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ニコイチート~チート持ちとニコイチで異世界転生させられたので、手探りで冒険します~  作者: 桐山じゃろ
第三章

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20 反省、前進

▼▼▼




 イオが目を覚ますと、気配を察知したアルハがやってきた。

 ヴェイグではなく、アルハだ。昨夜まで憔悴しておったのに、気丈なことだ。

 イオについては、話してある。

 チオの妹にあたる。

 チオにない能力はイオが、イオにない能力はチオが持っており、お互いを補い合う、仲の良い兄妹であった。

 ヴェイグにそのことを話した時、アルハが顔を上げ、儂をじっと見た。

 謝りたいと。

 その必要はないし、イオも気にせぬだろうと言うたが、今アルハはイオの前に膝をついて頭を垂れている。

 中のヴェイグは身体を乗っ取るのを諦め、黙ってことの成り行きを見ている。


「僕が、チオを殺した。僕にできることなら何でもする。好きなようにしてほしい」


 目を合わせるのも辛かろうに、アルハはすべての言葉をはっきりとイオに届けた。

 ヴェイグが“イオに俺の声は聞こえるか”と尋ねてくるので、頷いた。

“俺も共犯だ。アルハだけの責ではない”

「ヴェイグっ」

 二人のやり取りを、イオは驚きに満ちた顔で眺め、わずかに微笑んだ。そして人の姿になると、2人に頭を下げた。

「兄がどのように死んだのか、全て知っております。お二人には、感謝を」


「なんで……」

 アルハが信じられぬようなものをみる顔をしているが、竜にとっては道理で、何ら不思議はない。


「言うたであろう。魔物化した竜を救う方法は殺すしか無いと。儂には、自ら手を下す覚悟がなく、アルハにはあった」

 何度も言い聞かせてきたことを、繰り返す。

「竜の魂は(めぐ)ります。魔物と化した竜は、誰かを殺める前に命を絶たねば、それは叶いません」

 アルハが「本当に?」と儂を見る。頷いてやった。

「ですが、お願いを聞いてくださるなら、ひとつ」

 イオは未だ膝をついたままのアルハの側に寄ると、両手でアルハの頬を包み、顔を上げさせた。


「ご自分を、責めないでください」




◆◆◆




「こんなもんかな」

 手にした服を軽く、ぱん、と伸ばす。

 アマドに貫かれて穴の空いた服を繕い終わったところだ。

 裁縫の基礎や、冒険で破損した服の繕い方を教えてくれたのはメルノだ。コートやジャケットの類は、破損が軽微なら、こうして自分で繕って使っている。


 この穴を開けられた時、僕は自分でやらないと決めていた、痛覚の遮断をしていた。

 他にも、敵を苦しめる方法を選択したり、そうした上で脅したり。

 できるからって、やっちゃいけないこととしていたのに、自分であっさりと破ってしまった。


「まだまだ、だなぁ」

“丁寧にできているではないか”

 繕った服を持ったままだった。

「裁縫の話じゃないよ。こっちもメルノに比べたら、まだまだだけどさ」

“メルノの裁縫は奇跡の技だ。あの域に到達するには並々ならぬ研鑽が必要だろう”

 メルノに穴の空いた服を渡すと、継ぎ目が全くわからないレベルで補修してくれる。工程を見せてもらったら、信じられない緻密さと速さだった。


“区切りはつけたか?”

 一晩たっぷり悩み、考えに考えて、結論を出した。だからこうして、表に出ている。

「うん。あの時の自分を絶対許さないことにしたよ」

 許さないからって何をするわけでもない。反省を活かして今後に、という話でもない。

 あんなことをした、許せない自分を抱え続けると決めた。

“随分と自分に厳しいな。頃合いを見て許してやってくれ”

 ヴェイグは僕が出した答えに反対しなかった。僕ならそうする、と分かっていたみたいだ。

 許せる日は、来るのかな。


「イオの言ってた、竜の魂は廻るっての、嘘だよね」

 ラクは僕を納得させるために頷いたようにしか見えなかった。

“俺達が、それを否定するのか?”

「僕らのは何か違わない?」

 異世界転生とか転移とかした結果が今の僕らの状態だ。魂があちこち行くのは否定できない。

“そうだな。しかし、イオが輪廻を信じているのなら、そのままにしておくべきではないか”

 イオも本当に信じているのか微妙なところなのに。

 皆、優しい。



 僕らとラクは竜の里を出てメデュハンへ戻った。

 イオがついてきたそうにこちらを見ていたのを、ラクが説得して残ってもらった。

「どうしてついて来たがったんだろう」

「ロムらと同じ理由じゃよ。アマドはこのあたりで一番強い竜だったからの。アルハに惚れたのだろうよ」

「!?」

「懸想の意味ではないぞ。人とつがいには成れぬからのう」

 ラクがハハハと笑う。

 ちなみにロムたち5竜は人の姿になれないので、全員自己判断で里に残ることを選択してくれた。

「修行を積んでおきますから、いつかお供させてくださいっ」

 頑張ってください、としか言えませんでした。


 まずはメデュハンの冒険者ギルドで、統括のジビルに声をかけた。

 僕が最初に尋ねた話を別の町のギルドに通達してもらい、何かあったら教えてほしいと通信石を置いてきた。

 ジビルは快く引き受けてくれた上に、早速その場で受付さんたちが各地へ連絡を試みてくれた。

 情報が集まりきるまで数週間かかると言われたけど、十分すぎる。改めてお礼を言うと、ジビルは少し困ったような顔をした。

「アルハ殿が必要としていることなら、我らが必要としていることと同義です。通信石も、本来こちらが用意すべきもの。他にもなにかあったら、遠慮なく仰ってください」

 どうやら僕が遠慮すると、逆に恐縮されてしまうようだ。とはいえ、踏み込み方の加減がわからない。


 ハインとともにギルドハウスを出た。食事がてら、話があるそうだ。

「もっと伝説(レジェンド)の称号を有効活用したらいいじゃないか」

「有効活用?」

英雄(ヒーロー)の俺ですら、ギルドでは特別待遇を受けている。宿泊施設全無料、とまではいかないが、優先的に良い部屋を使わせてもらっているしな。さっきの話もそうだ。もっと命令しても皆、気を悪くしたりしないぞ。数週間といわず、3日で集めろ、とかな」

「あんまりギルドに貢献できないし、そこまでするのは……」

「これまで散々貢献してきただろうに」

 ギルドか。恩倍返しシステムの根源はギルドなのか?

「アルハは前に『恩を倍にして返される』なんて言っていたがな」

 言ったっけ!? ハイン本当に僕の心読めるんじゃ。

「俺はアルハが消極的すぎると思うぞ。もっと堂々と貰っておけよ。伝説(レジェンド)が遠慮していたら、下のランクの俺達の肩身が狭い」

 そう言われてしまうと申し訳ない。

 しかし、それならばと開き直った。


 食事が済んだ後、再びギルドハウスへ戻り、ハインを4時間ほど拘束して、英雄(ヒーロー)以上の冒険者の心得を根掘り葉掘り聞きまくった。


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