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黒い聖母《ブラックマリア》ー婚約破棄令嬢、魔の森にて未来の英雄達の母となるー

作者: 蜜柑

反響がよければ続きを書こうと思います。



ガッタゴット!  ガッタゴット!




整備されてない土が剥き出しの道を一人の女性を乗せた馬車が走る。


その馬車はとても質素なものであるが、乗客である女性はそんな馬車に似合わずどこか気品のある雰囲気を出していた。

それもそのはずであろう、彼女はつい三日前までとある国の公爵令嬢しかも王太子の婚約者であったのだから。



そんな彼女が何故こんなボロい・・・失敬、質素な馬車に乗っているかというと   


「婚約破棄、そして修道院行きからの魔の森教会配属かー・・・」


彼女は学園で元婚約者である王太子が仲良くしている特待生の孤児院出身の平民の娘を虐めたという理由でこのような目に遭っている。

実際は王太子がその平民の娘と浮気しており、その娘を自身の正妻とするため王太子がでっち上げた嘘である。

しかも普通ならそんな娘の冤罪を晴らすはずの彼女の両親、現公爵夫婦は彼女に対し()()()激怒しそのまま廃摘、そして件の平民の娘を養子にし、王太子の婚約者にした。


そして彼女は両親から修道院行きを告げられ、そしてその修道院から魔の森教会行きを告げられた。




ここまで二日、そして現在彼女は一日かけて魔の森教会までの道を馬車で進んでいた。



はっきり言ってことが進むのが早すぎる。


しかしそれを知っているのか、彼女は


「いろいろむちゃくちゃでしょあのバカ共・・・」


呆れを通り越して嘆いていた。




しかしそんな彼女の嘆きを知らずににわかに馬車の外が騒がしくなる。いつの間にか馬車も止まっており、彼女はそっと窓の外を覗いてみた。





覗いてみたそこには馬車を取り囲むようにして立つ男達、しかもどう見ても山賊、盗賊と言わんばかりの服装で彼女が乗る馬車を余裕の笑みで見つめている。





「こんなところに盗賊・・・はあー、・・・ここまでしますか。」


彼女は突然現れた盗賊達が誰かに雇われた者達だと気付いた。

なぜならこの場所は魔の森に最も近い、盗賊どころか侵略国家の兵士達ですらここは通らないし何より近寄らない。

そんな場所に不自然にいる盗賊達に彼女は


「私、ここまでされるようなことしましたっけ?」


自問自答をしていた。

魔の森行きというだけで最早死刑宣告と同等なのに、それなのに誰が雇ったのか盗賊まで雇い確実に自分を殺しに来る者達の心情に一種回って感心が出てきた。


「まっ、大方誰が雇ったのか予想がつきますがこの状況、()()()()なら絶望していたでしょうね」


彼女はそう言い馬車のドアの取っ手に手を当て外へと出て行った。

そして同時に盗賊達から下卑た笑みが彼女の目に見え始めた。


















▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲




ヒューーーーーーーーー!




「んんー、いい風ですね。そう思いませんか?」


私はそういって自身の頬を撫でる風の気持ちよさを私は近くに座っている盗賊に言った。


「ひい! い、いやだ! 助けて!」


しかし盗賊から返ってきたのはそんな情けない返事


「あらあら、何ですか?まるでこれから暴漢に襲われる少女のような顔をして?」


そういって私は自身の手に持っている赤黒く変色したボロボロのロングソードを盗賊の目の前に突きつける。

盗賊は更に「ひい?!」と情けない声を出してあとさずろうとするが何かに躓きそれ以上下がれなかった。

彼が躓いたものは赤い液体にまみれた何か、いや正確には切り刻まれた何か。


「あなたもお仲間と一緒のところに行きます?」

「や、やめて、お願い、殺さないで」


そんな涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔を私の前で赤い水たまりに顔を突っ込みながらも懇願する盗賊。


