表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/39

殺戮の女神と傍観の死神

 

 BIOに存在するダンジョン。その中で三本の指に入るほど高難易度のダンジョン【ビルスキル】。


 部屋にあるのは三つの扉、その先にはまた別の部屋。それが延々と続くこと540にも及ぶ。


 540もの部屋には、それぞれボスクラスのモンスターが一体ずつ出現する。さらにそれは奥に進むにつれてレベルが高くなる。


 挑む者がいても、クリアする者は現れず。 現実を突きつけられたプレイヤーは身内でのクリアを諦め、多と他を頼るようになる。


 そんなダンジョン【ビルスキル】の最深部にシリアル達、PKクランの四名が到着した。


 「今でどれくらいだ?」


 「もうすぐで3時間です」


 「まさかこれ程長時間になるとは.......」


 「オレは言ったぞ? 何時間になるか分からんから覚悟しとけって。それに最高レベルの難易度のダンジョンに初見で3時間って上出来以上だからな」


 「確かに予想以上に早く到着できましたよね」


 「ですが、3時間ともなると」


 「はいはーい、話は終わり。みんなそろそろ来るよ」


 自由に話す3人を止めて、シリアルは自分達の前に現れた者に目を向けた。


 赤い長髪に水色の輪郭、薄透明な身体、パーツのない顔。そして、右手には柄の短い槌を握りしめている。


 これまでのモンスターとは一際違う雰囲気、オーラ、そしてその部屋から別の部屋へと渡る扉が存在しないことが、これがこのダンジョンのボスモンスターだということを物語っていた。


 「.......これまでみたいにはいかなそうだな」


 いとも容易くここに辿り着いた四人だが、ハルのその言葉には同意せざるをえなかった。


 「.......あれを使いますか?」


 冬華ちゃんことツェントが私に確認をとる。


 確かにここでツェントの力を借りれば簡単に終わる気がする。でも――


 「ううん。あれは最後まで残しておいて」


 今回の目的はダンジョン攻略じゃない。あくまでもダンジョン攻略は目的における過程の一段落にすぎない。


 「ふー。じゃあ、本気だそうかな」


 「どうするつもりだよ」


 「これまで四人一緒に戦ってきたでしょ? 私とイリスが前衛、ハルちゃんとツェントが後衛。そういう一般的な普通の連携でここまで来たんだと思うの」


 「まぁそうだな」


 ハルちゃんの肯定に二人も同意している様子だ。


 「でも今回はその一般的な普通が通じそうにない。なら世間一般では異端だけど、私たちにとっては普通のやり方を取ればいいと思うの」


 「あ、私分かりました」


 「ああ」


 「どういうことでしょう? 私には全く分かりません」


 ハルちゃんとイリスは理解したみたいだけど、ツェントは分からない様子だ。このクランに入って間もないから仕方がない。


 「私たちにとっての普通は、私が闘い、ハルちゃんとイリスが回復とバフデバフで私をサポートする。そして、クラン全員で作りあげたデスリアルという1プレイヤーで戦うんだよ」


 「.......なるほど。理解しました。それでは、私は何をすればよろしいですか?」


 「ツェントには創造した死霊系モンスターで相手の注意を分散させて欲しいかな」


 「了解です」


 話し合いが終わったところで、再び目の前のモンスターに目をやる。


 やっぱりボスモンスターと言えど、こちらが直接的な攻撃をするまで何もしてこないというのはこのダンジョンを通して一貫している。下準備が重要な私たちにとってはとても好都合なダンジョンだ。


 いつもの如く、ハルちゃんとイリスは私にどんどん回復魔法とバフをかけ始める。それに合わせて、ツェントは死霊系モンスターの創造を始めた。


 カラフルな光が放たれながら魔法がかけられ、地面には黒い液体が広がり死霊系モンスターが続々と湧き出す。狭い空間で起こっていることにしては、あまりにも情報量が多すぎた。


