表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/41

第36話 尋問するJ

 


 ナインに呼ばれて向かった先は、街外れにある廃屋であった。


 ジュリーは先に到着しており、俺が来るのを入り口で待っていた。


「ん、ようやく来た」

「ようやくってな・・・これでも俺は、呼ばれてすぐに来たんだぞ?」


「・・・っていうか、あんなの倒すのと事後処理に時間かけすぎ」

「い、いや、それは俺にも理由があってだな・・・」


「うるさい、言い訳しない」

「はい、すみません・・・」


 って、あれ?

 なんで何も悪くない俺が謝ってんだ!?


 どうやら、シャロンの護衛を任せてジュリーをほったらかしにしていた事が、ご機嫌斜めの理由らしい。


 とりあえず、俺が素直に謝った事でジュリーの機嫌は直り、中でナインが待っているからと言いながら扉を開けて誘導してくれた。


 この廃屋には地下室があり、そこの扉を閉めると空気穴以外は完全な密閉空間との事。

 だから機密情報も外には漏れないだろうと配慮したらしい。


 とはいえ、そもそもそこまで心配をしなくとも、“トランプ”(俺達)が情報を外に漏らすようなヘマはしない。


 現に地下室へ降りていくと、ナインにより気配隠蔽・遮音結界が地下室内だけに張られているのがわかる。

 もちろんこれは俺達だから分かることであり、普通の者なら結界が張ってある事に気付く事はないだろう。


 そして人を拒む結界ではないため、俺とジュリーは難なく結界の中に入り地下室の扉を閉める。


 ナインが人は遮断しない結界を張った理由としては、まず当前の事だが俺とジュリーを招き入れる為。

 それと、俺達3人もいれば外の気配を見落とすことなど有り得ない。


 だから誰かが近づいてくれば、すぐに対処出来ると考えての事である。


 地下室には俺達を呼んだナイン本人の他にもう1人、椅子に座っている男がいた。


 いや、座っているというよりは座らされていると言うのが正しい。


 なぜならその男は、椅子にロープで縛られて動けなくされており、更には目隠しと猿ぐつわをかませられているからだ。


 そう。

 ナインが俺達を呼んだ用件というのが、この男の存在である。


「よう、遅かったな」

「おいおい、ナインまでそれかよ・・・」


「冗談だ。それよりも、俺はこいつを捕えただけで何も聞き出してはいないからな」

「ああ、了解だ」


 ナインが捕えたこの男は、今回の悪魔族(デーモン)を出現させた実行犯だ。


 本来ならナインが敵を捕えた時は即座に情報を抜き取るのだが、今回は任務ではない。

 ただ、俺が関わっているために手助けをしてくれているに過ぎない。


 更に言えば、今回の事件はナインにとってはどうでもいい事である。


 だから無理に情報を抜き出す必要はないし、その役目は俺に任せた方がいいと考えてくれての事だ。


 俺は猿ぐつわを噛ませられながらも何かを喋ろうとモゴモゴ言っている男に近寄る。


 そして、目隠しと猿ぐつわを乱暴に取り外す。


