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ニコイチート~チート持ちとニコイチで異世界転生させられたので、手探りで冒険します~  作者: 桐山じゃろ
第三章

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40 中間考査

 僕が思わず顔を伏せると、カリンが慌てた。

「あ、責めてるんじゃないの。だって2人にとっては理不尽じゃない?」

 ヴェイグは望まない甦りを強いられた。僕は……。

「確かに理不尽だけど、今こうして生きていられるのは有り難いよ」

 転生する直前の生活は、楽しかったとは言えない。毎日眠くて、疲れが抜けなくて、忙しかった。

 乗り越えたら待っていたはずの生活まで消えてしまったのは悔しい。

 だから、今の生は、有るはずのなかったチャンスを与えられている、幸運な状態だと考えている。

“他の誰かの身体と魂であったら理不尽を感じたかもしれんが、俺も現状に不満はない”

 揃って答えると、カリンは困ったような顔になった。

「当事者たちにそう言われるとねー。ま、とにかく話をきいてくれる?」

 勿論、と頷く。


「そもそもさ、動物が魔物化するのって、何故だと思う?」

「瘴気に当てられて、じゃないの?」

「んー、50点。竜が魔物になったの見たでしょ」

「あれは……」

 そういえば、ラクが『人も心が壊れると、魔物のようになるのじゃな』と言っていた。

「心が壊れたから」

「正解ー。チオ君は、妹を傷つけられ、人界に片道切符で無理矢理送り込まれたから、でしたー」

 明るい声を張り上げているのに、カリンの顔は真面目そのものだ。


「では次の問題。人間は、魔物化するかどうか」

“する”

「正解ー」

「そん……人も動物だもんね。例外はないのか」

「うんうん。優秀な生徒ばかりで先生うれしい」

 カリンはスーツ姿になっていて、僕は高校の時のブレザーを着て学校の机に座っていた。カリンの背後にはホワイトボードがある。

 もう一々突っ込まないぞ。ヴェイグも黙っていることにしたようだ。


「最後の問題。人が魔物化したら、どういう姿になる?」

「あっ」

 僕が勝手に魔族と呼んでいる、あの謎の魔物。

あれ(・・)が、そうか”

「それもねー、50点なの。ヒントは、人の想像力」

“わからんな”

「わからない」

「更にヒント。その姿になった上で人に戻れたのは、過去に2人しかいないの」

「やっぱり何のことだか」

“まさかな”

「ヴェイグ、正解よ。アルハに教えてあげて」

 ヴェイグは一瞬詰まり、次に思い切ったように言葉を紡いだ。


“アルハが魔物と化したら、竜になるのではないか”


「正解。アルハ、大丈夫よ」

 僕の顔色を見て、カリンが付け加えた。

「えっと、とにかく大丈夫だから。大丈夫」

 不安を煽るのやめてください。

“カリン、具体的に言え”

 ヴェイグが怒ってくれた。

「ごめんごめん。でもねぇー、本当に、アルハだから大丈夫、なのよねー」

 僕だって普通の人間だ。僕が大丈夫なら、他の人も平気なはずだ。

「例えばヴェイグだったら?」

「うーん、アルハがいるからセーフ、かなぁ」

「それは、どういう……」

 カリンは柔らかい笑みを浮かべて、僕らを見つめた。


「もう少し旅をすればわかるよ」


 ぱん、と両手を叩く音がしたかと思うと、異界に立っていた。

 装備も元通りだ。


「おっと、プレゼントを忘れてた」

 異界のなにもない空間に、カリンの上半身がにゅっと生えた。

「わっ!?」

“!?”

「うふふふ、びっくりしたか。そーかそーか。……ごめんってば。ちょっとこっち来て。頭下げて」

 驚いたり睨んだり謝られたりと忙しい。カリンの手招きどおりに頭をカリンの手に近づけた。

 額のあたりに手をあてられ、何かがふわりと通り抜けた。

「いまのは?」

「プレゼント。あとね、旅の行く先なら、マデュアハンがお勧め。そこならいくら滞在しても、呪術の影響を気にしなくてもいいし、解決策も見つかるかもよ」

“マデュアハン?”

