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初めてのPK

日間(VR)44位に入ってました!

モチベ上昇感謝します。。

 

 葵は深呼吸する。


 現実でもこういうことはよくある。そんな時は、いつも自力で何とかしてきた。


「すみません.........何かご用でしょうか?」


 葵がそう尋ねると、3人の男は顔を見合わせ声を上げて笑う。


「ご用だってよ! こいつ絶対リアルも女だろ!」


「マジかよ! 女プレイヤーに出会うとか俺らマジでついてんな!」


 こいつらぶち回してやろうか? と葵は物騒な考えに至るも、首を振る。


 まだこの人たちが悪い人たちだと決まったわけじゃない!


「ああ。俺たちはお前に用があるんだ」


「そうそう」


 ほら! 危うく一時の感情で酷いことをするところだった。私は完璧美少女 柏崎 葵。そんなことをしてはいけない。


「実はさ! 実験台になって欲しんだよ!」


「実験台.........?」


「そうそう。実はこいつ【シーフ】の上位職【ローグ】なんだよ」


 男の一人が真ん中に立つ男をチラリと見てそう言った。


「それで【ローグ】取得時に発生する隠しスキル【強奪(ドロップスティール)】を手に入れたんだけどよ、これがさモンスターを倒すことで得られるドロップアイテムが増えるっていうクソスキルだと思ってたわけ。だけど、な?」


「そう。このスキルはモンスターだけじゃなく、PKした時にも発動するんだ。何故かは知らんけどな」


 真ん中の男がそう自慢げに語る。


 ここまで話せば、葵にはこの男たちが何をしたいのか理解出来た。


【PK:プレイヤーキルのこと。ポータルのあるエリアでは行えない。また、PKによって経験値やドロップアイテムは発生しない】


 そうヘルプには書いてあるのだ。


 でも、この男たちがこうも自信ありげに語っているということは、既に誰かで試したのだろう。最悪のバグである。運営よ、何をしている。


 葵は【潜伏】の使用を図る。しかし、当然発動しない。目の前の相手に見られているからである。


 【沈黙の一刀(サイレンスブロー)】も今は使えない.........潜伏もダメ.........あれ? 私って詰んでる?


 葵は脇目も振らず、村の方へ走り出した。


 ポータルのある村へ帰ればPKはできない。


 AGIに振ったから逃げきれないことはない。


 そう考えた葵だったが、気付けばすぐ後ろまで赤い炎が迫ってきていた。


 あっ.........魔法か。


 葵がそう考えた時には魔法に飲み込まれていた。


 でもっ! 霊人種(ゴースト)にATK(物理攻撃)は効かない! RES(魔法防御)にステータスを割り振ったし、HPも十分に割り振っている。


 一撃じゃ倒れない.........はず。


「あれ?」


 葵がHPを見ると、炎の中でジワジワと減少していた。


 これって継続ダメージ? あ、さすがにまずっ――


 葵のBIO生活、2度目のデスはPK(プレイヤーキル)によるものだった。


 ◇◆◇


「はっ!」


 見覚えのある光景。葵はポータルのある村に復活(リスポーン)した。


 葵の頭の中で嫌な予感が巡る。


 恐る恐る葵は、持ち物を確認する。


【持ち物なし。所持金0】


 あっ.........


 葵はそっとログアウトした。


 現実に戻ってきた葵はヘルメット型の機械を外し、机の上に移動させた。


「なんでっ! なんで、こんなのっ!」


 葵はベッドに拳を振り下ろした。響くのはポスッと羽毛の反発する音。


「私の武器を返してっ! お金を返してっ!」


 葵は悔しそうに唇を噛みしめる。


「なんで私がっ?」


 大の負けず嫌いの葵にとって、武器やお金を盗られたということよりも、見下された上に為す術なくやられたということの方がショックだった。


 葵は考えた。


 もうゲームはやめるべきか? リセットして1からやり直すべきか?