 「完成ですね」


 「こっちも」


 「私も大方整いました」


 三人から完成の言葉を聞いた。


 恐らく、このモンスターはこれまで戦ってきたどのモンスターよりも強い。


 それでも負ける気はしなかった。


 片手に全てのスキルを上乗せしたダガーを握りしめ、瞬時にそのモンスターとの距離を詰めると、勢いよくそれを振り下ろした。



 ◇◆◇◆◇


 シリアルたちが【ビルスキル】に挑むその三日前。


 冬華ちゃんの出した条件を満たせなかったもののクランには入ってくれるということを、冬華ちゃんも一緒にクランメンバーの二人に話していた。


 「なーんか納得いかないんだよな」


 「どうして?」


 「いや、確かに嬉しいんだけどな。なんかやけに甘いっていうか、変っていうか、そもそもこいつが努力を認めるってタイプに見えないからな」


 分かってはいたもののハルちゃんは冬華ちゃんのことをあまりよく思っていないみたい。でも、今その発言をしちゃうのは色々とまずい気がする。


 「それはどういう意味でしょうか? 確かに私は結果を重んじます。しかし、それは何も過程を見ないというわけではありません」


 「いや、だからその過程をこれまで全く重要視してこなかったのが、それが今更どうしてって」


 「ストップストップ! 二人ともなんでそんなすぐに喧嘩になっちゃうの!?」


 「喧嘩じゃねぇよ」


 「葵さん撤回してください。喧嘩とは同レベルの者同士でしか行われません。そして、私と茨木さんが同レベルのはずがありません」


 「あ?」


 はぁ、話が進まないなぁ.......。ハルちゃんの第一声でまずいことになる気がしたけど、ここまで犬猿の仲だと連携も上手くできるか心配になる。


 「あの、一応ゲーム内ですからゲーム名で呼びませんか? ほら、誰か聞いていれば個人情報が漏れることにもなりますし」


 「うっ.......それは」


 イリスの言うことはもっともだ。それに多分、イリスは二人を止めるためにあえて話題を逸らしたんだろう。その逸らし方は効果的。これを使わない手はない。


 「イリスの言う通りだよ! だから、新しくクランメンバーが増えたということで自己紹介にしようよ」


 「.......確かにそれは必要ですね」


 「別にこっちは聞きたくないけどな」


 「今なんて言いました?」


 「なにも?」


 もうダメだ。早いところ自己紹介を始めないと、今回の会に留まらず、クランそのものの解散に繋がりかねない。


 「はいはい。じゃあまず、新しく加入した冬華ちゃんから」


 「了解です。私のゲーム名はツェント。特に深い理由はありません。種族は悪魔族(デーモン)、職業はダークウィザード、ダークソーサラー、マスターネクロマンサーの最高職が三つです」


 「はいダウト。ツェントさん、今日入ったクランでそんなあからさまな嘘は良くないと思いますねぇ」


 「私が嘘.......ですか? 何を根拠に」


 「こっちが聞きてぇよ。職業三つだ? もう一度自分の胸に手を当てて聞いてみろよ」


 「ちょっと、ハルちゃん!」


 それはまずいよ。 冬華ちゃん、ツェントが【隠し職業(シークレットジョブ)】を持っている可能性が高いって話はしたけど、なにも確定はしていない。もし、違っていれば一方的に私たちの握るカードを公開することになる。


 「どういう意味でしょうか?」


 「あるんだろ? まだ職業が」


 私の制止を無視して続けるハルちゃん。一方でツェントは真っ直ぐハルちゃんの目を見ている。


 「.......なるほど。やはりあなた方も知っておられる、いえ持っておられるのですね。第四の職業.......【隠し職業(シークレットジョブ)】を」


 この言い方.......やっぱりあの力の正体はそうだったんだ。


 「何言ってんだ?」


 「え?」


 え?


