何か心に込み上げるが、我慢だ。
「…またご縁があったら、よろしくお願いします」
「…あぁ。お前名前は確か」
「ディアです」
「俺はブラッドだ」
◇
ブラッドはこの国でそれなりに大きなホテルに泊まることにした。
そこでは美味しいエスニック風料理が出るらしいが、どんなだろうか。
ブラッドは少しわくわくすると同時に、迷宮へと行かねばならないという憂鬱さが込み上げる。
「ばっふぁっ」
ブラッドはホテルの自室にて、盛大に布団へと飛び込む。
「…はぁ」
そしてそこで心を落ち着かせ、一旦状況や心情を落ち着かせ整理する。
「…SSS…それに、迷宮」
ブラッドとしてはまず迷宮攻略を先にしたい。攻略というか素材回収だ。
SSSの捕縛を後に回す方が良いと考えた。
まずは迷宮を先に攻略すれば良いだろう。
──ここ南国フィリアで最も有名なもの。
それが、迷宮。
資金源でもある。
「…」
とはいえ迷宮についての明確な記事や文献は確認されていない。恐らく情報は何らかの会社に独占されていると考えるのが自然だろう。
つまり情報を漏らしたくないほどの何かがあるということかな。
「…」
迷宮は、1人でもクリア者がいればその層はクリア判定となる。要はその層のボスを倒せば良い。
層が変わる度に一体どれだけ精神をボス戦で摩耗しなければならないのか。
それに、迷宮には多くの人が訪れる。
人が多いところは疲れるな、とブラッドは思う。
ベッドでごろごろする。アタマが半分どこかへ行ってしまったようだ。
「まぁ、今日はもう寝よう」
何だか眠くなったブラッドは、ベッドの上へもどる倒れ伏せた。
なにせ二日日近く間で走り続けてきたのだ。
「あ、ぁぁぁあ」
そして、ブラッドは深めの睡眠についた。
深い深い眠りに。




