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再チャレンジ

 

【ポータル:デス時に飛ばされる場所。主に街の中心に配置してある】


 アルスマナと名乗る骸骨顔の言う通りに、森の水辺までやってきた葵は死ねばどうなるのかという疑問を解消するべくヘルプを使った。


 葵がここに来るまでモンスターに襲われることはなかった。


 おそらく、森の手前で他の人たちがモンスターを狩り続けているのが大きいのだろうと葵は考える。


 でも、こんな奥地まで来れば話は別だ。


 大きな叫びをあげて現れたのは熊型モンスター。


「じゃあ初戦闘してみますか」


 葵は敵意を向けて突っ込んでくるモンスター相手に――突っ込んで行った。


 そして、引き裂かれた。


「痛っ! でも死ぬほどじゃない? あっ、でもHPが0だ」


 こうして柏崎 葵の初戦闘は幕を下ろした。


 ◇◆◇


 目を開けるとそこは見覚えのある農村だった。


 ここがポータルなんだ。


 葵は引き裂かれた腹部を触る。


 怪我はない.........のかな。結構腕には自信があったんだけどなぁ。結果は惨敗。


 でも、これでどこにステータスを割り振って、なんの職業とスキルを取るのか大体掴めた気がする。


 葵は初戦闘を、無謀にも貰った500ポイントのうち1ポイントも振らずに戦闘に挑んだ。


 ええっと、何時だろ。


【現在時刻はヘルプから見ることができます】


 へぇ! 凄い便利!


 葵は時間を確かめた。


 午前3時38分。


 ええぇっ!! もう!?


 まだ、1時間くらいだと思ったのに!


 葵は急いでログアウトすることにした。


 そうだ! セーブとか.........


【オートセーブですのでご安心ください】


 あ、はい。


 今日学校に行けば明日は休みかー。早く帰ってきて勉強してからやろっと。


 葵はヘルメット型の機械を外し、喉が渇いていたから水だけ飲み、早く眠ることにした。


 ◆◇◆


「ただいまー!」


 早く勉強にとりかからなければと、葵はSHR(ショートホームルーム)後即座に下校した。


 学校ではスキルとかステータスの割り振りのことで頭がいっぱいだった。


 だからといって勉強や周りへの態度を疎かにしていない。むしろ、楽しみがあっていつもよりストレスを感じなかったくらいである。


「あら? どうしたの?」


 あっ! お母さん、まだいるんだった!


 ゲームのことで頭がいっぱいで、つい浮かれた声を出してしてしまった。


「へぇ.........」


 お母さんが顔を覗いている。


「んなに?」


 この感じ昨日.........あ、今朝になるのか。教えてくれた人に似てる。


「ゲームもいいけど程々にしなさいよ」


 いや、なんで分かるの!?


 葵は頬を膨らませ、不貞腐れた態度をとる。


「じゃあ、お母さんもう行くから」


「早く行ってよ!」


「あと、今日の晩御飯はカレーだから温めて食べといてね」


「なっ!?」


 葵の母はそう言うと、家から出ていった。


 母が出ていったのを確認するや否や葵は台所に向かい、確かに調理が行われた鍋が置いてあることを確認する。


「3時50分.........か」


 葵は一瞬、早めの晩御飯にしようと考えるも頭をブルンブルンと横に振り、考えを改める。


「先に勉強終わらせよっと」


 葵は楽しみがもう一つ増えたと、にやけ顔で勉強机に向かった。


 ◇◆◇


 午後9時。


 小学生でも起きている時間に、葵は既にパジャマだった。


 しかし、決して寝るわけではない。


 むしろ、今から始まるのは戦いである。


 学校の休み時間。


 普段は何もせず、ただ自分の席に訪れる生徒の相手をしているだけで過ぎる、葵にとっては楽しくない時間。


 しかし、今日は違った。


 いつも頑張っているのだ。一日くらい休んでもいいのではないか?


 そう自分に言い聞かせながら葵は、スマホを駆使してBIOの情報サイトや掲示板に載っている全初期スキルと職業に目を通した。


 そして、ステータスで伸ばすといい値や、伸ばすことで得られるメリットの大きい値をSNSのつぶやきから片っ端に目を通した。


 もちろん、話しかけてくる相手には対応する。自分がいつもと違うことに気づく生徒もいた。


 けども、私はやりきった! そして、得たものは大きい!


