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ニコイチート~チート持ちとニコイチで異世界転生させられたので、手探りで冒険します~  作者: 桐山じゃろ
幕間2

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4-28-2 腑抜けたちの挽歌

▼▼▼




 世界最高峰の冒険者、アルハと非公式の会談を行ったリオハイル王は、アルハの客室を出て自室に戻り一人であることを確認すると、その場に崩れ落ちた。


「なにあれ、怖ぁ……」


 アルハの前や部屋の外ではなんとか体裁を取り繕えたが、一人になった途端、恐怖がこみ上げてきた。

 噂が本当かどうかを確かめるためだけに、トイサーチの名前を出した。

 怒らせたり、敵対するつもりはまったくなかった。

 王として、人を見る目には自信がある。憤怒とは無縁の、穏やかな男だとばかり思っていた。

 それが、城ごと崩壊させんばかりの威圧を発してきた。


 即位して十数年、いや生まれてこの方、誰かに対してこれほど恐れを抱いたことは初めてだった。


 それが、面白い。


 両手剣を片手で軽々と操り、国最強の騎士を圧倒する強さ。

 成した偉業や報酬に全く興味を示さない態度。

 一国の王すら跪かせる冒険者が、普段は人畜無害そうな庶民であること。


 立場さえなければ、友人づきあいがしたいと思わせる人柄も、王は甚く気に入ってしまった。


 確かに恐ろしかったが、それはこちらが不躾だったせいだ。

 当初はアルハを召し抱えるつもりで呼び出したが、それは不可能であることも十分に理解した。

 その上で、アルハともっと話をしたい、近づきたい。

 しかし、王という立場が、いち冒険者に表立って馴れ馴れしくすることを阻む。

 こういう時、どうすればいいのか、何が正解か、王には解らなかった。



 考えた結果、翌日から、リオハイル王は暇さえあれば滞在中のアルハをこっそりと付け回した。




◆◆◆




“王様って暇なの?”

「他の王のことをよく知るわけではないが、ここの王が少し異常だということは解る」


 王城の図書室の、更に奥の禁書庫で、ヴェイグと僕にだけ聞こえる声で言葉をかわす。

 禁書庫はあまり広くなく、今いるのは僕らだけだ。

 一つしか無い出入り口の扉の向こうに、この国の王様がいる。

 王様は、今朝からずっと僕らの後をつけてきてる。


“昨日のことで怒ってる、ってわけでもなさそうなんだよね”

「あれで怒るような王では王と呼べぬ」

 リオハイル王にトイサーチの名前を持ち出されて、一瞬我を忘れかけた。

 つい先日まで、メルノ達が僕のせいで嫌がらせにあっていたから、どうにも過敏になっている。

 それとは関係なく、ヴェイグは王族に手厳しい。

「不用意な発言をしたのはあやつの方だ。アルハが悪く思う筋合いはない」

 ヴェイグは本を読みながら、僕と会話してくれる。

“う、うん……。ん?”

 この城の図書室は、城の隅のほうにある。つまり、逃げ場が無い。

 そんな場所を、不穏な気配が取り囲み始めた。

“ヴェイグ”

「うむ」

 僕が合図すると、ヴェイグは自然な動作で本を閉じ、棚に戻した。

 そのまま、なるべくゆっくりと禁書庫から出る。

 王様は僕らに気づいて若干慌てながら図書室から出ようとして、不穏な気配とかち合った。


「お一人とは不用心ですね」

 不穏な気配の主は、騎士団員だ。僕との手合わせの時は文句ばっかり言うくせに腕はダメダメで、魔物討伐の任を嫌がってた人たちだ。十人ほどいる。

「何事だ」

「今すぐ騎士団解散の(めい)を取り消すか、この場で斬られるか、お選びください」


“随分と短絡的な連中だな。流石にリオハイル王が気の毒だ”

 確かに王様は腑抜けた騎士団に見切りをつけてたけど、原因は騎士団員たちで、その前に何度もチャンスを与えていた。

 頑張ってテコ入れしようとしてたのに、それに応えなかったのは騎士団員の、こういう奴らだ。


 王様は毅然とした態度で騎士団員を睨みつける。

 それだけで、騎士団員たちは若干怯んだ。

「お、臆することなどないっ!」

 一人が自分を叱咤するように声を上げて、王様に斬りかかった。王様はどこかに身に着けていた細身の剣でそれを受けようとしてる。

 多分放っておいても、一対一なら王様が負けることはない。でも相手は何人もいるし、王様の剣は殆ど飾りのようなもので、戦い向きじゃない。


 王様の前に飛び出して、振り下ろされる剣を素手で奪い取った。


「アルハ殿!?」

「なっ、お、お前は」

 王様を付け回しておいて王様の目的が何かを知らなかったのか、騎士団員たちは突然登場した僕に驚いている。

 さっきも、王様に睨まれただけで腰が引けていたし、本当にやる気あるのかな。

「どうしますか?」

 王様に、彼らの処遇をお伺いする。王様は細身の剣をマントの内側に仕舞い込んだ。

「その剣をこちらに貰えるかな」

 柄を向けて手渡すと、王様は僕の前に出て剣を騎士団員たちに向けて構えた。かなり様になっている。


「騎士が剣を持って主張を通そうというなら、一対一でかかってこい。受けて立とう」

“道理だな”

 ヴェイグが感心してる。


 王様は本気で騎士団員一人ずつと一戦交えるつもりだったに違いない。

 だけど、騒ぎ出してから時間が経ち過ぎた。

 騒ぎを聞きつけた他の人達が集まってきて、騎士団員たちは次々に逃げ出した。


「情けない……」

 剣を構えたままの王様のつぶやきが、切なかった。




 王様から直々に口止めされたので、この件について僕は見なかったことにした。

 僕もヴェイグも、王様に対して若干同情的になったのは仕方がないと思う。

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