表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ニコイチート~チート持ちとニコイチで異世界転生させられたので、手探りで冒険します~  作者: 桐山じゃろ
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
53/219

13 VSロード・ヒッポグリフ

「げふっ」

 ヒッポグリフが完全復活する前に動こうとしたら、何かがこみ上げてきて、咳き込んだ。

 咄嗟にあてた手には、血が付いた。


「……っげほ、げっ」

 踏まれた時にどこかを痛めたようだ。胸のあたりが軋む。

“右手を”

 大丈夫、と言いたいのに、喉からヒューヒューという音しか出ない。血が留まってしまったようだ。

 喋れずにいたら、問答無用で右手を使われた。癒やしの光が、胸元にあてられる。


 ヒッポグリフの方は、首と胴が完全に元通りになったようだ。

 またこちらに前足を振り上げてきた。

 申し訳ないが、一撃で倒せない。

 刀を振るって、その前足を斬り落とす。


 体制を崩しかけつつ、そのまま翼で飛び上がっていった。そういや、飛ぶんだった。

 前足は首のときと同じく、血で繋がって空に浮かび上がった。


 更に何度か咳をして、喉の血の塊を吐き出す。

「うえ、この味は、慣れないなぁ」

“美味いと感じたら、それはどうかと”

「確かに」

 軽口を叩く余裕も出てきた。


 弱点三箇所を同時に。方法は色々思いつく。最適解はどれだろう?

 暫し黙考していたら、ヒッポグリフが先に動いた。

 潰した嘴がいつの間にか復活していて、そこから炎を吐き出した。範囲が広い。

「建物が!」

 近くの炎しか消せず、木造の家に火が付きはじめた。


 最適解とか言ってられない。

 早い決着が最優先。魔物への配慮っていう甘い考えは捨てる。


 全力で跳び上がり、足場を創ってヒッポグリフに迫る。前足は既にくっついていた。

 相手は空を自在に飛べる。僕も戦闘中に飛ぶ方法を探したほうがいいかも知れない。今は間に合わない。


 ヒッポグリフの翼を狙って、斬撃。切断には至らなかったけど、滞空はできなくなったようだ。真っ逆さまに落ちていった。

 着地と同時に、拳に半透明の篭手を創り、四肢に拳打を食らわせる。

 切り傷より、打撲や骨折のほうが治りにくいのは魔物でも通じるかな。

 その効果の程を確認するより先に、頭蓋や首の骨、背骨も折っておく。

 ヒッポグリフが嘴の端から泡を吹き始めた。完全に動けないようだ。

 弱点の3箇所近くに刀身を百振りずつ創る。


 身振り手振りはしなくてもスキルは発動するけど、やったほうが制御しやすい。

 左手を握りしめると同時に、全ての刀身が一斉に動いた。




 火はヴェイグの魔法で消してもらった。

「っはぁー……」

 大きなため息が出る。

“よくやったな。疲れたなら、替わるぞ”

「平気」

 ヴェイグに言った『もっと交代を要求して』は、こういう時のためじゃない。

 街を散歩する時とか、美味しいものを食べる時とか、楽しいときにこそ要求して欲しいんだ。


「そう言わずに替われ」

“っ!?”

 そういえば、ヴェイグからの全身交代成功してたんだっけ。

“……こういう感覚なのか”

「どんな気分だ」


 身体の中にいるのは、空中を漂っているような感覚だ。それは何度も体験してきた。

 ただ、交代のとき……横に並んだヴェイグが肩に腕を回してきて、ぽんぽん、と叩かれたような気がした。


“悪くない”

「だろう?」


 ヴェイグはスタスタと少し歩いて……足を止めた。

「忘れるところだった」

“え、どうしたの”

「ドロップアイテムを回収していない」

 すっかり忘れてた……。



 回収したアイテムは、ティターンのより小さい封石と、真っ赤な槍、それに金色の大きな風切り羽が3枚。

“封石のサイズが意外。もっと大きいのが出るものかと”