「い、いてえだろが!お、俺を誰だと思ってやがる!こ、こんな事してタダで済むと・・・」


 せっかく目隠しと猿ぐつわを取ってやったというのに、怒り心頭のご様子。

 そんな男が相手でも、優しく丁寧に接するのが紳士(ジェントルマン)だろう。


 という事で紳士(ジェントルマン)である俺は、男の話を遮り優しく(・・・・・)話しかける。


「あ?お前が誰かなんて知らねえよ。そもそも、そんなのはどうでもいい事だ!」

「ひぃっ!」


 よし、紳士らしく振る舞えたな。

 多少威圧を乗せたのはご愛敬。


 そのおかげで彼は俺の優しさに感激し、目に少しだけ涙を浮かべている。


 という冗談は置いておいて、俺の威圧に若干怯えているこの男。

 俺はどうでもいいと言ったが、こいつの素性はすでにナインが調べ上げている。


 相手から何も聞き出してはいないとはいえ、捕えた相手の事を調べないという中途半端な事をナインがするはずがないのだ。


 ナインから聞いた情報では、この男は裏社会でそれなりの権力を持つ者だと言う事である。

 既にその事はわかっているし、正直名前に関しては知る必要もない。


 だから、この男自身の口から本人の情報を聞き出す必要も意味もないため、どうでもいいと言ったのである。


 そして、男は怯えながらも口をひらく。


「い、一体、お、俺が何をしたっていうんだ!?」


 びびりながらも、何も話さないという姿勢を崩すつもりはないようだ。

 まあ、こういう輩が最初から素直に話すわけがないのは当前である。


「・・・そんな、ありきたりなセリフは求めてない。俺達はお前程度に無駄な時間を割いてやるほど暇じゃないんでね」


 俺は幾度となく聞いたセリフに溜息を吐く。

 そして、男の頭を掴むように手を乗せながら続きを話す。


「だから、単刀直入に聞く。・・・お前が悪魔族(デーモン)を召喚した張本人だな?」


 俺は再び多少の威圧を言葉に乗せて、その男に尋ねる。

 俺が頭に手を乗せた事と威圧した事によって、男は「ひぃっ!」と悲鳴をあげたあとに冷や汗を流しながら生唾をゴクンと飲んだ。


「な、何を言ってるのか、よ、よくわからんな・・・お、俺は善良な市民なんだぞ?そ、そんな事をするわけがないだろう」

「善良ねぇ・・・」


 何を持って善良とするのか・・・


 悪人からしてみれば、悪徳行為が善良・・・よい性質となる。

 ここでいう悪人とは、一般的なルールから逸脱する者である。


 従って悪人社会では自分達が正義であり、それを止めようとするものが悪なのである。


 俺自身に照らし合わせてみれば、“トランプ”が正義であり“トランプ”と敵対する者が悪となる。

 とは言っても、俺は正義だとか悪だとかこだわったりはしていないが。


 っと、まあそれは今回の件にはどうでもいい事なので、置いておくとしよう。


「それで、その善良な市民さんが張本人なのは間違いないようだが、どうやって悪魔族を召喚したんだ?」

「だ、だから、俺じゃないって、い、言ってるだろ!そ、それに、悪魔召喚には膨大な魔力と対価が必要なんだろ!?お、俺はそんな魔力ないし、な、なによりもピンピンしているだろが!」


