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ニコイチート~チート持ちとニコイチで異世界転生させられたので、手探りで冒険します~  作者: 桐山じゃろ
第三章

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11 赤と焦げ茶と黒と白

 ラクに突き飛ばされた。すぐに体勢を立て直すと、さっきまでいた場所に岩塊が激突した。

 岩塊は魔法か何か仕込んであったのか、盛大に弾け飛んだ。

 更に追加で次々に降ってきては、爆発している。地面に大きな穴が開き、無数の破片は周囲の木を薙ぎ倒していく。

 こんなのが町に降ってきたらと思うと、ぞっとする。

 僕と逆側に避けていたラクの周囲に、スキルで盾を創る。

「心配無用じゃ……どこへ!?」

 その間に僕は、岩塊を飛ばした相手のもとへ向かった。



 気配をたどると、焦げ茶色で、象より大きなサイズの竜がいた。

 ラクに比べたらだいぶ小さな竜だ。それでも、気配の強さはラクと同じか、それ以上。

「サイズは強さと関係ないのかな」

“身体の大きさくらい、変えられるのではないか”

 焦げ茶竜は僕に気づくと、すぐに殺意を向けてきた。

“……っ! 竜の威圧は凄まじいな”

 竜の目の前に立つだけで、普通は身がすくむほどの威圧を感じるみたいだ。ラクで一度体験しているヴェイグですら、影響が出てしまっている。

「感覚遮断しようか」

“いや。俺も慣れたい”

 僕のは慣れじゃなく、本当に平気なだけだ。慣れたりするものなのかな。

 ヴェイグも言い出したら聞かない程度には頑固だから、言われたとおりにする。

 竜は先程の岩塊を僕のすぐ真上に発生させた。落ちてくるそれを、スキル[反射]で跳ね返した。

 [重力形成]があるなら逆はどうかな、って試してたら発現したスキルだ。

 落ちてくるのとは逆向きのベクトルを持った岩塊は、空中で爆発した。

 破片の雨が届く前に地を蹴って竜の懐へ入り込み、長い首の真ん中あたりへスキルで創った刀を突きつける。

「攻撃をやめるなら、僕もこれ以上何もしない」

 ダメ元でそう言ってみる。竜はニヤリと口角を上げ、刀を掴み、あらぬ方向へ折り曲げた。

「おっ?」

 スキルで創った刀を力ずくで壊されたのは初めてかもしれない。

 竜は僕が声を上げたのを、動揺したと認識したらしい。さらに刀を押しのけようとする。

 刀は1ミリも動かない。焦げ茶竜はラクより力はある。けど、それだけだ。


「アルハっ!」

 ラクが追いついた。刀一本を押し返そうと必死になる焦げ茶竜を見て、何故かため息を漏らした。

「チオよ。お主でもそこの人間には敵わぬよ」

 ラクの声が聞こえたのかどうか。チオと呼ばれた竜は、声を無視して刀と格闘している。

「ラクの知り合い?」

 チオに対する警戒を緩めないまま、ラクに訊いてみる。

「儂と喧嘩した者の一竜(ひとり)じゃ」

「そっか」

 刀を消した。急に力の拠り所を失ってよろめくチオに、新しい刀を改めて突きつける。


「お前は仲間を傷つけるような奴か」


 ラクは、喧嘩の相手がどういう奴だったか、明言しなかった。それでもここ数日付き合う内に、鈍い僕でも色々と察することができた。

 最初に出会った時、ラクの傷は背中に多かった。今も、僕の前に立つのをそれとなく避ける。

 僕とヴェイグのやりとりを、羨ましそうに見つめているのも知っている。

 つまり相手は、背中を預けられるほどの仲間か、信頼できる竜。

 そうなった理由はわからないけど、ラクが裏切りに遭ったことは想像に難くない。


 僕が本気で刀を突きつけているのを理解したのか、チオはカタカタと震えだした。

 ラクも僕の背後で息を呑み、様子をうかがっている。

“アルハ、今はその竜よりアルハの威圧のほうが怖い”

 しばらくそのままチオを睨んでいたら、ヴェイグにそんなことを言われてしまった。

 目の前にいるのが、仲間を裏切って傷つけるような奴だと思ってるからか、昂ぶっていたらしい。

 ラクが、ヴェイグの声で我に返ったように硬直から脱した。

「アルハ、お主の想像は概ね間違っておらぬが、一旦剣をおさめてくれぬか。話をしたい」

 ラクにまで言われたので、大人しく刀を引いた。

 チオは崩れ落ちるように脱力して、その場にへなりと座り込んだ。



「一度、竜の姿で遠くへ飛び立ってくれない? できたらこう、大きく鳴きながら」

 話の前に、まずは町に向けたパフォーマンスをすることにした。

 あの町が竜の闊歩に怯えるのは、竜がこの地から立ち去ったという確たる証拠がないからだ。

 ラクが元々山に棲んでいた竜で、今は人の姿になって町の服屋で買い物したり冒険者ギルドで登録してるなんて、普通の人は信じないだろう。

 死体にするわけにもいかないから、逃げたように振る舞ってもらうことにする。

 急におとなしくなったチオは僕の頼みを聞くや首を縦に振り、ラクと同じくらいの大きさになって空へ飛び去った。リクエスト通りに「ぎゅおおおおおん」と大きな声で鳴いている。あれなら町からでもわかるだろう。

「あのまま、逃げるとは考えぬのか?」

「気配は覚えたから、大丈夫」

 人の気配は覚えても離れてしまえば察知できない。でも竜は気配が大きすぎるからか、どこにいてもわかる。

“アルハの前から逃げおおせられるとは考えられまい”

「それもそうじゃな」

「二人して僕を何だと思ってるの」

 ヴェイグは中にいても会話ができるラクと意気投合したようで、最近仲がいい。口調の雰囲気も似てるし、通じるものがあるのかな。

「では、儂が町に戻って皆に事の次第を伝えよう。アルハ達はあれの相手をしてくれるか。お主らのことは、ついでに近場の偵察をしていることにしておく」

 ラクは冒険者でハインとも親しいから、話は信じてもらえるだろう。

「じゃあ頼むよ」

 ラクを町に送り出し、僕はチオが飛んでいった方へ向かった。



 チオは町からみて山の裏手の麓で待っていた。最初に見た象のサイズになっている。

 僕を見るなり、ずずず、と後退りしてからその場で正座した。その手足でよく正座できるなぁ。

「ええと、どこから話してもらおうかな」

 僕が話し始めようとすると、チオがそのまま両手をついて頭を下げた。

「もうラクには近づかないので許して……」

 最初に襲いかかってきたときの唸り声からは想像もつかないほど、か細い声だ。

 竜の土下座って、また難易度の高い姿勢を……って、何か誤解されているような。

「許すかどうかはラクが決めることだよ。それより話を」

「も、もう、本当に、許して、許して、住処に帰してえええ……」



 結局、ラクが報告を終えて僕と合流するまでの丸1日、チオとはほとんど会話できなかった。

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