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ニコイチート~チート持ちとニコイチで異世界転生させられたので、手探りで冒険します~  作者: 桐山じゃろ
後日譚

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一対のピアス

 メルノを誘拐した憎き転移魔法には、呪術が組み合わさっていた。

 せっかく、世界中の痕跡を消してきたのに。またか、と思った。


 ヴェイグに見てもらってから、さっさと[解呪]するつもりだった。


「これは、使えるかもしれんな」


 あれだけ呪術を嫌っていたヴェイグが、魔法陣を見て唸った。

〝使える?〟

「この術式には、悪いものが一切無い。贄や対価を必要とせず、書き換えた(ことわり)を更に書き換えて元に戻している。……なるほど、こういうやり方があったか」

 ヴェイグは魔法陣を紙に書き写し、消さずに立ち去ろうとした。

〝残すの?〟

「既に機能していない。だが、そうだな。消しておくか」

 メルノに危害を加えたものを残しておきたくない。

 僕の気持ちを汲んでくれたヴェイグが、足で魔法陣を踏み躙った。




 メルノを助けたときのことを、本当によく覚えていない。

 誘拐犯たちを傷つけたことは全く後悔していないけど、廃屋とはいえ家一軒とその周囲を瓦礫にしてしまっている。

 廃屋の所有者であるご婦人の元へお詫びをしに行ったら、元々取り壊す予定だったからと弁償費用を受け取ってもらえなかった。

 後でギルド経由で、ご婦人の依頼は僕が無償で引き受けられるよう手配しておいた。 


 誘拐犯たちは、エイブン国へ強制送還するのも面倒なので、リオハイル国が代わりに裁いてくれることになった。

 奴らは尋問で、比較的素直に色々と喋ってくれたそうだ。

 僕がよほど怖かったらしく、重要そうなところで口を噤んでも、僕の名前を出すと直ぐに吐いてくれて楽だったと、後で聞いた。

 そして、この話が妙な具合に広まった。


 例えば、メルノに手を出すと、アルハが音もなく現れて、全身の骨を折られるとか。

 メルノに用もなく触れただけで、天から雷槌が降ってくるとか。

 アルハを怒らせるとその視界に入るだけで息の根を止められるとか。


 だいたい間違っていないし、そういうことにしておいたほうがむしろ好都合なので、これらの噂に関して僕は否定しなかった。

 知らない人から無闇に怖がられるようになってしまったことは、メルノ達の安全の確保と比べたら些末なことだ。


 ただし、メルノはご不満な様子。


「アルハさんがあらぬ誤解をされています」

 よく知らない人が僕を恐怖の目で見て避けるのが、メルノにしてみれば心外極まりないらしい。

 気持ちを伝えて早十日。庶民の場合、夫婦は一対のピアスを一つずつ付けて周囲に知らせれば、それが婚姻届の代わりになるらしい。

 そのピアスのオーダーメイドをフィオナさんに頼んだら、フィオナさんは何故か狂喜乱舞しそうな勢いで瞬く間に手配してくれた。

 通常ひと月はかかるらしいのに、頼んでから一週間という超速で完成したと連絡が入った。

 フィオナさんにはいつもお礼をしているけど、今回は職人さんにも何か送っておこう。


 出来上がったピアスを受け取るために、メルノとふたりでツェラントの町へ来ている。

 約束の時間は昼過ぎで、まだ少し余裕がある。

 お気に入りの茶葉屋さんで買い物中、室内が暑くてついフードを脱いだら、僕らの周囲から人が減ったところだ。

「メルノ、ストゥリ味だって。買っていこうか」

 ストゥリはイチゴに似た果物で、メルノとマリノの好物だ。

「アルハさん、いいのですか?」

 フレーバーティーは匂いが好きでもお茶として味が好みじゃない場合がごくたまにある。お試し用に少量だけ包んでもらっていたら、メルノが僕の袖をくいと引いた。

「何が?」

 お茶の話をしている場合じゃない、という顔だったから、問い返した。

「避けられています」

「平気だよ」

 納得してない様子だ。

 お茶を買ってお店を出て、フィオナさんの屋敷へ行く道で、少し話すことにした。


「メルノは僕のこと嫌うことあるかな」

「ありませんっ」

 力強く即答してくれた。思わず顔がにやける。

「僕もメルノが嫌いになることは、この先もないよ」

「……はい」

「だから平気」

 僕が避けられると、一緒に歩くメルノも避けられる。そうやって巻き込んでしまったことは申し訳ない。

 でもね、僕はもう、メルノにさえ嫌われなければ、誰に嫌われても平気なんだ。




 ハイテンションのフィオナさんからピアスを受け取り、ヘラルドのお茶を頂きながら少し話をした。

 何なら泊まっていっては、そしてもっと話を、と大興奮するフィオナさんをヘラルドが抑えてくれているうちに、屋敷を辞した。




 帰宅して、僕の部屋でお互いにピアスを着け合う。

 相手の耳に穴をあけるのも、風習の一環だそうだ。

 僕の方は、メルノが思い切りよくやってくれたお陰で、殆ど痛みはなかった。

「痛む?」

「いいえ。……どうですか?」

 メルノにも上手く着けることができたようだ。

 僕は左耳、メルノは右耳に、藍色と黒の宝石をあしらったシンプルなピアスが煌めく。

「よく似合う」

 僕がメルノの耳に触れると、メルノはその手に自分の手を添えて、はにかんだ。

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