二度目の運命
転生なのにラブコメな物語を書いてみました。
楽しんででただけたら嬉しいです!
俺とあいつの出会いはまさに運命だった。
そしてこの運命に二度目があるなんて
思いもしなかった。
俺が小学生に入りたての頃、母親が入学祝いにおもちゃを買いにショッピングセンターへ連れてってくれた。当時の俺は毎月発売される小学校一年生向けの雑誌が好きで、その時まだその本を買っていなかったからおもちゃを買う前にそれを買いにいくことにした。本屋に入るとすぐにそれは見つかり、足早にレジへ持っていった。恐らく早くおもちゃを買いたかったんだろう。そして俺はレジで母親に会計を済ましてもらうと、母親からこう言われた。
『亮くん?今小学校一年生向けにこの本屋でぬいぐるみを一つプレゼントしてるらしいんだけど、いる?』
もちろん俺はまだガキだったからこう答える。
『ほんとに!?やった!』
『では、あの中から選んでくださいね。』
レジの定員がそう言うと、俺はレジの後ろの上の棚に並べられたぬいぐるみを見渡す。
ディ◯ニーやポ◯モンなどの数々の有名キャラクターがいる中、俺はひとつ無名なぬいぐるみを見つけた。白くてふわふわしてそうだが、目も口も左右でずれてて非対称なぬいぐるみ。
その時俺はビビッときた。これが直感と言うやつだろう。なぜか俺は無性にそいつのことが欲しくなってしまった。
『ママ、あれが欲しい。』
俺はそいつの方へ指を指す。
『ピカチ◯ウ?』
俺は首を横に振って言う。
『ちがう。あの白いの。』
『ミ◯キー?』
『ちがう!その左!』
『白いの?あのニコちゃんみたいなやつ?』
『そう。』
『ピカチ◯ウとかミ◯キーじゃないの?』
母親は頓狂な顔で尋ねる。それもそうだろう、小さな息子があの有名キャラクターを差し置いて見たこともないぬいぐるみを選び出すのだから。
『いいの!』
『そうなの?わかったわ。じゃあその白いニコちゃんみたいなぬいぐるみを一つお願いします。』
こうして俺の所にやってきたそいつは、白くてふわふわして柔らかい。俺の予想通りだった。
尻の方についていたタグに
「ひとやすみくん」
と書かれていたので俺はそう呼ぶことにした。
『ひとやすみくんよろしくね!』
俺は既にそいつの虜になっていた。
もうおもちゃを買ってもらうことなんかどうでもよくなるほどに。
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ピピピピ、ピピピピ、ピピピピ
『ふぁぁー』
聞き慣れたアラーム音。俺はそれを止めようとはしない。俺はいつも遅刻ギリギリまで寝ていたいので、アラームを学校が始まる10分前にセットし、超ダッシュで学校へ向かうのだが、何せ今日は土曜日。学校が無いのである。
土曜日は慣れ親しんだアラーム音を子守唄代わりにして、二度寝をするのが俺のルーティーン。意外とリズムが良くて寝やすいのである。
『さて、今日も再び夢の世界に行きますか。』
俺はベットからはみ出した布団を手繰り寄せ、自分に被せる。あーベット最高。
もう一生ベットにいてもいいわ。
ベットこそが一生の伴侶だな。彼女なんか要らん。もっともリア充もベットを最高だと思っていると思うが、陰キャの俺とは使う用途が違うのである。俺の用途は様々だが、ベットに寝たまま自分は今いかだ乗ってジャングルを探検しているのだと想像することが俺の中で一番有意義な用途であることに間違いない。これ本当にジャングルにいる気分になれるから超おすすめ!特に照明を消して部屋を真っ暗にすると再現度アップ!
そんなことを考えていた俺もそろそろ夢の世界へ入る頃である。
だんだん狭くなる視界。
だんだん低下してくる思考。
だんだん聞こえなくなるアラーム音。
ピピピ、ピピピ、ピピ、ピ、ピッ!