 そう。

 こいつが言うとおり悪魔族を召喚するには、その術式に膨大な魔力を消費する。


 そして喚べたとしても、悪魔族は対価を前払いさせる。

 それは召喚者の身体の一部である事が多い。


 もちろん、絶対というわけではないので悪魔が納得するのであれば、召喚者以外の何かもしくは物でなくてもいい場合もある。


 こいつがピンピンしているのは、自分の物ではない何かを捧げたと言う事だ。


「確かにお前は、悪魔召喚するには魔力の絶対量が足りなすぎる」

「そ、そうだろう!?だ、だから・・・」


「ふむ、なるほど・・・相当な人数の奴隷を犠牲にしたのか」

「はっ!?な、なんで・・・お、俺は何も、い、言ってないだろが!?」


「しかし、お前が裏社会の権力者の1人とは言え、そんな数の奴隷の確保とそれを隠しながら秘密裏に召喚を行える場所を確保するには、お前1人では無理があるだろう」

「なっ!なぜ俺の事を・・・」


「そうか・・・やはり、お前を裏で糸を引いているものがいるな。しかも裏社会ではなく・・・表社会での大物か」

「なっ!!ちょ、ちょっと待て!お、俺は何もしてないし、裏で誰かと繋がっていたりしない!それよりも、俺は何も言ってないだろが!」


「あ!?・・・ああ、そうか。俺がお前の口から(・・・・・・)情報を聞き出そうとして話しかけていると思っていたのか」

「な、何!?ど、どういう・・・」


 男は何も語らず常に否定しているにも関わらず、それを無視して俺が次々と話していく内容に驚いていた。

 そして、男の言葉に反応した俺の言葉で更に驚き、固まってしまった。


「お前が素直に話すとは思っていない。だから、最初からお前の返事などあてにしていないって事だ」


 そう。

 俺はこの男の言葉を聞いて拾ったりはしているが、最初から会話(・・)をするつもりは一切無い。


 俺の質問に男が誤魔化す、もしくは口を閉ざす。

 それに対して、俺がさらに追求する。


 そんな事をするだけ時間の無駄である。


 そうなる事が最初からわかっているのであれば、手っ取り早い方法を取るのが道理というもの。


「考えても見ろ。何が嬉しくて、俺がお前の頭に手を乗せなきゃいけないんだ?お前の頭を撫でるためな訳がないだろう?・・・ジュリーにするならまだしも、おっさんの頭を撫でて喜ぶ趣味なんか持ち合わせてねえよ」


 と、俺が口にしたところで思った。


 ・・・あ!やばっ!


 と・・・


 何がやばいのか・・・

 それは俺の後方にいるジュリーの気配を感じればわかる。


 この男の前でジュリーの名前を出したから怒っている?


 いや、そんな事は何の問題にもなりはしないし、ジュリーも全く気にすることではない。

 そもそも、“トランプ”のメンバーの名前を出してはダメな場面で口にするほど、俺は迂闊ではない。


 では、何なのかというと・・・


 ジュリーは嬉しそうにしながら、何かを催促するような熱い眼差しを隠す事もなく俺の背中越しにぶつけているのだ。


 いや・・・隠すどころか、探知しなくても分かるほど・・・

 むしろ、気付よ?くらいあからさまに。


 これは、後でねだられることは間違いないな・・・

 それを拒否したら機嫌が悪くなることも間違いない・・・


 俺は早まった事を口にしてしまったなと溜息を吐きながらも、目の前の男に向かって話を続ける。


「俺がお前の頭に手を乗せているのは、魔法を使ってお前の脳に直接働きかけ記憶を抜き出すためなんだよ」

「な、なんだと!?そ、そんな事が出来るわけ・・・」


「お前が信じるかどうかはどうでもいい。俺がお前に話しかけていたのは、膨大な記憶を全て抜き取るのは無駄だから、俺が質問してお前がその部分を意識する事で、ピンポイントで記憶を抜き出していたんだ。ちなみに、今の話を聞いて嘘を考えた所で無駄だからな。なぜなら思考と記憶は別物であり、今言ったように俺が読んでいるのではなく思考ではなく記憶だ。記憶は嘘をつく事は出来ないからな」

「そ、そんなバカな事が・・・」


「だからお前の思考は元より、そもそもお前の言葉なんて真面目に聞く必要は最初から無いと言う事だ・・・ちなみに、この2人も別の手段でお前から正確な情報を抜き出す事が可能だ」

