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「あら、もしかして不味かった?」
「違います!お姉様、このハヤシライスという食べ物とっても美味しいです!!
生まれて初めて食べた食事がこんなに美味なるものなんて私感激です!」
んな大袈裟な。
「ふふ、そうでしょ?
毎日私が料理してるから知らないうちにうまくなったのよ。
でもそこまで言ってもらえると自信付くわね。いっそプロでも目指そうかしら」
市販のハヤシライスで何ほざいてやがる。寝言は寝て言え。
俺も一口分スプーンで掬い、口へ運ぶ
「別に普通じゃね?」
「私が作らなかったらあんたは食べる手段失うけど、餓死か撲殺か。どっちがいい?」
はいかイエスみたいな質問。
「ごめんなさい」
先程のみさきの言葉に違和感を感じたのか『それ』が怪訝な顔で割って入る。
「みさきさんが毎日お料理を?」
「そうよ。私しか作れる人がいないからね」
「そうなんですか。そういえばお二人の母君や父君を見かけませんがいつ頃帰宅されるのですか?」
母君や父君って、いつの時代の言葉だ・・・。
まあでも両親の事はやっぱり気になるよな。
「ああ、実はうちの親この子が小さいころに離婚しててずっと父子家庭なのよ。
しかも父親の仕事は研究ばかりの自称科学者で、ある日からパッタリと家に帰ってこなくなって、それ以来私達二人だけで色々やりくりしてるの。まあ昔から何もしない父親だったからあまり変わらないけどね」
話だけ聞くとわりと悲惨な家庭だが大体どの家庭にも理由は様々であれ何かしらの悩みや問題があるものだ。うちの悩みは親子関係だってだけの話で。
ぶっちゃけ父親の顔はうる覚えだし母親の顔は全く知らない。
父親との最後の会話は5年前で
『飲み物買うついでに散歩に行く』という一言を最後に出ていったきり会っていない。地球の裏まで買いに行ったのか、はたまた塩酸でも飲んで死んだか。もうどうでもいい事だ。
だが親が両方いなかったお陰で姉とは必然的に協力し合っていく中で仲良くなった。
だからといって父親に感謝をしているのかと問われれば俺の答えはNOだし、親を恨んでるかと問われたら意外とそうでもない。
友人の保護者たちから何度か訪問されたり、施設から声がかかったこともあるが姉が大学をやめて働くようになったし、別に父親に捨てられたと思ったわけでもなかったので気持ちはありがたいが本当に心配する必要は無いと思っていた。