 「最高職が三つってことは、その前に入手していた職業が複数あるだろ? って意味だけど.......なんだ? そのしーくれっとじょぶって」


 「あ、まだ他の職業を持っているとはそういう意味の.......」


 「質問に答えろよ。そのしーくれっとじょぶってなんなんだよ。それともそこまで話しておいてクランメンバーに秘密にするつもりか?」


 「うっ、ううっ.......」


 ツェントは冷静を装うと必死だけど、動揺しているのが顔にまで出てしまっている。


 本来ハルちゃんを信じられなかった私に何も言う権利はない。だから、この場の全てをハルちゃんに任せるべきだと思う。


 だけど、今にも泣きそうなツェントを前にそういう訳にもいかない。少し口を挟むけど、最後の決定権はハルちゃんに委ねよう。


 「ハルちゃん.......言ってもいいと思うよ?」


 「え、あー大丈夫か? 別のクランのスパイって可能性も、姿を消して情報を商人に売るって可能性もあるんだぞ?」


 確かにハルちゃんの言うことはもっともだ。どれだけ約束に忠実な人間に見えても、その人の本質は本人すら分からない。そういう可能性は当然ありえる。それが例え現実を知る同士の関係だとしても。


 だけど、今ここで壁を作ってしまうと次に進まないし、何も始まらない。悪い可能性を懸念するがあまり未来を壊してしまう程の重要な問題ではない。


 「ツェントにそんなつもりはないと思うよ。それにいくらクランメンバーとは言え、話せない秘密の一つや二つあってもいいんじゃないかな?」


 「まぁそう言うなら.......」


 ハルちゃんはあまり納得していないようで渋々といった様子だ。一方でイリスはあまり口を出そうとしない。このことについてどう思っているのかはあまり分からない。


 「ただし、こいつの話次第だからな! こいつが喋らないことをわざわざこっちから喋ってやる必要はない。それでいいな?」


 「うん。ありがとう」


 そうして私たちの目はツェントに移った。


 「.......先ほど話しました通り、私は第四の職業を持っています。第四の職業は、ある条件を満たすことで取得可能な【隠し職業(シークレットジョブ)】のようです」


 ツェントはさっきのさっきまで泣きそうだったからか、掠れた声で続けた。


 「その職業の名前は【太陽神(ラース)】。能力は自分が創造したモンスターに一度だけ微強化状態で自動で蘇らせるスキル【自動蘇生(リ・ワン)】を与えることと、特殊スキル【殺戮女神(セクメト)】を取得できる.......というものです」


 ああ。それで、普通のネクロマンサーではありえない量の死霊系モンスターを操っているように見えたんだ。

 増えていた訳じゃなくて死んだものが蘇っている。地面に広がった黒い液体から湧き出るように出現する演出が、蘇る演出と同じだったから気付けなかったというわけだ。


 それと――


 「【殺戮女神(セクメト)】.......?」


 「はい。皆さんにお見せしました。あれです」


 頭には自分より二回り程大きい女性の形をした黒い影が浮かぶ。


 「つまり、あの馬鹿げたモンスターはそのスキルによるものってこと?」


 「.......はい」


 自分以外の【隠し職業(シークレットジョブ)】を初めて見たけど、やっぱりどっちも能力がおかしい。バランスブレイカーという言葉が生温いほど壊れた能力をしている。


 「あの.......そのスキルであのモンスターを生み出せるということは分かりました。ですけど、それって何かリスクとかってあるんですか?」


 イリスが口を開くと、ツェントにそう尋ねた。


 「リスクと言っていいのかは分かりません。この【殺戮女神(セクメト)】で生み出せるモンスターの強さは一定ではないのです」


 「一定じゃない.......?」


 「はい。【殺戮女神(セクメト)】は自分の経験値を糧に自分に従順なモンスターを生み出すスキルで、糧にする経験値を増やせば増やすほどモンスターは強くなります。その代わりに、当然ですが使用した経験値の分だけ自分はレベルダウンしますし、レベルアップによって得たポイントで取得した職業、スキル、ステータスは失うことになります」