「ヴェイグも知らないの?」

「そうね。第七の大陸だから、知ってる人はいないよ。でも2人なら行けるでしょ」

 この世界の大陸は六つだと教わっていた。

“しかし、存在できる座標など……”

「隈なく探せば、みつかるはずよ。……今の私に伝えられるのは、ここまで。じゃあ、またねー」

 それだけ言って、カリンの上半身はフッと消えた。




“嵐のようなやつだな”

 カリンの気配がどこにもないと分かると、ヴェイグが溜息をついた。

「でも旅のヒントはくれたよ」

“第七の大陸、マデュアハンと言っていたな。全く心当たりがない。替わってくれ、座標魔法を使う”

 交代すると、ヴェイグは早速座標魔法を展開した。

 僕には全く使えない魔法だから、座標が分かるってのがどういう感覚なのか、よくわからない。

 ヴェイグが言うには、頭の中に数字が浮かび、熟練するとそれが地図のように表示されるそうだ。

 かなり長い時間、魔法を展開し続けていた。魔力はあまり使わないらしいけど、ヴェイグは目に見えて疲弊している。

「俺の持つ知識だけでは分からぬな」

 ヴェイグは魔法の発動を止めて、中に引っ込んだ。

“俺の頭にある地図は、かなり穴がある。埋めるには正確な地図を見るか、実際にその場へ行くか、だ”

「まずは地図を見る方から?」

“そうだな。ジュノ国でオーカに地図を見せてもらえぬか、頼んでくれるか”

「わかった」

 町や国へ行けば、周辺の簡易的な地図はすぐに手に入る。ギルドの掲示板に貼ってあったりもする。

 もっと詳しい地図は、政治や戦略に使うからと、一般にはあまり広まっていない。

「僕みたいな冒険者が見たいって言って、見せてくれるかな」

 今こそ伝説(レジェンド)のランクを有効活用すべきなんだろうけど、それが逆効果になるかもしれない。

 強いからこそ、教えたら大変なことになるとか、思われないだろうか。

“駄目なら実際に見に行くだけだ”

「それもそうか」


 通信石で連絡を取ると、オーカは久しぶりだと大喜びしてくれた。用件を伝えたら、すぐに用意する、と快諾してくれた。

 早速、ヴェイグの転移魔法でいつもの客室に飛べば、オーカとセネルさんが出迎えてくれた。

 挨拶もそこそこに、早速地図を見せてもらう。

「詳細地図はこの大陸だけよ。世界地図も、完璧とは言い難いわ」

「どう? ヴェイグ」

“十分だ”

 流石にマデュアハンの特定まではできなかったけど、候補地を絞り込むことはできた。

「でも、どうして急に世界地図なんて見たがったの?」

 オーカに事情を軽く説明すると、オーカが悲しそうな顔になった。セネルさんも眉間に皺を寄せて、厳しい表情だ。

「アルハは本当に苦労する人ね。何度でも言うけど、私達にできることがあったら、何でも言って頂戴」

 苦労、苦労かぁ。

 生きてる以上、(まま)ならないことはいくらでもある。

 それを苦労っていうのはちょっと違う気がする。

 でも、心配してくれる人の申し出を断るのは良くないよね。

「ありがとう。その時はお願いするよ」




「というわけで、しばらく帰れない」

 次の通信先はメルノだ。呪術を撒いてしまうと分かった以上、気軽にトイサーチへ帰るわけにはいかない。

「わかり、ました」

 メルノは、自分自身を無理矢理納得させるような返事をくれた。


「ずっとお待ちしてますから」

 はっきりと告げたメルノの決意に、僕も応えなきゃいけない。


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