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距離はそう遠くなく、徒歩5分ほどで博士の家に着く。
声紋認証に指紋認証、そして顔認証を済ませて門を開ける。
因みにこの行為自体は何の意味もなく、門は押すだけで開けることが可能だ。
随分前に博士に、なぜこんな無駄なことをするのかと聞いたら「男のロマンがわからんのか!」と怒られたことがあるが、俺の言いたかったことはなぜそのロマンをセキュリティとして使わないのかということだ。
家の中に入り直線状の廊下を進むと、突き当りの普段入ったことがないドアを博士が開けた。
「今日は特別にワシの研究室に入れてやるから周りのものには絶対に触るんじゃないぞ?」
扉の奥にはさらに下階へと進む階段がありその前で立ち止まって俺とコリンにそう告げる。
博士の家には何度も来ているが、研究室にはまだ一度も入ったことがない。
「え、研究室入ってもいいのか?」
「特別だからね!!僕の私物にも触らないでね?勝手に触ったら君を麻酔針でロックオンだよ?きははは」
馴れ馴れしく話しかけるな。
という言葉の代わりに自慢げに袖を捲って見せてきたオモチャの腕時計を腕ごと壁に叩きつけてかち割ってやった。
その後コリンはしばらく黙りこくって腕を摩っていた。
ざまあ。
「ここがわしの研究所じゃ」
階段を下りた先には某探偵アニメのCMの前後で見るようなイカつい見た目の観音開き扉があり、ギギィッというお馴染みの音を立てて扉が開く。
研究所の中には色々な装置がごちゃごちゃに散らばっており、いかにも危険そうなもの(R18的な意味で)が7割を占めている。
研究室は円形で、部屋の真ん中にポツンと置いてある掃除用具入れに似た大きなボックスは、その中でも一際存在感を放っていた。
「わ~博士の研究はやっぱりすごいね~。この装置なんて僕見た事ないよ?阿笠博士~。このボタンは何~?」
コリンは部屋の真ん中の目立ったボックスではなく、その奥に置いてある謎の装置に近付き、躊躇なく得体の知れないボタンに触ってしまった。
すると『シュン』という音と同時にコリンは跡形もなく消えてしまった。
「え!何今の!?コリンが消えたぞ博士!!」
「え!?何でじゃ!!なぜ消えた!?」
なんでお前が予想外なんだよ。




