一方的な
「それはつまりやるってことでいいんだな?」
酷く怒った様子で竜人種はそう言った。
今、私はシリアルとして戦おうとしている。
つまり、【神隠し】は使えないし、いつもの戦い方であるダガーナイフによる小回りの利いた動きで戦うことも出来ない。
それに、そもそも不意打ちによるPKを前提に考えたステータスやスキル構成だから、こういった1VS1の戦いはあまり得意じゃない。
「強い人と戦いたいんですよね?」
だから、使えるのは【ソードマスター】の職業だ。
もともとダガーの一撃を高めるために刃物系統の武器に補正がかかるから取った職業だけど、こういうカモフラージュのような使い方も出来たりする。
片手剣はアイテムボックスに入れていた丈夫なだけで特に効果を持たないごく普通の剣。
こんな強い人と戦えるならもっとまともな剣を用意していたんだけど、ずっと後回しにしていたのが良くなかったみたい。
「そうか・・・・・・なら、お前が強い奴か確かめさせてもらうからな!」
そう言って竜人種は先程パーティーを一撃で落としたものと同じものをシリアルに向けて放った。
おそらく、この攻撃自体は普通の打撃だ。
霊人種は物理攻撃が透過し、無効化されるから受けるダメージは0。
このことは普通に情報サイトにも載っているし、デスリアルは骨人種として立ち回っていることから関連付けられることもない。
だから、避けなくていい。
そう判断しようとした直後、悪寒が走った。
シリアルは瞬時に身を反らし咄嗟に攻撃を回避した。
「その肌の透け具合、お前、霊人種だろ? 大方、種族特性の物理攻撃無効化で何とかなると思っていたんだろうが、ワタシの【魔法闘士】は魔法をこの手に込めることが出来る。これなら普通に殴っても当たるだろ?」
ただの戦闘好きかと思っていたんだけど、そういった対策していなければ詰みとなってしまう要素をしっかり対策しているあたり、頭も回るんだろう。
無効化出来ないなら受ける?
いや、さすがにこれを剣で受けたら、剣の方が簡単にダメになってしまう。こんな剣でも素手よりかはよっぽどマシだからね。
シリアルがそう考えていると、次の一撃が正面から飛んでくる。
それを今度は意識して躱す。
やっぱりAGIはこちらに分があるみたい。
シリアルは攻撃後、僅かに生まれた隙を狙い、竜人種の首を狙った。
攻撃を回避できたシリアルとは反対に、その一撃は見事に竜人種の首に入った。
――いや、避けなかったんだ。
「おいおい。こんなもんかよ!」
明らかに入ったはず、スキルや魔法で防がれた気配もない。
それにも関わらず、目の前の竜人種は平気な顔をしていた。
いくら、スキルを使っていないとはいえ、【天逆神】でATKは大幅に上がっているはず。
それを通さないほどにDEFステータスを振るとなると、ATKやAGIに回す余裕なんてなくなると思うから、おそらく何らかの常時スキルなんだと考えるのが妥当かな。
攻撃がまともに入らず、INTにステータスを一切振ってないから魔法も使えない上に今使えるスキルがほぼない・・・・・・こんな状況、普通なら勝てるはずない。勝てるはずないからこそ、なんとしても勝ちたい!
シリアルは片手剣を斜めに構えた。
「なんだぁ? 今度は受けるつもりか? おもしれぇ。やってみろよ!」
竜人種は先程同様の攻撃、拳による一撃をシリアルに飛ばした。
それをまた先程同様、シリアルはギリギリのところで回避。
――いや、違う。
竜人種はこれまで一撃を放つと、その後に少し隙が生まれていた。
だから、その隙を狙ったカウンターをしたんだけど、今竜人種が行っているのはこれまでの攻撃が嘘だったかのように思えるほどの嵐のような連続攻撃。
それ避けるのだけじゃ間に合わないから、片手剣で受けるのではなく、いなすことも合わせることで何とか凌いでいる。
「おいおい、そんなんじゃいつまで経っても勝てないぞ?」
――っ! 今っ!
連続攻撃の合間に生まれる隙を狙っての反撃。
しかも、さっきの攻撃よりはるかに速く綺麗な一撃が横腹に入った。
「チッ。めんどくせぇ」
そういうことか。
さっきはノーダメージのように見えたけど、今回は明らかにダメージが入っている。
確かにさっきの攻撃よりは速く隙をついているとは思うけど、でも逆にそれだけで攻撃力が上がったわけでもない。
そう言えば、最初の攻撃も効いている様子だった。
ということは、あの硬さは常時スキルによるものじゃなくて、発動スキルによるものなのだろう。
それが時間制限付きの防御力アップか、身体の一部に対する防御力アップなのかは分からないけど、ずっとあの硬さを相手にするわけではないと分かっただけでも十分だ。
シリアルは地を蹴り、勢いよく飛び出すと片手剣で狙う部位を1点に絞らず先程の連撃を超える速度の連撃を繰り出した。
――勝てる!
確かに攻撃力や防御力はあっちに分があるけど、速さはこっちの方が上。
いくら軽い攻撃だとしても相手の防御スキルの発動とタイミングを逸らしさえすれば、確実にダメージは入る。
なら、追い付けない速度で耐えきれない数を打ち、反撃を全て回避すれば後は我慢比べで勝てる。
勝ちを確信するシリアル。
回避出来ず一方的に攻撃を受ける竜人種。
そこに畳み掛けるシリアルの目に映ったのは、満足気な態度で笑みをこぼす竜人種の姿だった。
「――スキル【竜の威圧】」
シリアルの猛攻がピタリと止まる。
スタン系スキル!? まずっ・・・・・・体が動かない。
体が石のように固まり、動かせないシリアルを前に竜人種はため息をついた。
「はぁ。認めるよ。アンタは強い。しかもまだ、余力を残しているときた。なら、ワタシもここからは遊び無しでやらせてもらうよ」
――っ!? スタンが解けた!?
時間経過でスキルの効果が切れたんだ!
シリアルはステップを踏みながら後ろに下がる。
「逃がさねぇ。スキル【竜の威光】」
体が重い・・・・・・デバフスキルだ。
「【ドラゴンエンハンス】【竜王解放】」
エンハンス系スキルに種族最高のバフスキルまで!?
肉弾戦特化かと思ってたのにスタンにデバフ、バフスキルってさすがに詰め込みすぎでしょ!
嫌っ! このまま負けるとか絶対に!
「【ゴーストエンハンス】! 【剣技練成】!」
デスリアルとしてじゃなく、シリアルとして出せる全力をぶつける! 絶対にPKる!
「アンタ、名前は?」
今の私はデスリアルじゃない。1プレイヤーで片手剣使いの霊人種――
「シリアルです」
「そうか・・・・・・ワタシはシズク。今度やる時はお互い全力でやろうな」
シリアルが剣を振るより早く、竜人種――シズクの拳はシリアルの身体を捉え、その一撃でHPゲージの全てを削りきった。
色々盛り込んでいるように見えますが、バフ対象は自分だけ、デバフやスタンは対象1人限定、効果はそれほど高くない上に効果時間も短いと欠点が多いです。




