第十六話 対女神
少し前。
ブラッド達は再び神殿前へと集合していた。
そして、再び攻め入ることを決意した。ブラッドが、熾天使王と。
エーデルガント、アルペが女神へと。
そして、王宮内へと再び侵攻し、エーデルガントとアルペ達は女神と対峙していた。
「戦法、怒涛叩解。」
「仙術じゃなくて、戦法?」
女神は驚いた。
攻め入ってきたことではない。
そのような事態は想定済みだ。そうではなくて、なぜ、戦法が使えるか、だ。
仙法でもない。
「…ふむ」
女神は、密かに安心していた。自分が召喚した、異界召喚者たちを、なんとか王宮外へと出すことに成功したからだ。
今、自分が全うすべきことは、彼らを保護すること他ならない……。そうであると、女神自身も分かっていたのだ。
治神。年齢不詳。
但し、恐ろしく長い悠久の時を過ごしているのは事実。
また、歳を重ねるにつれ、知識も増えていく。
治癒の女神、治神はその莫大な知識の中から、戦法を思い出す。
「…」
女神の相手は最高位騎士、エーデルガンドが五人。
それから、
「漆黒の魔法使い…か」
反耳長族…いや、
「闇妖精…か」
妖精の里へ行くと分かるが、耳長族の真名は、森妖精である。
そして、その中でも、驚異的な魔法を使える闇妖精。
(厄介ね…)
女神は内心毒づく。
もともとこの事態を想定し、召喚した者たちはみな逃がしたのだが。
と、考えていると、エーデルガンドの一人が戦法を使い、女神に攻撃してきた。
「ま」
いいかしら、と。
女神は微笑んだ。
何。
私に攻撃できるものは、いない、と。そうたかをくくっているのだ。
何故なら、通常、神に攻撃を通すことは不可能だからだ。
創造されたものは、創造した者を倒すことができない。
よって、女神はあらゆる魔法攻撃と物理攻撃を防ぐ。
故に、
(まぁ、見てあげましょうか)
エーデルガンドの一人、黒髪の男は戦法を使い女神へと攻撃する。
それは、思い出そうとしたがそもそも記憶になかった、女神の知識にもない技である。
「…」
とは言え女神も馬鹿ではない。
流石に自分の知らない技には警戒する。
「…?」
疾風の如き拳が女神へと降り注ぐ。
「…はぁ、ほんとうに」
呆れたようにそれを手であしらう女神。
彼女にとってみればそれは止まって見えた。
のだが。
「…ぶふっ!」
黄金の血が口から漏れる。
「…は?」
女神の血は黄金の色である。
「…」
(攻撃は直接食らってはいないはず…!?それに私は人間種の物理攻撃は全て無効なはず………!?まさか!)
最高位騎士、エーデルガンド。
一体誰が、それが人であると言っただろうか。
「…ぶふっ…!亜神か!」
それは、女神から見ればすぐに分かった。溢れ出す神聖の力。
亜神種であるというのは見てすぐわかった。
「ぶ…」
どろりと喉の奥から熱い液が溢れ出す。
生命の泉とも表現されるそれは、人が浴びればすぐさま再生するほどのものである。
黄金の血は価値が高く、1ミリリットルでも数百万円単位で売られるほど。
「…」
亜神。半神ではない。半神は人が神に成った姿。
亜神は神と人の間のもの。
要は、
「この、出来損ないがっ!!」
女神の目が見開かれる。
額から赤き瞳が出現。
女神の第三の目。
効果。
人間種に対してのみ、石化、即死、反重力を与えることが可能。
追加効果。
女神の全体的な能力の超向上。
「…貴様、一体何の亜神だ…?」
「お前に教える義務はあるまい」
「…そうか。」
(……?待てよ。何か、違和感を感じる。)
「…あの、闇妖精…!」
(…エーデルガンドは、まさか!)
「ありえな」
「五柱発動型捕縛術式展開」
五人のエーデルガンドが女神を囲い、猛攻。
すぐさま、次元転移を使用しようとするが。
「…どうして?」
発動しなかった。
(予めあの小娘が転移阻害をかけていたのか。)
「いや、それよりも…!」
(あの小娘…!そういうことか。)
「だから、闇妖精ではなく、反耳長族なのね」
天才魔法使い、アルペ。
そう。これは、単純なパワーの話になるが。
まず、体術に関して、一対一で勝つことは、片方が強大であれば、容易にその片方が勝利する。
では、三対一ならどうだろうか。
その場合、仮に相手が一般、普通程度のちからであっても、強大な力をもつものの勝率はぐっとさがる。
およそ、三割から、四割まで。
そして、相手が五人にもなれば、それは、ほぼ勝率がない、とも言える。
だがしかし。
そんな状況を簡単に変えることができるものが存在する。
そう。武器である。
武器を使えば容易に殺戮が可能だ。
剣というまず斬り殺すものが出来て、銃という殺戮の象徴のようなものができた。
或いは、爆弾など。
そうして、大量虐殺が可能になった。一個の個体値、能力値など関係なく。
だがしかし。
その武器さえくつがえすものがあった。
武器に体術がかなわないように。
それに武器はかなわない。
それこそが。
「魔法──」
エーデルガンド五人の体が光る。
「闇喰」
黒き蛇のようなものが、現れた。