もう分かるであろうが、私を取り囲んでいた盗賊達は目の前のこの一人で最後、他は全て様々な外傷でその命を散らしていた。


そしてこの地獄絵図を画いていたのは私である。




そんな私の目の前で情けない姿で土下座する盗賊に一つため息を吐いた後。


「はあ、殺しませんよ。あなたにはやってもらわなければならないことがあるのですから」

「ふえ?」


私がそう言うと盗賊はゆっくりと顔を上げその涙と鼻水と血で汚れた汚い顔で私をみた。




スッ  パサッ


私はそんな盗賊に自分の髪を一房切り取り


「あなた達を雇った者達に私を殺したと報告しなさい、この髪を証拠として。どうせ私を殺すよう言われてたんでしょ?」


その言葉に盗賊はビクッと震えた後何かを迷うようにその目をせわしなく動かしゆっくりと頷いた。


「ふふふ、やっぱりね・・・行きなさい。 私の気が変わらないうちに」


最後の言葉に盗賊は一目散に私が来た道を逆走し、あっという間に見えなくなった。  人間、死の危険を感じたらあそこまで力が出るのだと少し感心してしまった。






「さてと、それじゃあ・・・行きますか。」


私はそういって魔の森に向けて歩き出した。乗っていた馬車はいつの間にか逃げており歩くしかなかった。






その道中


「そういえば、私は死んだことになったから今ここにいる私はただの名も無き人なのよね」


そんな独り言を呟き、私は新たな人生を送る為に自身に新しい名を与えた。


「んー・・・・・・決めた! 新たな私、あなたの名前はマリア、マリア・イヴ、それが私の新たな人生の名前、私の()()()()()の知識にある大いなる母二人の名ををとった名前よ」


そう言って彼女は穏やかな笑みを浮かべながら魔の森までの道を歩いて行く。

先程とはまるで別人のように。













マリア・イヴ


彼女の前の人物は王太子から婚約破棄を宣言された瞬間あることを思い出した。

だがしかし、それは前世の記憶とかではなく、様々な世界の知識そして技術、そして武術や魔法それも何千何百人もの人間が一生をかけてやり遂げるような様々な偉業が彼女の中に一気に入り込み、まるでパズルのように瞬時に彼女の中にはまった。


その瞬間彼女の人格は今の「マリア・イヴ」へと変容してしまった。そのため彼女は王太子の自身を睨みつける冷たい瞳も、家族から受けた罵声も最早どうでもいいものへと変わってしまった。

なので彼女は修道院から魔の森教会行きを言い渡されたとき特に絶望することなく逆に安全な修道院ではなく危険な魔の森に行けるということに彼女の中には何かある種の期待のようなものが生まれた。








▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲


十年後   魔の森



魔の森とは人類が立ち入ることができない世界の屈指の未開拓領域である。ある国の学者はこの魔の森に対してこう書いていた。

【そこは魔獣達の楽園であり人類にとってはまさしく地獄である。人の想像を超えた生き物たちが日々進化し生きる予想外の生きた地獄。他の未開拓領域とは一線を画すこの森はくるものを拒まないがそのかわり生きて出ることもできない。入るものは死を覚悟しその命を捨てていけ。】


そう魔の森とは人が生きていけない世界である










ドゴーン!!





・・・・・・はずだった。



魔の森の比較的浅瀬に近い場所で、とある者達による命のやりとりが行われていた。


片方は巨大な顎を持つ翼を持たない体長十メートル近い巨竜、「蛮竜」

もう片方は黒い服を着た身長百八十程ありそうな長身の女性であった。しかし彼女の両手には彼女と同じく らいの長さの片刃の大剣が握られており彼女はそれを余裕そうな表情で左右に広げるように構えていた。



そして次の瞬間




ズパンッ!! 




一瞬にして彼女の握る大剣が煌めき目の前にいた蛮竜の首が飛んでいった。しかし首を飛ばされた蛮竜は持ち前の生命力で未だ動き、自身の首を跳ね飛ばした目の前の人間をその巨体で潰そうと暴れ出す前に




ズダダダダダダダダ!!!!




まるで豪雨のように降ってきた大量の槍によって蛮竜の体は地面へと縫い付けられ、そして




ズパパパパパン!!




一瞬にして蛮竜は前脚,後ろ脚,尻尾を体から切り離され同時に鱗,内蔵を取り除き物言わぬ素材へと姿を変えた。


「ふふふ、お肉ゲット♪ これで今夜のご飯は決まりね♪」


そういっていつの間にか蛮竜の肉の山を見て微笑む女性。



彼女は十年前、王太子に婚約破棄をされこの魔の森にたつ教会に配属された少女 マリア・イヴである。

当時はまだ幼さが残る彼女ではあったが、十年経った今はその幼さは無くなり女性らしい体つきとどこか妖艶さを感じる雰囲気に成長していた。


そんな彼女は今この魔の森にてあることをしながら暮らしている。

それは


「子供達も喜ぶわー、どんなお料理にしましょう?」


彼女のしていることは孤児院経営

彼女はこの魔の森にて孤児院を経営していた。


彼女は大陸中の国を回り劣悪な環境で死にかけている子供達や、大人の都合や欲でひどい目や命の危機に瀕している子供を救い自身の住む魔の森で育てていた。


何故魔の森にて孤児院を経営しているかというと。

魔の森は天然の要塞、一国の軍隊が攻め込んでも逆に返り討ちに遭うほどの脅威を持っている。

そのため彼女は、彼女の育てる子供達が安全に生きるために最初の一年で魔の森を秘密裏に征服しその中で最も強い魔獣四匹を自身の従魔としこの魔の森に立つ孤児院を守っている。


まあ、彼女の今の力なら国の一つや二つを簡単に墜とせるんだけど。


そんな彼女は先程先程首を落とした蛮竜を拘束するため放った槍を回収していた。




地面に深く刺さっているその槍は彼女が手を伸ばし引き抜けば


スポッ!


