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ニコイチート~チート持ちとニコイチで異世界転生させられたので、手探りで冒険します~  作者: 桐山じゃろ
第一章

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7 よくわかんないけど2日で上級者になったよ

 宿屋のおじさんに部屋へ案内してもらって、一息ついた。

 安い部屋だからベッドと机と椅子くらいしか無いし、風呂トイレは共同だけど、隅々まで掃除が行き届いていて清潔感がある。さらに、簡単な朝食まで付いてくるらしい。


“良い宿屋だな”

 ヴェイグも気に入ったようだ。

「うん、ラッキーだったね」

“今日のようにクエストがこなせるなら、ここを拠点に稼ぐのもいいな”

「そうだね。この先何があるかわからないし、稼げるだけ稼いでおきたいね」


 というわけで、翌日もクエストを受けて達成しまくった。

 一人前(シングル)から上級者(ベテラン)になるには、難易度Eのクエストを3年以内に50回こなす必要がある。上へ行こうとするほど条件は厳しくなるし、難易度Gでもそこそこ稼げてしまうので、一人前(シングル)止まりの冒険者は結構多い。

 でも僕たちには、最終的に自分たちの身体をなんとかしたいという目標があり、今のところ手がかりがない。何が必要になるかわからないから、お金は持っていたほうが良いに決まっている。

 だから、上を目指そうということになった。


 初めて受けた難易度Eのターゲットは獅子鳥(ししどり)。顔はライオン、それ以外は鳥の姿をした空を飛ぶ魔物だ。

 短剣では戦い辛いので、ほとんどヴェイグにやってもらった。

 ついでに僕も魔法の練習をしてみたけど、やっぱり上手くいかない。

「同じ身体使ってるのにね」

“魔法やスキルは魂か何か、別の要因で使うということなのだろうな。興味深い”

 ヴェイグも初めはスキルが使えないのを悔しがっていたのに、あっという間に気持ちを切り替えて、今はこの違いを楽しんでいるふうだ。大人だなぁ。


 この日1日で60匹の獅子鳥を狩ることができた。クエストは1匹で1回だから、60回達成したことになる。上級者(ベテラン)へランクアップ完了だ。

「登録して2日で上級者(ベテラン)になる方は初めてみました……」

 すっかりお馴染みになった受付さんが驚きつつギルドカードを更新してくれた。


 ヴェイグの魔法のお陰で簡単に狩れたのが一番の要因だけど、僕の魔力をヴェイグに渡す方法を編み出せたのも大きい。

 僕は魔法が不得意なくせに魔力だけはヴェイグの倍ぐらいあるから、勿体ないな、と思ったのが切掛だ。

 魔力の操作はできるから、右掌に魔力を球状にして集めておく。その状態で交代すると、ヴェイグがその魔力を受け取れるのだ。

 さらに、中にいる方は魔力の回復速度がかなり早い。つまり、ヴェイグの魔力が尽きたら僕が渡して、また使い切るまでには僕の魔力がそこそこ回復している。

 この半永久機関で、日が暮れるまで獅子鳥をサーチ・アンド・デストロイできたのだった。


 上級者(ベテラン)から熟練者(エキスパート)へのランクアップ条件は、難易度Cのクエストを100回達成することだ。この先は何年以内に、っていう期限はなくなる。この調子だとまた数日でランクアップできそうだな、と朝からクエストボードを見ていたんだけど……。


「C、って出てないね」

“このあたりは比較的平穏な地域のようだからな”

 受付さんに聞いたら、最後に難易度C以上のクエストを貼ったのは1ヶ月ほど前だそうだ。

 仕方なく難易度Dのクエストを受け続けた。


 この後も数日間、毎日難易度Cのクエストを探すも、やはり貼られない。また難易度Dのクエストメモを手にとった時だった。

「アルハさん?」

 後ろから声をかけられた。振り向くと、メルノが立っていた。

「ああ、こんにちは」


 そういえば彼女たちも冒険者なんだ。小柄な姉妹だから、魔物相手に戦っている姿の想像がつかない。

「こんにちは。……えっ!? 難易度Dを受けられるんですか?」

 手にしていたのは、難易度Dのフレイムベア討伐のクエストメモだ。Dもあまり数がなくて、選べない。名前を見る限り燃えてそうだから、ヴェイグの魔法頼みになるかな。


「うん。この前、上級者(ベテラン)になったよ」

「あの、もしかして2日で新人(ルーキー)から上級者になった方って、アルハさんなのですか?」

「そうだけど、どこで聞いたの?」

「噂になってますよ。黒髪の新人がすごいって。……あ、すみません」

 クエストボードの前で突っ立っていたから、他の冒険者にぐいと押しやられた。

「っとと、ここで話し込むのはよくないですね。私達もそろそろ行きます。ご武運を」

「お互いにね」



「どこで噂になってるのか聞きそびれた」

“大方、他人のことばかり気にするやつが、受付のやり取りをでも盗み聞きしていたのだろう。気にすることはない”

「気分良くないなぁ。でも、確かに気にしてもしょうがないか」

 吹っ切るためにグッと顔を上げ背筋を伸ばして、堂々とギルドハウスから出た。


 フレイムベアの出現場所は、森を抜けた場所にある岩山地帯だ。普通は往復するだけで半日以上かかる距離だから、このクエストを受ける人は大抵野宿の準備をする。

 僕なら日帰りも余裕の距離だけど、野宿セットはそのうち必要になるだろうからと道具屋で色々と揃えていたら、結構時間を食ってしまった。


“もうすぐ昼になってしまうな。走ったほうがいいのではないか?”

 ヴェイグがなんかワクワクしている。そういえば初日以降、長距離を走ってないな。あのとき「また今度」って言った気がするし、ここはリクエストに応えよう。

「そうだね。目的地まで走ろうか」

 森に少し入ったところから、全速力で駆けた。


“♪”

 ヴェイグは何も言わなかったけど、なんだか嬉しそうな感情が伝わってくる。楽しんで頂けて何よりです。


 目的地にはあっという間に到着してしまった。時間にして10数分くらいかな。

 普通に歩いたら数時間の距離のはずだから……スキルすごい。

“帰りも、よければ頼む”

 ヴェイグはもうすっかり乗り物にはしゃぐ男の子状態だ。クールな性格だと思ってたんだけど、こういう一面があるんだな。


「じゃあ早速、気配を……ん?」

“どうした? 疲れているなら交代するぞ”

「いや、そうじゃない。なんだ、これ」

 同じ強さの魔物のグループがいくつかと、少し離れた場所に飛び抜けて強い気配。さらにその近くに、人の気配。

 グループは多分フレイムベアだからいいとして、強い魔物と人、という組み合わせが不穏だ。

 しかもこの人の気配、知っているような気がする。

 僕がこの世界で気配と個人が結び付けられるのは、ヴェイグと、ギルドの受付さんと、宿のご主人と……。

「メルノだ。メルノの近くに、強い魔物の気配がある」

“クエストを受けているのではないか?”

「でも魔物のほう、メルノよりかなり強い。それに、マリノの気配がない」

“様子を見に行くか?”

「うん」


 メルノがそういうクエストを受けているだけなら、いいんだけど。

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