 葵は正方形の機械のスイッチを入れ、白いヘルメット型の機械を被る。


 数秒後、目の前が昨日の村に切り替わった。


 葵は早速自分のステータス画面を開いた。


 そこには1という数字が羅列している。


「じゃあ始めますかぁ」


 葵はさっそくポイントを振り始めた。


 30分後。


「ふぅ。これで完成っと」


 葵は自分の能力値確認画面を開いた。



 シリアル

 Lv1

 HP:51

 MP:51


 ATK:31

 DEF:1

 INT:1

 MGR:31

 AGI:31

 LUK:1


 職業

【シーフLv5】

 →【アサシンLv5】


 スキル

【剣攻撃強化Lv5】

【潜伏Lv5】


 残りポイント:60



 剣攻撃強化は剣だけじゃなくて、日本刀とかダガーとか刃物全般に強化が入るらしい。とって損はないと思う。


 あとは【アサシン】と【潜伏】で極力強いモンスターとの戦闘を避けて、不意打ちで楽にモンスターを狩っていこう! というわけだ。


 あれ? メッセージ?


 葵は赤い注意マークの点滅するメッセージボックスを開いた。


【 【アサシンLv5】 【潜伏Lv5】の取得により、隠しスキル【沈黙の一刀(サイレンスブロー)】を取得しました】


 えぇ.........なにこれ?


 予想だにしなかった出来事に葵は困惑する。


 とりあえず、スキルの確認をしよっか?


 葵は【沈黙の一刀(サイレンスブロー)】の欄をタップした。


沈黙の一刀(サイレンスブロー):自分を認識していない相手への剣の攻撃にボーナスが入る】


 んん?


 つまり、これは【潜伏】で身を隠して【アサシン】で不意打ち、【沈黙の一刀(サイレンスブロー)】でそれがさらに強くなるってことかな?


 葵は慣れないMMOの立ち回りを、スキルの効果を一目見て理解した。


 じゃあ、さっそく昨日のリベンジと行きますか。


 と、その前に。


 葵は通りかかる人に尋ねながら、ある場所に向かった。


 ここかな?


 そして、何とか目当ての場所にたどり着く。田舎の農村に似合う木の家。葵は、扉を開けた。


「いらっしゃいませ」


 わわっ。どうしよ?


【NPCです】


 え?


【NPCとは、ノンプレイヤーキャラクターの略で、ゲームを円滑に進めるために作られたキャラクターです】


 へぇ! そうなんだ!


 ジロジロと顔を見るも、反応はない。


「ええっと、軽くて扱いやすい小さな剣を探してるんですが.........」


「はい。こちらはいかがでしょうか」


 葵の目の前に多種多様なダガーナイフの一覧が現れた。


 おおっ! これなら私でも使えるかも?


 葵は自分の所持金を確認する。


【5000z】


 うん。ギリギリ買える.........かな?


 そして、葵は10分かけて小綺麗な白のダガーナイフを4000zで購入した。


 ううっ.........出費が痛いなぁ。だけど、目当てのものはゲット出来た!


 葵はポジティブに考えて、さっそく試し斬りをすべく昨日の場所に移動した。


 誰も私の事に気付いていない?


 スキル【潜伏】を発動させていた葵に気付く人はいなかった。


 これがレベル5に上げた結果なんですよ。葵は小さな優越感に浸り、ニヤニヤと笑みを浮かべる。


 あっ! 昨日のクマさん!


 思わず逃げそうになるも足を止める。


 どうやら相手は気付いていないみたい。よーし.........


 葵は勢いよく地面を蹴った。そして、空中に飛び、熊型モンスターの横腹をダガーナイフで掻っ切った。


「ウゴォッ!?」


 熊型モンスターは赤い光を放ちながら、消えていった。


 よかった! もし、モンスターを倒して血とかが出て惨いことになってたら怖かったし。


 葵は2回目の戦闘でしっかりと勝利を収めた。


「ふぅ」


 葵は気が抜けるように潜伏を解除してその場に座り込んだ。


【レベルアップ1→3】

 

「あっ! レベルアップ! それも1つ飛ばしてるし」


 葵は急いで能力値の画面を開いた。



 残りポイント:260



「ええっと.........隠しスキルを取って残り10だから、レベル2と3で100と150ポイント貰って260で合ってる!」


 初めて戦闘で得たポイントを目前にして、葵は我慢できなかった。


 しかし、そこで思いとどまる。


 ちゃんと考えなくちゃ。ポイントは帰ってから振るとして、とりあえず今日は帰ろっかな?


 葵は帰るべく、もう一度【潜伏】を使うことにした。


 あれ.........? 発動.........しない?


 何度スキルを使おうとしても発動しない。


 バグか何かだと考える葵。しかし、潜伏の効果を思い出す。


【潜伏:姿を隠し、気配を断つ。レベルが上がる事に精度が増す。ただし、スキル発動時を人に見られていると発動しない】


 それを見た時の葵は、わざわざ人のいない場所まで移動して【潜伏】を使った。


「あれっ? ということは?」


 葵はカサカサと草の揺れる音のする方を向いた。


 そこには、ニヤニヤと下心のこもった笑いを見せる男数人がいた。


柏崎 葵はカレーとオムライスが大好物です。

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