 えぇ.......確かに凄いスキルだけど使い勝手が悪すぎる。


 連続して強いモンスターを生み出すことも出来ないし、普段の戦闘で気楽に使えるような代物じゃない。ザ・奥の手といったスキルだ。


 「.......ちなみにこの前のはどれくらい経験値を使ったの?」


 恐る恐るツェントに尋ねる。


 「前回の使用で55あったレベルが41に下がりましたね。計算はしていましたが、失った量は少なくないですね」


 そのレベル帯で14レベル下がる経験値を使用してあのモンスターが一体。それがいいのか悪いのかよく分からない。

 よく言えば経験値をもっと使えば伸び代があるし、悪く言えばそれで通用しなかった時が悲惨だ。


 「色々と検証したいですね」


 「だな。もし、使用経験値を見誤ってレベルダウンし過ぎて【隠し職業(シークレットジョブ)】が消えたとかなったら笑えないけどな」


 「あはは、笑えませんね。それ」


 確かに要検証だ。上手く使えばこのクランの大きな戦力になるし、使いこなせなければ宝の持ち腐れになる。


 検証の場には丁度心当たりもあるし、ツェントの歓迎パーティーも兼ねて大々的に後々行おう。


 「あの.......これで問題ありませんか?」


 全てを語り尽くしたツェントは私たちに向かって尋ねる。隠していたこと自体には悪気はあったみたい。スパイの可能性もほとんど無さそう。元々BIOはソロプレイだったぽいし、情報公開に慎重になっていただけだと思う。


 チラリとハルちゃんの方を見る。


 「はぁ.......ならオレたちも自己紹介するか」


 ハルちゃんも疑う必要はないって判断に落ち着いたみたいだ。


 そうして私たち三人は新メンバーを合わせた四人で、クラン全ての情報共有をした。



 ◆◇◆◇◆


 「ふー、さすがに強かったね」


 以前戦ったツェントの【殺戮女神(セクメト)】によって創り出されたモンスターをも凌ぐ強さだった。


 特にあともう少しという所で広範囲の落雷攻撃をされた時は、私以外の三人は助からないと思ったぐらいだ。

 イリスがMPを攻撃魔法で消耗しておらず、その分のMPで瞬時に回復魔法を全員にかけてくれて難を逃れることが出来たけど。


 「シリアルさん、お疲れ様です」


 疲れて座り込むシリアルに、イリスは近付きそんな言葉をかけた。


 「ううん。イリスの方こそ、あの一瞬で回復の判断ができるって凄いよ! ありがとう」


 「いえ、あの場で私のすべきことは様子を伺いながらの回復(バックアップ)ですから。動けて当然ですよ」


 そうは言っても私がイリスと同じ立場に立っていたとして、イリスと同じように動けたとは思えない。

 これまでやってきた様々なゲームの経験、それによって身についた判断力、このゲームに対する知識と理解。果たしてあの判断が出来るプレイヤーが今のBIOに何人いるのか。


 「はぁぁぁぁ。さすがに死んだかと思ったわ」


 「あなたは何もしていませんよね?」


 「いや、ちゃんとデバフかけてただろ? そっちこそ、ちみちみモンスター出してただけじゃねぇか」


 「何を言ってるんですか。モンスターにも種類があるんですよ? 状況によって創るモンスターを選びながら戦っているシリアルさんの邪魔にならぬようサポートをする.......まぁ、あなたには分かりませんか」


