2人目のフレンド
第3話「初ログイン」にて、職業の説明部分における最終行「最大で三系統の職業を取得できる」を原則として追加しました。なお、これまでのストーリーや設定の変更はありません。
んんん? 目の前にいるのは上位ランカーのイリス。けど、こんなことを私に聞いてくるのは.........一人しかいない。
「もしかして.........理花ちゃん?」
「やっぱり葵ちゃんですか! .........あ、ここでリアルの名前を出すのはマナー違反でした.........すみません」
ええ.........そんなマナーがあったんだ。まあ、確かに身バレとかする可能性を考えたら、そうなのかもだけど。
「私の方こそごめんね。えーっと、イリス.........でいいかな?」
「え! 私の名前をご存知なんですか!?」
「うん」
理花ちゃんが驚いたような反応をする。
でも、公式大会に出てるような人をBIOプレイヤーが知らない方がおかしいと思う。
「私は、シリアル。普通にシリアルって呼んでくれて大丈夫だからね」
「わ、分かりました! シリアルさん」
いや、シリアルって.........まぁ、いっか。
「じゃあさっそくだけどフレンド登録.........と、その前に」
葵は周りを見回す。
いつの間にか結構な人が周りに集まってきていた。近寄り難い雰囲気を出す超有名上位ランカーが一人と楽しそうに話しているのだ。その相手が誰なのか、どういった人なのか、そんな興味が湧くのはおかしな話ではない。
でも、そうなると、話している内容も筒抜けになる。
「あ.........でしたら、人目のないところへ移動しましょうか」
理花ちゃんも察してくれたみたい。
「うん。じゃあ向こうに行こっか」
◇◆◇◆◇
「ここなら大丈夫かな?」
「そうですね。モンスターもこの辺だと少ないですし」
シボラから少し歩いたところにある森。チュートリアルの村付近にある森よりも小さな森だけど、人は圧倒的にこっちの方が少ない。
もともと、シボラに訪れるような人はすぐ近くにある地下ダンジョンにいる高レベルモンスターと、そのドロップ金目当てがほとんどである。
なので、こういったシボラ付近でモンスターが出てくるような場所に人はあまり来ない。
「念の為.........スキル【索敵】」
近くに人の反応は.........ないみたい。
「あ、ありがとうございます」
「ううん。それより、フレンド登録しよっか」
「はい!」
お互いの了承により目の前に現れるフレンド登録の文字。それをタップする。
これで、フレンド2人目。んーと、理花ちゃんのプロフィールは.........名前と職業の3つが公開、他の誕生日みたいな初期設定とかステータスの詳しいことは隠してるみたい。
「イリスは.........イリス?」
お互いにフレンド登録を行ったことはプロフィールが見れることから分かる。なら、なんで固まってるの? 顔がちょっと青いし。なんかこう.........見てはいけないものは見たみたいな.........あっ。
よく考えたらこの光景は2回目だ。
「.........あの、あお.........ではなくてシリアルさん。えっと.........その.........」
あー完全に気まずい雰囲気になっちゃった。先に言っとくべきだったのかな?
葵は【骨人種の頭】と黒のローブを装備した。
「あの時いたイリスなら分かるかな? 私はシリアル。ネットではDeathRealって呼ばれてるちょっと有名なPKプレイヤーなんだ」
不本意だけど。
イリスの反応は分かりにくかった。沈黙するのは、驚きからかあるいは軽蔑からか私には分からない。
フレンド登録を行えばプロフィールカードも見ることが出来る。プロフィールカードは自由に情報を隠すことが出来るけど、唯一隠すことが出来ないものがある。
私のネームカラーは真っ赤に染まっていた。
「そう.........だったんですか」
「.........どう思った?」
「どう.........驚きはしました。けど、PKもMMOにおける醍醐味の一つだと思います。だから、別にシリアルさんがデスリアルさんで多くの人をキルしていても何も思いません」
「そっかぁ.........良かったぁ」
秘密を知ったのが理花ちゃんで。
「それでもゲームが始まって1ヶ月で赤ネーム.........300回もPKするなんて驚きました」
「そんなことを言うならイリスこそ、学校に通いながら結構な人口数のこのゲームで上位ランカーにまでなるって相当凄いと思うよ」
「いやそんなこと.........学校にいる時以外はほとんどログインしていますし.........」
それでも、このゲームで総合能力値.........ステータスや総ダメージ量、総回復量、総デバフ数、モンスターキル数なんかで測定された数値が世界で18位ってのは、他の全てを捨ててBIOをずっとやってるゲーマーを抑えて学生が取れるような順位じゃないと思う。
「イリスはパーティを組んだりしてやってたりするの?」
「ええっと.........2、3回くらい、です。こんな性格なので、どんな人と組んでも上手くて.........」
「ええ!? じゃあ、ほとんどソロでその順位ってこと?」
「.........はい」
多分、他の人がしないような変わった何かをしているのだろう。でなければ、ソロでここまでの順位という説明がつかない。
「私.........最初シリアルさんを見た時は、エンジョイ勢なのかなって思っていました」
「まぁ、PKもレベル上げもしない時くらいはお洒落したいしね」
ついさっきまでは白のざっくりニットにデニムという鎧とかの戦闘着を普段から着込む人の多いゲームの世界では割と珍しい格好をしていた。
このゲームはイリスみたいに普段から戦闘着を着る人が多いせいで、服屋などの普段着におけるファッションシステムがほとんど機能していない。
「でも.........シリアルさんがデスリアルさんなら、PK数もそうですし、私と戦う予定でした第8位のアルトさんを軽々と倒すくらいの実力者ってことですよね?」
「うん。まぁ.........」
「もしかしたらなんですけど、シリアルさんはトーナメントにあえて入らなかっただけで、本当は私よりも総合能力値が上ではないでしょうか?」
「いや、そんなことないよ。私は上位ランカーどころか、100位以内にも入ってないよ」
「ならどうしてそんなに強いんですか?」
うーん。言うべきなのかな? 本当はあまり言いたくなかったんだけど.........でも、イリスは私のこと信用してくれてるみたいだし.........
「あ、すみません! こうあれこれと尋ねるのは失礼ですよね! 気になってしまってつい.........すみませんっ!」
イリスは頭を何度も下げて謝る。
謝り癖があるのはゲームでも同じなんだ。
「ねぇイリス。ちょっとダンジョンに行ってみない?」
「ダンジョン.........ですか?」
「うん。これからパーティを組んだりするなら、お互いの力をある程度把握しておくべきかなって思って。もちろん、見せたくないものがあったら見せなくていいよ」
「え、行きます! ぜひ、お願いします!」
説明はその時にでもしようかな?
まぁ、私もイリスがソロなのにここまで順位が高い理由を知りたかったし、良い機会.........だよね?
こうしてシリアルとイリスはシボラ付近にある地下ダンジョン【エルドラ】へと向かった。




