11ページ目 第三幕【初夜】
俺と『それ』は博士の家を出て、冬真っただ中の夜道を歩いて帰る。
街灯は数十メートルに一本しかなく、車も人も通っていないせいかとても静閑としている。
・・・気まずい。
博士宅を出てから2~3分は経過したはずだが、一切言葉を発することなく沈黙の時間が続く。
相手が機械とはいえかわいい子と初対面ともなると利いた事の一つも言えない自分が情けない。
何か話題・・・・話題話題話題話題話題・・・。
ん?そういえばずっと体操服でいるがこんな気温で平気なのか?
「な・・・なあ。お前さそんな恰好で寒くはないのか?」
「あ、はい。寒くないです」
やっぱロボットだとそういった感覚神経とかないのかな。
「そ、そうか」
「はい」
・・・・・・・・。
気まずい!
どうしてこんなにも女の子に対する免疫がないんだ俺は!
この無音の時間が耐えられない!相手が何を考えているのかもわからないし、時間が過ぎれば過ぎるほど、「この人といても全然面白くなーい」とか思われてそうで怖い!
何より自分がとてつもなくつまらないんじゃないかと認識するのが辛い!!
そもそもなんで男が楽しませなきゃいけないんだ。女の子が楽しませてくれてもいいじゃないか!
話が面白くない!?女々しい男は嫌い!?友達としても嫌!?
うっせえ!!こっちだってなあ!そんな女はお断りだ!!
選ぶ権利が女にしかないと思ってんじゃねえええええええええ!!!!
「あのー、すみません」
「へ?」
あれ、俺今声に出してないよね・・・?
「わたしはあなたのことをなんとお呼びすればいいでしょう?」
「あ・・あぁ!呼び名ね!うん、何でもいいよ。そっか、まだ名前も言ってなかったな。俺は寺野仏丸だ。
周りからは仏丸って名前で呼ばれることが多いな」
「では是非わたしも仏丸さんとシモの名前で呼ばせてください」
下の名前と言いたいのかな?
「お前は名前なんて言ったっけ?何て呼べばいいんだ?」
「PX108です。製造番号は25番。差し支えなければメスブタとお呼びください」
差し支えるよ。
「あ、嫌なら肉奴隷でも避妊具でも穴人形でもなんでもいいです?」
・・・薄々気付いてはいたが、やはりこいつはかなりハゲの影響を受けている。
下ネタ?卑猥??
何て言えばいいだろうか。
うん、汚い。なんかね、汚い。
あのハゲが何を狙ったか知らんが、ギャップってこういうことじゃないんだよ。
「・・まあ呼び方は後で考えるとしてだ。とにかく一旦家に連れて帰るが余計なことは何も言うなよ?家族がいるが事情は俺から説明するから」
「余計な事とはどんなことですか?」
「だから肉奴隷とか避妊具とかそういうのだよ!」
「?」
「もういい、お前なんも喋るな・・」
本当に何が悪いのかわからないといった表情でこちらを伺う『それ』。
一体博士がある程度組み込んだっていう常識ってやつは何のことを指すのだろうか。
まあ、おかげで緊張感もなくなって普通に会話ができるようになったが、果たしてこの先どうなるのやら・・・。
幸先が悪すぎて頭が痛くなってくるぜ。
そこからは俺の言いつけ(?)を守ってか、お互い特に喋ることなく自宅に到着した。