アラーム音が思考を追い越して先に消えた。
俺は目を覚ます。何故だ?おかしい!あの時計は止めない限りアラーム音15分間鳴り続けるはずなのに!
俺は直ぐに布団を顔の前からどけると、時計の方を見る。しかし、そこにはあのぬいぐるみが時計に覆い被さるようにうつ伏せになって置いてある。
『なんだ。ひとやすみくんかよ。ビックリした。』
すると突然聞き覚えの無い声が聞こえた。
『ビックリしたのはこっちだよ!なんでアラームを止めないで布団に潜り込むんだ!』
『わぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』
俺は言葉を失った。ただ叫ぶことしかできない。だってひとやすみくんが話しているんだから。
『何ベットから転げ落ちてるんだ。醜いぞ!』
ひとやすみくんは俺を嘲笑して言う。
『わぁぁぁ!!!』
転げ落ちる?は?え?何を言ってるんだこいつ?なんで話してるんだ?夢か?いやでも、背中が妙に痛い。これは現実か!?リアルなのか!?いや、一旦冷静になれ!こいつが話す訳がねぇ!。夢に転げ落ちただけだ!
『ふぅぅ』
俺は一息つく。するとひとやすみくんはまた喋り出す。
『これは夢だとか思っているかもしれないがこれは現実だ夢なんかじゃないぞ。』
『わぁぁ!!』
『うるさい!!』
図星を突かれたからまた叫んでしまった。
いや少し落ち着こう。何だこれは!?あいつは夢じゃないと言ってるし、てかそもそも何で話せるんだ?やばい、何にも訳が分からない。
とりあえずあいつに質問してみるか。
『あ、あの、一つ質問していいですか?』
何で俺ぬいぐるみに敬語使ってんだろ?
『ああ、何だ?』
『これは夢ですか?』
『違うぞ。』
『じゃあ現実だと?』
『ああ、そうだ。』
『分かりました……って分かるかよ!』
『ツッコミできるのか?お笑い芸人志望か?』
『そうなんですよ…って目指してないわ!』
『おお、上手い上手い。』
何で俺ぬいぐるみに誉められてるんだろう?
『とにかく、これがもし仮に現実だとしたら、あなたは何故話せるんですか?』
俺はこれが知りたかった。
なぜならひとやすみくんが話せることを何度か期待をしていたことがあるからだ。
『端的に言うと、転生したんだ。』
『は?転生?』
『ああ、転生だ。僕の体に僕の魂が宿って活動を開始したんだ。』
僕ってツラか。良かった俺とかじゃなくて。
『魂っていうのは何なんだ?』
『魂は魂だ。これは、君が僕を最初に手にしたときに生まれものだぞ。』
『最初に手にしたとき?それって俺が君に初めて本屋で出会ったときのこと?』
『そうだ。』
『てことは、今までの俺と一緒にいた記憶はあるってことなのか?』
『ああ、あるよ。お前が俺を時々ベットに持っていかないときはリビングで寒い思いをしたなぁ。』
『ああ、ごめん。』
実は俺は朝起きたら毎日リビングにこいつを持っていき、学校から帰ってきて寝るときにこいつを寝室へ連れていきベットで一緒に寝るという高校生二年生の男児にしては恥ずかしい、誰にも言えない性癖を持っているのだ。
『まぁ、たまには一人の夜も気持ちが良かったが。』
ひとやすみくんは懐かしむように言った。
『でも、何で今転生したんだ?転生出来るなら、もっと前から出来たんじゃないのか?それとも自分の意思では転生できないのか?』
『いや出来るぞ。』
ひとやすみくんは当たり前のように言った。
『じゃあ何故今なんだ?』
『それはな、ある理由があるんだ。』
『理由ってのはなんだ?』
『それはな、、』
俺は姿勢を正す。
『竹林竜太郎、君に彼女を作ることだ!』
次回もよろしくお願いします。