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ニコイチート~チート持ちとニコイチで異世界転生させられたので、手探りで冒険します~  作者: 桐山じゃろ
第四章

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28 巡ったもの

 朝食が終わった後、ネシタさんがやってきた。

 騎士団の解体が決まったことと、僕に新設する討伐団の指導を頼みたいということを聞かされた。

 元々そういう依頼だったもんね。

「冒険者にするような指導でよければ」

「勿論、そのつもりです。引き受けてくださるのなら、三日後からお願いしたく」


 というわけで、三日間、時間ができた。トイサーチに帰っても良かったけど、ヴェイグの要望で書架の本を見たいと申し出てみた。

 どうも本というのは、一般人が持てるものと、王城や一部の学者さんが持てるもので違うらしい。更に、国の書架ともなると、ここに一冊しか無い、なんてことがざらにある。

 ディセルブのスキルの本みたいに秘匿されているわけでもないのに、そこにしかないから結局限られた人しか読まない、というパターンが多々ある。


 ネシタさんは気軽に閲覧許可を出してくれた。禁書庫も、持ち出さなければ自由に見ていいという、大盤振る舞いだ。

 早速案内してもらった。


 ヴェイグと交代して、本を見てもらう。

「ここに目新しいものはないな。禁書庫へ行く」

 ヴェイグは本を読むのが早い。速読術に近いんじゃないかな。僕が娯楽小説を1冊読んでいる間に、分厚い研究書を3冊は読み切ってたりする。調べ物のために本を読むときは、ヴェイグに任せたほうが手っ取り早い。一方僕は脳筋化してる自覚がある。大事なことはヴェイグが逐一教えてくれるから、甘えている。本当に申し訳ない。

 図書室の司書さんに声をかけると、既に話が通っていてすんなり通された。再び、持ち出し禁止のことだけ言われて、後はご自由に、という感じだった。ゆるくて助かる。

 ヴェイグはすぐに本を何冊か手に取り、書見台の前に立った。早速ぱらぱらと頁を捲る。それで、ヴェイグは内容を全て把握できているようだ。僕は読むのが追いつかない。

 三冊目の途中で動きが止まり、じっくりと読みだした。

 しばらく待っていると、ヴェイグがこちらに意識を向けた。話があるときの合図だ。


「昔いた英雄(ヒーロー)の伝記だ。俺の、恩人だ」

“無限倉庫に預かっている、大剣の持ち主の?”

「そうだ。不思議だな、今までどうしてか思い出さなかった」

 開いてある頁を見ると、そこには『数多の魔物を討伐』『最高の魔法使い』『最も伝説(レジェンド)に近いと言われた男』等、彼の功績が書いてあった。

「あの男も、黒髪に黒目だった。コイク大陸の出身と思い込んでいた」

“なんて名前?”

「それが、頑なに本名を教えてくれなくてな。宿帳への記載はジーツやミッシェル、リーヴといくつも偽名を使っていた。この本にはリーヴとあるし、俺は『師匠と呼べ』と言われて、その通りにしていた」

 本名を名乗らないなんて、変わった人だ。何か理由があったんだろうか。


 ヴェイグは伝記を全て読むと、一度部屋に戻りたいと言い出した。

 交代して客室に向かっていると、スタリーに会った。

「書庫にいると聞いて伺おうかと。今、お時間ありますでしょうか」

 僕を探していたらしい。一緒に客室に入ると、スタリーは座るなりテーブルの向こうから身を乗り出した。

「オークを退(しりぞ)けた時の不思議な剣は、魔法ですか?」

 しまった。あの時、異常なオークに気を取られて普通にスキル使ってた。

「ええと……スキル、はご存知ですか」

 一か八かで訊いてみる。


「はい。昔、リオハルト国が召し抱えていた英雄(ヒーロー)が使っていたという話を聞いたことがあります」


 トイサーチの近くに、スキルの話があったんだ。

“アルハ”

 ヴェイグが思わず、といった風に声を上げる。詳しく聞きたいのは僕も同じだ。



「話の前に、今一度見せてくださいませんか」

 望まれたので、左手を真横に出して、刀を創って握る。透明じゃなく、白い刀だ。ちゃんと力の調節をすれば、普通に見えるように創れる。でもスタリーが怪訝そうな顔になったので、透明な方も創ってみせた。

 すると、しばらく質問攻めにされた。自分も持てるかというので持たせてみたり、透明になるのは何故かとか、他に創れる武器はないか等など。

 そこそこに答えたところで、スタリーは昔のスキル使いについて話してくれた。

「禁書庫に伝記が……既に読まれましたか」

「書いてある以外のことで、何かご存知のことは」

「私が伝え聞いている限りでは、家名があったと」

「家名、ということは本名もご存知ですか」

「ええ。彼は自分の本名を嫌っていたので、伝記も偽名で書いてありますね。本名は確か……ミツハ・ヒグレガワ、と言ったかと。変わった家名ですよね」



 僕が絶句してしまったので、ヴェイグが交代して僕のふりに挑戦した。

 その後の会話は全く耳に入ってこなかった。




 ヴェイグは無事僕のふりを完遂し、スタリーにはバレずに済んだらしい。

「それで、ミツハはアルハの何だ?」

“高祖父の名前と同じ。だけど、異世界の話なんて、これっぽっちも”

 親戚付き合いを絶っていたから、祖父母の顔すら知らない。遺産相続でゴタゴタしている時、何かの拍子で仰々しい家系図を見る羽目になり、そこに書いてあった『実葉(みつは)』の文字を、僕と一文字同じだな、という程度で覚えていた。

 日暮川は珍しい名字だから、その人で間違いないと見ていいかな。

「俺はミツハとしばらく旅をしていたのだが、ある日例の大剣と手紙を宿の部屋に置いて、俺の前から消えた」

 手紙には、『ヴェイグになら使えるだろうから餞別に置いていく。達者で』とだけあった。

「伝記とスタリーの話を纏めると、ミツハは俺と旅する前からリオハイル専属の冒険者をしていて、旅の間はその任から逃れていた。リオハイルに見つかり、俺に迷惑がかかると踏んで、行方をくらました。一旦はリオハイルに戻ったが、再び行方不明になり、それきりだ」

 スタリーの家は、代々騎士として城に仕え、魔物相手の臨時騎士として冒険者を雇う時はその面倒をみていた。だから、稀代の冒険者であったミツハについて伝わっていて、詳しかったんだ。


「大丈夫か、アルハ」

 ヴェイグが心配そうな声になる。

“うん。ちょっとびっくりしただけ。そっか、ヴェイグは僕のひいひいじいさんとも旅したのか”

「そうなる。不思議な縁だな」

“ミツハって、僕と似てる?”

「共通点は黒髪黒目だけだ。常に気だるそうな空気を纏った、厭世家だった。面倒見は良かったが、それを指摘すると嫌がられた。顔は、アルハと違ってのっぺりしていた」

 異世界に転移か転生したのが、嫌だったのかな。僕は満喫してるから、たしかに真逆だ。あとのっぺりって。和風顔は僕もそうなんだけど。

「スキルを使っていたかどうかは、気付かなかった。ああ、一つだけ似ているところがあるな」

“何?”


「怒ると怖かった」

 先祖の血だったのか。

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