神託祭前日①
俺こと天野 勇星は苛立っていた。教室のド真ん中で醜いイジメが起こっていた。
遠藤「おい激臭!今日もすげぇ匂いだな笑。少しは周りに気を使って体洗ったらどうなの?笑」
杉田「おいおい、やめてやれよ遠藤。こいつの家は貧乏すぎて風呂に入ることさえ出来ないらしいからな笑」
田中「なんなら俺ん家の風呂を貸してやってもいいぜ?俺の家を臭くしないって約束してくれるならなぁ!笑」
いつもの光景だ。この3人はいつも川崎便太を体臭を理由にいじめている。(確かに臭いのだが)
日常とはいえさすがに目障りだ。俺が、やめろ!と言いたいところだが…
小学生の時に正義感でイジメっ子を咎めたことがあり、俺が逆にイジメられるという悲惨な経験をしたことがあるのだ。
いじめを止めるなんて俺には出来なかった。
明智「やめないか!そんなみっともないことは!彼が嫌がっているだろう?」
こいつだ。この明智ってやつはこのクラスの学級委員長で正義感溢れ、勇気のあるやつだ。
人気もあるし先生からの信頼も厚い。
遠藤「…チッ。行くぞ」
そう言って遠藤たちは去っていった。
明智「あぁ!怪我しているじゃないか!さぁ保健室へ行こう!」
そう言って2人も去っていった。
清崎「ほんっと。朝からやめて欲しいよねー。せっかく明日は神託祭でウキウキしてたのに…ね?勇星。」
清崎 契子。俺の幼なじみだ。保育園から小中とずっと同じクラス。
いわゆる腐れ縁ってやつだが、俺達は去年中学を卒業する時にお互いの気持ちを伝え合い恋人になった。
基本優しくて良い奴だ。長くて艶やかな茶髪で、目が大きい。俺には勿体ないほどの美人顔だ。
未だに何故俺なんかを好きになってくれたか分からない。運が良かったのかもしれない。
契子が言っている通り、明日は神託祭だ。今日は1時間目から1日かけて担任の藤堂先生が神託祭についての特別授業を行うらしい。
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先生「えー今日は、前から言っているように神託祭についての授業を行っていこうと思う。
その前に、神託祭を学ぶに当たって知らなかったら話にならない「Another human初襲撃物語」について知らないものは居ないと思うが一応超簡単に話しておこうか。
【西暦2030年。その侵略者達は地球にやって来てこう宣言した。
『我々はAnother human。主神の加護を受けし《もうひとつの人類》である。主神のご意思のもとに、我々は貴様ら人間を滅ぼす。覚悟するがいい!』
その侵略者の強さは圧倒的だった。人間の作った兵器は全く通用しない。銃はもちろん、爆弾なんかも無意味であった。死者は500万人を超え、人類の全ては死を覚悟した。
その時。眩く、暖かい光と共に12人の人間が降臨し、侵略者達にこう言い放った。
「我々は12柱の神々の権能を与えられし者、《十二神徒》。人類存続のために神の加護を駆使し貴様らAnother humanを滅ぼすものである!」
降臨した12人の人間は、その絶対的な神の力によって侵略者達を壊滅させた。】
これが物語のあらすじだな。
みんなも知っている通り、不定期ではあるが今もAnother humanは地球への侵略をしにやってくる。
その度にその時代の神徒達が我々人類の危機を救ってくださるのだ。
では、この神徒達は、いつ、どうやって神々の加護を受けているのか。それは毎年行われる神託祭だ。
神々は、その時代に生きる16歳以上の人間の中から最も自分の権能を扱える人間に対して、加護を与える。
つまり、16歳になると神託を受ける権利が貰えるってわけだな。
この権能を扱うのが上手いってのは、どうも才能によるものらしい。つまり、16歳で加護を受けなかったものは、一生加護を受けることはないってことだ。
明日は君たちが16歳になって初めての神託祭だ。明日、この中から神の神託を受けるものが現れるかもしれんってことだ」
ここでチャイムが鳴った。しかし、今日はチャイムなど関係ない。お昼ご飯の時間以外は休み無しで神託祭の話が続くのだ…
【Another human初襲撃物語】は番外編で話を書こうと思ってます。