PKクランのメンバー募集活動(5日目)
一体なんなんだこれは。
俺がBIOを始めて1週間。慣れないVRゲームに苦戦しながらも、何とか戦いを楽しめるレベルまで強くなった。
そして今日は、高校時代の友達4人と5人で初めてのダンジョン攻略を行う、その予定だった。
楽しめるレベルにまでなったとはいえ、まだまだ俺は俺の友達に比べれば大したことない。だけど、そんな俺でも今日のダンジョン攻略は楽しみだった。まるで、小学生の頃の遠足を思い出す気分だった。
だったのに、これはなんだ?
突然、目の前に現れた骨人種。黒いローブを纏ったそいつは、姿を見せた瞬間、俺の仲間の一人、前衛プレイヤーだったそいつを消し去った。俺より強かったそいつをたった一瞬で消し去ったんだ。
俺は呆気に取られていたが、俺より戦いに慣れている仲間達は即座に反応し、反撃した。していたが、そいつに攻撃は当たらなかった。
剣を振るも、当たらず。盾で突撃するも、当たらず。魔法を当てるも、全く効いていない。
そうしているうちに、一人、また一人と俺の仲間は消され、ついに俺だけになった。
槍を握りしめ構えるも、勝てるビジョンが見えない。俺より強い奴らの攻撃が効かず、俺より強い奴らを一瞬で消す――そんな奴に勝てるはずがない。
こいつはなんだ? そもそもプレイヤーなのか?
そんなことを考えながら、目の前まで迫るそいつの手に何も出来ず、目を瞑った。
奴が噂の最悪PKプレイヤー、デスリアルだと知ったのはその後のことだった。
俺はこの経験にトラウマを覚え、しばらくPK可能エリアに入ることが出来なくなった。
◇◆◇◆◇
デスリアルがクラン募集活動を開始して5日目。既に最低でも400のプレイヤーがデスリアルの手によってポータル送りにされている。
最低でも400というのは、5日目ともなると目撃者の多さから、疑う者はほぼいなくなり、リアルタイムで発信されるデスリアルの目撃情報を頼りにダンジョンに集まるプレイヤーが現れ始めているからである。
興味本位か、本気でクラン入りしたいがためか、現れるそういったプレイヤーをデスリアルが全て返り討ちにしている。そのため、デスリアルによる実際のキル数は400では利かない。
最悪のプレイヤーとして噂されるデスリアル。運営にチートの可能性として問い合わせする者が現れる中、依然としてデスリアルによる殺戮は止まらなかった。
「お待たせー」
「遅せぇよ。もう集合時間10分も過ぎてるだろ?」
「まぁまぁ、10分ぐらい良いじゃないですか」
午後11時10分。
集合時間の11時を10分すぎて私は集合場所に到着した。
「ごめん。予習の時間が結構延びちゃって.......」
「しっかりしろよな」
本当はもっとBIOをやりたいんだけど、予習復習の時間を削るわけにもいかないし、学校で気を抜くわけにもいかない。
「でも、凄いですよね。帰ってすぐに机に着いて勉強してるんですよね?」
「いやいや! 私の飲み込みが悪いからだよ! もっと飲み込みが良かったら勉強時間を減らせるし、なんなら学校の授業だけで事足りるだろうからね」
「そういうものなんですかね?」
「おいおい。BIOに来てまで勉強の話は勘弁しろよ」
「あ.......ごめん」
「す、すみません」
確かに今はBIOをやってるわけだし、こっちに集中しないとだよね。
「じゃあ今日はどうする?」
「もう決めてるよ。ダンジョン【ディクテオ】。洞窟型ダンジョンで、出てくるモンスターは入った序盤から初心者じゃ手に負えないレベル。ダンジョン攻略に集まるプレイヤーは中級者以上は確実だろうな」
「えー、大丈夫かな?」
「今日で5日目だし、自分たちのレベルもおおよそ理解出来た。もはやデスリアルはここ程度のダンジョンにいるプレイヤーじゃ止まらねぇよ」
「私もそう思います。先日の公式大会の出場をかけた予選で強い方と沢山戦いましたけど、今のデスリアルさんは総合能力値10位以内のプレイヤーが相手でも相手が戦闘特化していない限り負けないと思います」