 違う。そんなのは完璧美少女 柏崎 葵のすることではない。


「そうだ........殺ろう」


 この日、ゲーム2日目にして柏崎 葵はMMOの禁忌、PKを決意した。


 ◆◇◆


 葵は再びゲームにログインする。これからすることのために、時間は1秒でも惜しいのだ。


 まずはあそこへ行って.........それで次に.........


 葵は最初の村でログインしてから一歩も動かず、突っ立った状態で考え事をしていた。それを通りかかる人は変な目で見ているが、関係ない。


 そしてどれくらい経ったのか、葵は考えながら探していた人物を見つける。


「すみません! アルスマナさん!」


 葵は目の前を通りかかった骸骨顔の人を呼び止める。


「ん? ああ、シリアルさんか。どうしたの?」


「アルスマナさん。PKするメリットって知ってますか?」


「いや。PKは既に公式がメリットのない仕様だと宣言しているよ」


 葵はニヤッと笑った。


「実は私、PKされて所持金も武器も全て盗られたんですよぉ」


「いや、そんなわけ.........でも嘘をついてるようにも思えないし.........」


「その情報をあげますので、取引をしませんか?」


 アルスマナは黙って考えていた。


 どうしよう。やっぱり言い方が不味かったかな?


「うん。いいよ。何が欲しいの?」


「え!?」


 葵にとってこれは正直賭けだった。


 証拠を見せろと言われても出せる証拠なんてない。だから、アルスマナが取引を飲んでくれることに驚いた。


「あ、はい! えっと.........お金です」


「分かった。10000z(ゼット)でいい?」


 10000! それだけ合ったら十分すぎる! お釣りまで来るではありませんか!


「はい! それでお願いします!」


「うん。それで、その時の状況を教えてくれるかな?」


「えっと、その私をキルした人は【シーフ】の上位職【ローグ】を取っていたみたいで、その【ローグ】取得によって出てくる隠しスキルが【強奪(ドロップスティール)】って言うみたいなんです」


「【強奪(ドロップスティール)】? 初めて聞くな.........それで?」


「あ、はい。そのスキルが倒したプレイヤーからアイテムを奪うってものだったみたいで、それにまんまと嵌められた私はそのプレイヤーにキルされて、一文無しってわけです」


 今でも自分の情けなさに笑えてくる.........あはは。


「なるほど.........よく分かったよ。ありがとう。これはそのお礼ね」


 アルスマナはささっと手を動かして操作をした。


 葵はメッセージボックスに注意のマークが付いたことを確認した。


「こちらこそありがとうございます!」


 そうしてアルスマナと別れた葵は、今しがた受け取ったメールを開封した。


「なっ!?」


 葵はそのメールの内容を見た目を疑った。


【ギフト

 →アルスマナ:30000z】


「なにこれ!? アルスマナさん、やさしっ! けど、なんかちょっと悪いな.........」


 葵は次に会った時にお礼をすることにして、さっそく武器屋に行くことにした。


「これでお願いします!」


 葵は黒のナイフを指さした。


 効率を求めるなら、使いやすさより耐久値優先だよね。よく分からないけど。


 NPCからナイフを受け取った葵は、人目のつかないところへ行き、【潜伏】を使用した。


 そして、森の奥地にある水辺まで移動した。


 よかったぁ。さっきの人達がいたら困るところだった。


 どうやらPK犯達は狩場を移動したみたいだ。


 じゃあ.........初めよっかな?


 葵は最初に目に入った熊型モンスターをナイフで切りつけた。


【レベルアップ3→4】


 あれ、 1しか上がらない? レベルが上がれば必要な経験値も多くなるのかな?



 残りポイント:460



 よしっ! ここから限界までこの能力値でやってみよっと!


 葵はそこからモンスターを狩り続けた。


【潜伏】で視覚範囲外からの【沈黙の一刀(サイレンスブロー)】による一撃。


 今の葵にとって、最初の村の近辺のモンスターにはそれで十分だった。


 そんなこんなで、気付けば葵のレベルはとんでもないことになっていた。


初めてのPK(される側)でした。



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