クラン入隊(仮)
SHRが終わり、放課後となった。今日はいつもより一日がすごく短く感じた。
いつもは周りの様子を常に伺いながら完璧美少女を演じ続けているため、相当なストレスがたまる。だけど、今日一日は周りも気にせず休みの時間の度に春の席まで行って春と話していた。春は嫌そうな態度を取りながらも、ちゃんと話を聞いてくれていて、とても楽しい時間だった。だから、一日が短く感じたんだろう。
そして、放課後になってもやることは同じだ。
「春ちゃん。一緒に帰ろう!」
荷物をまとめ、すぐに春の元に向かう。
「いい加減にしろよ!」
「はいはい、分かったから行こ?」
ウザそうな顔で私を追い返そうとする春の手を引っ張って連れていく。
これまでの春でも私が誘えば断っていたと思う。バカにするように煽るように断っていただろう。それに私がムカついていた。
けど、それは全て春が背伸びした姿だった。周りの評価こそ自分の評価であり、それが自分の価値だと考えた結果、たどり着いたのがあの姿だった。そして、今はそれを捨て偽りのないありのままの姿で生きている。
だから、同じ断るというのでも全然違う。今の春はウザそうに振舞っているものの、嬉しそうなのを隠しきれていない。
「あ、理花ちゃんも一緒に帰ろ。確か、 帰り道春ちゃんと途中まで一緒だよね?」
春の手を引きながら、帰ろうとする理花ちゃんを呼び止める。
「え.......」
「それともなんか用事あるかな?」
「あ、いえ、大丈夫です! 帰りましょう!」
◆◇◆◇◆
「春ちゃんはポイントをどうやって振り分けてるの? プレイスタイルが1 VS 1の戦闘を意識してない感じだからすごく気になるんだけど」
「あ、それは私も気になります」
「そんなの別にいいだろ。そもそもレベル上げに専念してこなかったし、貰ったポイント数もあんた達より絶対多くないから」
3人で帰っている内にいつの間にか理花ちゃんも春と打ち解けて仲良くしている。みんなBIOが好きなのは一緒だから共通の話題として盛り上がれるからだと思う。
「あ、そう言えば春ちゃん、動画投稿者辞めるって言ってたけどあそこまでする必要あったかな?」
質問が質問だし、タイミングを伺って今日一日ずっと聞けなかったことを聞いた。
「あー、まぁやりたいこともあったし、そうするとどうしても動画編集とか生配信とかしてたら時間無くなるからな」
「やりたいこと.......ですか?」
「まぁ、それも楽しくなかったと言ったら嘘になるんだろうけど、動画投稿者ハルを続けてたらBIOでの振る舞いとか立ち回りをどうしても制限されるからな。自由にやるには辞めるのが一番だったんだよ」
春が話を逸らした気がする。すると、春のやりたい事は私たちに聞かれたくない、もしくは聞かれたら恥ずかしいようなこと?
「そのやりたいことって、私たちのクランに入って一緒にBIOをやりたいとか?」
「.......はぁ? そんなわけないだろ」
あ、これそうなやつだ。口では否定していても本心は全て顔に出てしまっている。
「では茨木さんは私達のクランには入れないってことでしょうか? 私は茨木さんにも入って欲しかったんですけど、やりたいことを見つけた茨木さんに強要するのもどうかと思いますし.......」
理花ちゃんが春がクランに入ることを嫌がっているとして話を始めてから、明らかに春が慌て始めた。
春の感情の裏返しを理花ちゃんが正直に受け止めることでこの図が成り立っていた。
これはこれで見ていて楽しいけど、いつまでもすれ違いのままでは話が先に進まない。
「じゃあ、春ちゃん。一回私たちとBIOでやってみて、それで合えば春ちゃんも入るってことでどうかな?」
「まぁ、そこまで言うならいいけど」
助け舟を出しただけのことはあり、春はあっさりと私の提案を受け入れてくれた。
さっき話は流れちゃったけど、実際に春のポイントの振り方には気になるところがある。春はああ言ってたけど、私かそれに近いぐらいのレベルはあると思う。
だから不思議で、暴れる春を抑えた時は片手で充分抑えられたし、AGI低下を狙ってきたものの直接攻撃や魔法攻撃をするする素振りは一切見せなかった。もしかしたら、私が思っている以上に春のポイントの振り方が普通のプレイヤーと違うのかもしれない。
「あの、でしたら今日から茨木さんも早速私たちとしますか?」
「まぁ別に大丈夫だけど、何時から?」
「私は何時からでも構いませんよ。葵ちゃんはどうでしょうか?」
「うーん.......」
予習と復習を終わらせて、BIOが終わってすぐ寝られるように他のことを終わらせるとしたら.......
「22時くらいかな?」
「分かりました。では、22時に。場所はシボラの街でしたら、昨日の今日で目立つと思いますし.......チュートリアルの村とかでしたら私たちを知っている人は少ないと思いますけど.......どうでしょう?」
「大丈夫」
「私もそれでいいよ。じゃあ、22時にチュートリアルの村のリスポーン地点周辺に集合でいいかな?」
「はい! では、後で」
「うん。春ちゃんも後でね」
そして、2人はそれぞれの自宅方面に帰っていった。私はつい話に夢中になって自分の通学路とは離れた場所まで来ていたみたいで、遠回りをしながら自分の家に帰った。
次回BIOサイドです。




