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ニコイチート~チート持ちとニコイチで異世界転生させられたので、手探りで冒険します~  作者: 桐山じゃろ
第四章

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31 やるべきこと

 ヴェイグは強い。

 確かに僕のほうがステータスの数値は多いし、スキルがあるから単純な力や速さは僕が上回る。

 それを補って余りあるのが、ヴェイグの経験だ。

 僕は日本で生きていた二十年間、一度も魔物と戦ったことはない。魔物なんていなかったのだから当然だ。

 一方ヴェイグは、生まれてからずっと強くなるための教育を受けさせられ、城を出たあとも魔物を討伐する道を選んできた人だ。

 相手の動きの予測、勘、自分の身のこなし。こういうものは、ヴェイグにはかなわない。


 ヴェイグがはじめてスキルで創った刀の出来は、正直あまり良くない。難易度B以上の魔物を何体か斬ったら、駄目になりそうだ。

 二、三度振っただけの自分の刀の力量を、ヴェイグは正確に読み取ってた。

 斬る時は相手の身体の柔らかいところだけを狙い、突く時は筋肉や骨の隙間を狙っている。

 僕はいつも、刀が頑丈なのをいいことに、力任せにぶった斬ってる。

 反省しなくては。


 ヴェイグの戦いぶりに見惚れていたら、いつのまにか終わっていた。

「やはりアルハのようにはいかぬな」

 まだ握っていた刀を見る。刃こぼれどころか、今にも折れそうだ。

 そんな状態の刀で、難易度Aクラスの魔物を含めた十体を、余裕で討伐していた。

“すごいよ、ヴェイグ”

 僕は興奮状態だというのに、当のヴェイグは納得いかないという顔をする。

「時間を食ってしまった。後はアルハに任せる」

 なんてことを言って、交代を要求してきた。

「もっと見たかったのに」

“見どころなど無いだろう”

「あるよ」

 僕とヴェイグの戦い方の違いや、経験の差について話すと、ヴェイグは“そんなことか”とのたまった。

“勘も経験も、アルハの前では無意味だろう”

「そういうことじゃなくて。ヴェイグは僕にはできないことをしてたんだよ」

 自分の口下手がもどかしい。

 でも、これで察してくれるのがヴェイグだ。

“俺も、スキルの鍛錬を積みたいからな。また試させてくれ。但し、今はアルハがやったほうがいい”

「うん」




 夕方になり、調査中の冒険者達は町へ戻り始めたり、その場で野営を準備しはじめた。

「貴方が一番遠くまで行っていたはずなのに、何故一番最初に戻ってこられるのですか」

 リオハイル城下町の冒険者ギルドで、僕の担当みたいになっている受付さんが、驚きとも呆れともつかない声を上げた。

「足の速さには自信があるんです」

 今更強さをごまかしても、あまり意味がない。それ以上に説明し辛いので、適当に言うことにしている。

伝説(レジェンド)ですものね」

 どれだけ適当なことを言っても、最近は伝説(レジェンド)の一言で納得されてしまう。少々複雑な気分だ。

「魔物の討伐場所についての法則性は見いだせませんでした。強さの方は、難易度の上昇が一つか二つ、の範囲に収まっているようです」

 受付さんは僕の冒険者カードを見て、情報を整理してくれた。他の冒険者の情報も、戻り次第まとめてくれる。

 受付さんの言う通り、体感でも強くなった魔物が発生している場所の法則性はわからなかった。

 ランダムに強くなっているということは、他の場所でも同様のことが起きてる可能性が高い。

「他のギルドからの情報は」

「残念ながら、似たようなものでした」

 思わず頭を抱える。

「どうしようか」

 ヴェイグにだけ聞こえる声で、相談開始だ。

“いくらアルハでも、全てを一人でやることはできぬ。それに、背負い込むことでもない”

「でも、魔物が強くなってて」

“普通の冒険者でも、難易度A程度なら倒せる。アルハのように、一人で一刀両断というわけにはいかぬが”

 そうだった。熟練者(エキスパート)から指導者(リーダー)になるための条件は、難易度Aを百体討伐することだ。

 トイサーチは平穏な場所だから、難易度C以上のクエストは数ヶ月に一度くらいしか出ない。でも、トイサーチから馬で十日のここリオハイルでは、常に難易度Aのクエストが出ている。そのくらい、身近だ。

 

“俺達にやるべきことがあるとしたら、原因の追求とその根絶か”

「わかった」

 ヴェイグに即答し、伏せていた顔を上げる。

 受付さんには、明日から別の場所を見てきます、とだけ伝えた。




“言っておいて何だが、原因に手がかりはあるのか?”

「ない」

 ヴェイグに肩透かしを食らわせてしまった。

「同じように、原因わからなかった場所があったよね」

 あの時は何故か聞きそびれてしまった。聞いても、教えてくれなかっただろうという確信すらある。

 今回は、絶対に聞き出す。

“なるほど”

 僕がどこへ行きたいのか、ヴェイグはすぐに分かってくれた。

 もう夜だけど、彼女には関係ないだろう。

 ヴェイグの転移魔法で、目的地へ着いた。




▼▼▼




「重たくはないですか」

「平気よ。そこまで(なま)ってないわ」

 ジュノ城の一室で、姫君が軽鎧を身に着けていた。

 姫君はもちろん、オーカである。

 ジュノ国周辺の魔物が異常に強くなったとの報告を受け、冒険者を復帰することにした。

 まだ修行不足だ、などと言っている場合ではない。

 既に、ジュノ国城下町ジュリアーノを拠点にしている冒険者たちは魔物討伐のクエストを受けて、今も戦っている。

 その中に、エリオス、ライド、リースも含まれている。

「本当に、アルハ殿には連絡しなくても良いのですか」

 不安な表情を浮かべるのは、執事であり実父であるセネルだ。普段、オーカに接する時は姫と執事、という関係を頑なに守るセネルだが、今は父親の顔が見え隠れしている。

「アルハに頼るほどのことじゃないわ。今までが頼りすぎだったのよ」

 全て任せてしまえば、ことは簡単に済む。

 だが、自分の身の回りくらい、自分で守れなくて、何が王族で、何が冒険者か。


 身につけた装備を一つ一つ丁寧に最終確認すると、オーカはセネルに「いってきます」とだけ言い、部屋を後にした。




 エリオスたちと合流し、今探しているのは、難易度Aとして出されていたクエストの討伐対象である。

 本来熟練者(エキスパート)が請けられるクエストではない。

 エリオスの実力を知ったハインが、少なくとも指導者(リーダー)相当であるとギルドに進言したため、エリオスが請けられることになった。

 目撃情報のあった場所までは、冒険者の足でも丸一日かかる。

 この日は早々に野営をし、翌日から本格的に探索するつもりであった。


 焚き火の前で見張りについていたライドが、ふいに胸騒ぎを覚えて周囲を見渡す。

 まずエリオス、それからリースとオーカをそっと起こし、武器を構えさせた。

「一体、なに……」

 リースがまだ眠いと恨みがましくライドに話しかけ、上を見上げて固まった。

「なんで……」



 先程まで、夜闇が覆っていたはずの空が、茜色になりつつあった。

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