うーん。そうかなぁ? まぁ実際に強いプレイヤーと戦ったイリスが言うんだから説得力はある。だけど、油断したらどうなるのか、あの時のことを忘れたわけではない。
「だけど、危なくなったらすぐに逃げるからね」
「当たり前だろ。それが出来ないなら、端からこんな大胆なことやらないだろ」
「たしかにそうだね」
シリアルはハルの呆れたような言葉に笑いながら、【夜隠れのローブ】と【骨人種の頭】を装備する。
「じゃあ、2人ともお願い」
「ん」
「はい」
私の言葉を合図に、2人は一斉に魔法とスキルを使用する。
ハルによる、ステータス、常時スキル、発動スキル、3種類の5段階バフの重ねがけに加え、バフの効果を更にバフするスキル。攻撃を全て捨て、バフデバフに全てを注いだ異端プレイヤーによる全力のバフ。
イリスによる、5段階の常時回復魔法に加え、回復速度を上げるスキルと回復量を増やすスキルの重ねがけ。総合能力値16位のヒーラーが出来る最高の回復援護。
足りないMP分はMP回復のポーション使用により補い、そして完成する。
「2人ともお疲れ様」
「はぁはぁ.......本当お疲れだよ」
限界まで魔法とスキルを使った2人はその場に座り込んだ。
魔法名やスキル名を口にしないと発動しないタイプの物はその数が増えるだけ口にするのが大変だし、魔法やスキルは使用することで多少の疲労感を伴う。それがポーションを使ってMP限界を超えてまでの使用となると、多少が積み重なり疲労感はかなり大きくなる。
だから、2人が座り込むのも無理はない。
「あとはお願いしますね」
イリスは疲れを隠すように笑顔でそう言った。
「うん。任せて」
ワールドマップを開き、【ディクテオ】の場所を確認する。普通に行くと、ここからはかなり距離がある。でも、強化された今のステータスなら全力で走ればすぐに着く。
「じゃあ、行ってくるね」
「はい」
「おー」
こうして、私は2人に見送られて飛び出した。
一人のプレイヤー、デスリアルとして。
◇◆◇◆◇
【ディクテオ】内にいるプレイヤーを殲滅した。
ダンジョンに入る前と比べて、私の総キル数は21増えている。ここから私はダンジョン近くにいるプレイヤーを79人キルする必要がある。まぁ、今のステータスなら79人ぐらい見つけてキルするのはわけない話だ。
そんなことを考えながら、ダンジョンの外に出た。
それと同時のことだ。
巨大なトラバサミが足元に現れると、それは私のいる場所目掛けて噛み付いてきた。
反応が遅れながらもそれを間一髪で躱し、地に足を着けると、次の瞬間、四方八方から魔法が飛び込んできた。
それらは1プレイヤーに放つ規模ではなく、私は半分を避けることが出来たものの、もう半分を体に食らった。
一瞬で体力が持って行かれそうになるも、増えたHPで持ちこたえ、ダメージを負った瞬間発動する常時回復で猛攻を受けきった。
受けきり、土埃が収まり、目の前に見えたもの。それは、本来キルする予定だった79人を大きく超えるであろうプレイヤーの大軍だった。
連日の出没で、探知出来ない潜伏スキルを持っていることはバレたんだろう。バレたから、ダンジョン外で上を通った瞬間発動するトラップを張って待ち構え、トラップが発動した瞬間を狙って総攻撃を仕掛けてきたんだろう。いい対策だと思う。
私は【神隠し】を解除した。
姿を見せた瞬間、目の前にいたプレイヤー達の顔色が変わる。顔を歪ます者、警戒を強める者、勝利を確信してか余裕の表情を浮かべる者。
この表情が変わる瞬間が見られるなら、リスクを背負ってでも【神隠し】を解く価値はある。
そろそろ向こうも攻撃を再開してくるだろう。
【神隠し】を再び使用する。
今もし自分の顔が見られるなら見てみたい。現実では絶対に見ることの出来ない、とてもいい表情が見られるから。
募集活動は続きます。