簡単に地面から抜け、その槍はそのまま


スーー・・・


彼女の袖の中にまるで吸い込まれるように入っていった。

そんな不思議光景をさせながら次々と槍をしまっていくマリア。

そして全ての槍をしまったあと、今度は袖から大きな風呂敷を取り出しその中に先程切り分けた蛮竜の体をいれて風呂敷の口を縛り上げそのまま持ち上げて孤児院に向けて歩き出した。




しばらく歩くと目の前に大きな壁が見え始める。マリアはその壁が見えた瞬間壁の上にいた見張り番の孤児院の子供達に気づき手を振る。そして満足そうな笑顔を浮かべると気持ちちょっと(・・・・)駆け出した。


ここまで聞けば普通の子供好きの女性に見えるだろう。しかし正確に言えば彼女が壁を視認したのは距離にして10キロほど。そしてその上にいる子供などもはやありより小さいというのに彼女はそれに気づき手を振っていた。そしてそんな彼女の駆け足は軽く蹴っただけで数十メートル先に移動している。 ぶっちゃけ化け物である。



そんな化けも・・・・・・・ごめんなさい。すみません偉大でステキなマリア様はものの数秒で壁のそばまで来ました。 だからその恐ろしい目と空間すら切り裂きそうな剣をしまってくださいマリア様


「なんだか人を化け物呼ばわりする不敬な輩の気配がしましたが・・・・今回は許してあげましょう。」


ありがとうございます マリア様!!


「マリア様はやめなさい。今の私はマリア、マリア・イヴなのだから!!」






それは後の世、数多くの英雄達の母として歴史に名を残す最強の聖母 マリア・イヴの伝説の始まりであった












マリア・イヴ


この物語の主人公。自身の歴代の魂が極めた技術、魔術、武術、知識が何故か一気に思い出されしかもその歴代達がどれも別の世界を救ったり発展させたりとしてきた最早チートを超えたチート魂を持つ最強生物。

なのにいつのまにか国を追い出され生還不能な魔の森に捨てられたが本人は窮屈な貴族暮らし、というか自国のクソ貴族達が嫌いなので半ば心の中で喜んで魔の森に捨てられた。

現在いろんな国に日帰りで遊びに行っては貧しく死にかけの子供達を拾って帰ってきては自身の作った魔の森内の孤児院育てるということを趣味にしている。ちなみに孤児院を卒業していった者達はその全てが後の英雄と呼ばれる事となり《黄金の人類史》と後世で伝えられている。その過程で出会ったとある帝国の身分を隠した権力者に本気で惚れられ最終的には・・・



王子


マリアを魔の森に捨て盗賊をけしかけた張本人。盗賊の一人がマリアの髪の毛を持って帰ってきた事でマリアが死んだと思い喜んだ。その後どうやってかかの平民の女を王妃にして順風満帆な人生を送れるかと思いきや彼の代で大災害などの不幸が立て続けに起こり国が衰退していった。トドメにマリアの教え子達にマリアが生きている事を聞きマリアが許しているのだったら国を立て直すのを手伝うというのをどこで聞き間違えたのかマリアを手にすれば世界に散らばる英雄達が自国に集い国が昔よりも繁栄すると思いマリアを王城に呼び寄せ口説くがバッサリと振られまたマリアの教え子達の怒りも買い滅んだ。なんともあっけないバカ王子である



平民の女


転生者。転生前から金とイケメンにしか目がいってないクズ女、前世の死因も人の恨みを買って殺された。

上記の理由で一国の王子で権力もある王子に近づきそのまま王妃にまで上り詰め豪勢な生活を送っていたが前世同様色んな人から恨みを買い最終的には国が滅んでも生き延びたがその際身体中に大怪我を負い人前に出られなくなったのでどこかの森の奥に引きこもりひっそりと生きている。

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[一言] 連載希望です… バカ二人がどんな結末になった とか 子供達の状況 とかを知りたいですね
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