「だが、不思議な色味をしているな。角度によって変わる」

 ヴェイグが摘んだ封石をあちこちに傾けると、蒼から黄、赤に変化した。

「アルハ、無限倉庫を。替わってくれ」

“折角だからヴェイグから替わってよ”

「まだ出るだけで精一杯のようでな。この状態では俺から替われんのだ」

“そっか”


 交代して、無限倉庫を出してアイテムを仕舞う。そのまましれっと交代せずに行こうとしたら、ヴェイグから交代が来た。

“大丈夫なのに”

「疲労とは己の預かり知らぬところで蓄積するものだ。森の時もそうだっただろう」

“あの寝坊のこと? でもスキルに代償は無いって……”

「スキルの行使に代償は要らぬが、アルハの気力は消耗しているだろう」

“うーん”

「とりあえずギルドへ向うぞ。暫く任せておけ。俺もアルハの振りを練習したい」

“そういうことなら”




▼▼▼




「がっ!」


 ギルドハウスの会議室の壁に、男剣士が一人叩きつけられた。

 叩きつけたのは、コワディス。武術大会でアルハに1回戦負けを喫した剣士だ。


 会議室にいるのは10人。

 コワディスと、コワディスについた者が4人、統括のガブレーン、オーカとその仲間3人だ。

 オーカの仲間のうち一人はたった今、コワディスが壁に叩きつけた男だ。

 さらに二人はその前に斬られ、床に倒れている。


 まだ立っているオーカの仲間が、倒れた仲間に駆け寄る。

 他の倒れたものも、意識を失っているか、動けぬほどの重傷を負っている。


「自分が何をしているのか、わかってるの?」

 剣を構えたオーカが、声を張る。

「ギルドの面目とやらを潰しに来たんだよ。ほら、この場で俺にやられるか、外で魔物に食われるか。選べ」


 コワディスは、武術大会では賭けの片棒を担いでイカサマをする前から、優勝の常連であった。

 冒険者ではないが、魔物なら難易度Bを複数相手にできるほどの強者だ。

 オーカとは互角か、それ以上だろう。

 人数も不利に陥っている。


「賭博詐欺を暴いたことの逆恨みか。それならば、オーカ嬢は関係ないだろう」

 ガブレーンがオーカを庇うように前へ進み出た。


「うるせっ! 冒険者は全員殺してやる!」

「もしや、呪術を使ったのは貴様か」

「そうだ! 都合のいい方法だったんでなあ!」

「何を吹き込まれたか知らんが、魔物が人の言うことを聞くことはない」

「なんだ……と……!?」


「アルハ!」

 オーカが青ざめた顔で叫ぶ。


 部屋の入口の扉がいつのまにか開いていて、そこにアルハが立っていた。




◆◆◆




「お前がっ!!」

 武術大会の時の……コワディスと言ったか、そいつが俺に剣を振り下ろしてきた。

 確かアルハは、武器を持ったやつには容赦しないのだったな。

 剣を避けるついでに踏み込み、鳩尾に拳を叩き込んだ。

「かっ……」

 呻く背中を踏みつけて、床に押さえつける。


「取り押さえろ!」

 別の部屋にいた冒険者たちがいつの間にか集まっていて、足の下のコワディスを拘束した。

 よく拘束される男だ。

“この人いつも拘束されてるね”

 アルハと同じ感想を抱けたようだ。


 コワディスについていたらしい連中は、コワディスが捕らえられたのを見てあっさりと降参した。



「アルハ! 大丈夫なの!?」

 オーカが青ざめたまま、近寄ってきた。

「ああ。この通り……とは言い難いか。傷は全て癒やしてある」

 自分の姿を顧みれば、全身血まみれだ。腕はアルハが、足は俺が傷つけたものだが。


「……? アルハ、なの?」

 怪訝な面持ちで見つめられた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