 二人は睨み合ってこそいないものの、お互いがお互いを牽制し合う。


 「あ、見て! 初クリア報酬だよ」


 部屋中央に倒れたボスモンスターが消え、代わりに二つの宝箱が現れた。

 二人を止めるために、分かりやすい声でその宝箱に注意を向ける。


 「宝箱が二つ.......大人数で挑んだ人たちほど、ここで揉めることになるんですかね」


 イリスは苦笑いでそう言った。


 全く笑えない話だ。頑張ってみんなでクリアしたのに、最後はその仲間同士で報酬を巡って争うことになる。

 まぁでも人数分配布ってなったら、少人数でダンジョンに挑む人がいなくなっちゃうって意味で間違いじゃないんだろうけど。


 「とりあえず、これで揉めるような奴らのことはおいといて、当初の予定通り報酬はクランの共通資産ってことで問題ないな?」


 「うん。私は大丈夫」


 「私も大丈夫です」


 「問題ありません」


 このことは既に話し合っていた。クランで得た物はクランの共通資産として保管する。使用は適切なタイミング、適切な使い道で――と。


 全員で再確認したところで、ハルちゃんが宝箱の一つを手に取り開封した。


【初クリア報酬:2000000z】


 「金.......だな」


 宙に映し出された文字を確認したハルちゃんは、残念そうにそう呟いた。


 初クリア報酬の一枠がお金というダンジョンは少なくない。もちろん、報酬枠全てにお金が入っていないダンジョンも存在する。


 だけど、これだけ高難易度ダンジョンの、それも初クリアの報酬がお金となると落胆する気持ちは分かる。私も結構がっかりしている。


 「それも大金ってほどでもなく、頑張れば数日で稼げそうな額ですよね」


 周りのがっかりムードに、イリスは無意識でかさらに追い打ちをかける。


 「もう一個あるけど.......どうしよっか?」


 みんなに確認する。


 さすがに一枠がこれだともう一枠にはいい物が.......いや、やめよう。これすらフラグになりかねない。


 ここで開けて、さらに気まずい空気になりたくない。開けるなら時間のある時に、お茶を飲みながらでも開ければいい。うん、それがいい。


 「.......やめよっか」


 沈黙の了解ということで、代表して私のアイテムポーチに宝箱を収納した。


 ――さてと。


 「みんな、これからが本番だからね」


 現在のBIOでも最高レベルを誇るダンジョンの攻略。これは私たちの本来の目的ではない。あくまでも下準備にすぎない。


 「ううっ.......本当にやるのですか?」


 ツェントはさっきまでの強気とは打って変わった弱々しい声で私に尋ねる。


 「ここまで来て怖気付いてんじゃねぇよ」


 「ハルちゃんの言う通りだよ。PKをどの程度まで許容するのか。その判断を行うには実際にPKを行わないとダメって、そう話し合ったよね?」


 「ですが.......」


 理屈としては私もよく分からない。本を批判するのに読んでもいない人が批判するのはおかしいよね? って話したら、なんかこういう流れになった。


 実際のところ私の中では、ツェントの【太陽神(ラース)】の特殊スキル【殺戮女神(セクメト)】の検証というのが今回の一番の目的だ。


 そしてそれに利用するのは、ちょっと前にネットで見かけた『ビルスキル攻略連合軍』である。

『ビルスキル攻略連合軍』とは攻略の難しい【ビルスキル】に、人海戦術で挑むべく集まった集団らしい。

 現在では1000人近くまで集まり、私たちクランの募集活動で行っていたダンジョン潰しが落ち着いた、まさに今しかないと連合軍が攻略を決めたのが三日前。


 私たちは、その連合軍の攻略開始時間より早く来て、先に攻略してしまう。それを知らず、ダンジョンに足を踏み入れた連合軍一同を一網打尽にするというのが今回の計画だ。


 1000人という数のプレイヤーは十分な実験対象になり、ダンジョン攻略で手ごわいモンスターを何体も倒すことで【殺戮女神(セクメト)】の経験値問題も解消される。


 「えーっと、私が言っていいのか分かりませんけど、無理ならやめても大丈夫ですよ?」


 悩みに悩む様子のツェントに、まさかの方向から一撃が飛ぶ。


 無意識にイリスは言ってるみたいだけど、言われた本人からしたらたまったもんじゃない。出来ない、なんてこの期に及んで言えるはずがない。


 「分かりましたっ! しますっ!」


 ツェントの言葉は確認した。


 「じゃあ、ハルちゃん。よろしくね」


 「本当に二人でやんのかよ.......」


 「うん。今回はハルちゃんとツェント、二人でお願い」


 「いや、理由は分かるけどな。気が進まないって言うか何と言うか.......」


 ハルちゃんにツェントの協力をしてもらうのにはちゃんと理由がある。


 「はぁぁ、分かったよ。やるよ、やってやるよ」


 ハルちゃんは大きな溜息をつくと、MP回復のポーションをいくつか飲み干し、ツェントに強化魔法をかける。


 ハルちゃんにツェントの協力をしてもらう理由――それは、ハルちゃんの強化魔法がツェントの創ったモンスターにも適応されるかどうかを確かめるためだ。


 「では、いきます」



 ――その日、攻略に挑んだ『ビルスキル攻略連合軍』総勢981名は全滅した。


 リスポーン地点に戻されたプレイヤーは謎の者にやられたと証言した。


 それをダンジョントラップと疑う声もあった。


 しかし、多くのプレイヤーが目撃した殺戮を傍観する知れ渡った骸骨顔が、「例のクランだ」とそう言わしめた。


これで今章は終わりです。


次回から3章です。感想いただけたら嬉しいです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