「・・・・・」


 俺の説明を聞いた男は、信じられないという表情と開いた口が塞がらない状態になっていた。


「俺達がお前のような奴から情報を引き出すなど、今回が初めての事じゃない。それこそ、お前の想像が及びもしないほどに経験しているんだよ」

「・・・そ、そいつはまだしも・・・お、お前達はまだガキだろう!?そ、そんなガキが、なぜそんな・・・」


 更に続けた俺の言葉で男は放心状態から抜け出すと、チラッとナインを見た後に俺とジュリーを見てそう言った。


 確かにナインは20代であり大人の風格はある。

 それに比べれば、俺とジュリーは幾分ガキ臭くみられるだろう。


 更に言えば隠密特化である“トランプ”のクラブは、情報収集の他に暗殺や尋問なども主な任務に含まれる。


 もちろん、クラブ以外も暗殺や尋問などをする事もあるが、やり方が荒いために総帥からはなるべく控えるように言われているのだ。


 っと、話が逸れたが・・・そういうわけでナインからは、普段から暗殺者らしい雰囲気も醸し出されている。

 ジュリーもクラブの一員ではあるが、何せ見た目が幼いためにパッと見では雰囲気は出ないのも仕方がない。


 ただし、ジュリーが本気で仕事に徹した場合は、この男もこんな口はきけなかっただろうけどな。


「なぜ?・・・それが俺達の・・・組織の任務では至極当然の事だからだ」


 とはいえ、任務の際に必ず尋問を行っているわけではない。

 もちろん、尋問をする必要のない依頼だって多々ある。


 ただ情報を収集する必要のある任務では、ある程度重要な人物が分かれば、そいつから直接情報を仕入れる方が早いのだ。


 だから、このような尋問をする機会が自然と増えるというわけだ。


「そ、組織だと!?」


 男は俺達が組織の一員だと言う事に驚きの声を上げた。

 とはいえ、俺達が何の組織に属しているかは分かっていないだろうけど。


 それ以上、男の疑問に付き合ってやる義理も義務もないため、俺は尋問の続きを再開する。


「それで、お前の裏から糸を引いているのは誰だ?」

「こ、こんなことが日常だなんて、お、お前達はどこの組織に属している!?」


 男は俺の質問には答えようとせず、自らの疑問をぶつけてくる。

 どうやら、なんとか自分の意識を逸らそうと頑張っているのだろう。


 しかし先程も言ったが、そんな事をしても無駄な抵抗である。


 俺の言葉を聞いてしまえば、脳から100%意識を逸らすことなど出来はしない。

 一瞬であろうとも、その事を脳裏に浮かべてしまう。


 その間に俺は記憶を探ることが出来る。


「・・・なるほど、エンフィルド家だな?」

「――!!」


 俺は男の記憶から抜き取った名前を告げる。

 すると、男は息を飲んだ。


「エンフィルドというと、この国の公爵だな。自己顕示欲が異常に強いため、公爵の座では満足できず大公爵の地位を常に狙っている。そしてその息子が・・・ジョーク、お前がいる学院の・・・」

「ああ、分かってる。エンフィルドというと・・・あいつだな」


 ナインはこの国の情報は、既にある程度調べ上げてくれているため、エンフィルド公爵について簡単に説明してくれる。


 そしてナインが言う息子には俺も心当たりがあった。


 ただ彼が親と共謀しているかどうか・今回の件に絡んでいるかどうかは定かではないし、そもそも親と同じ思考を持ち合わせているとも限らない。


 まあ、あの件に絡んでいるのは間違いなさそうだが。


 とりあえず、彼については様子見程度に警戒しておいて、何かをするつもりはない。


「・・・く、くそっ!ほ、本当に俺の記憶を読んでるのか!?・・・これじゃ、俺がゲロったのと同じじゃねえかよ!」


 男は悔しそうに下を向く。

 そんな男を無視してナインは俺に話しかけてくる。


「それで、どうするんだ?」

「今はまだ放置でいいだろう」


 俺達はこの国を守る任務に就いているわけではない。

 だから無理にエンフィルド家を潰す必要もない。


「しかし、分かっているとは思うが、奴らの狙いはおそらく・・・」

「ああ、だから目をつぶるのは今回までだ。これ以降も何かをしてくるつもりなら、それ相応の報いを受けてもらう」


 ナインの言おうとした、奴らの狙い。


 それは、間違いなく勇者達の失墜だろう。

 直接亡き者にするか、使い物にならなくするか。


 今回の悪魔騒ぎで、その線が確実となった。

 まだ勇者達の力が完全に開花していない今なら、中位悪魔が勇者達を殺せると思ったのだろう。


 更に言えば、勇者達は戦いのない世界から来ていることを知っている公爵であれば、惨状を見せることで勇者達の心を折って戦えなくしようとしたのだろう。

 そして、それすらも失敗した場合〈実際失敗したのだが〉の策が、あの住民の煽りだろうな。


 あの内の何人かは、エンフィルド公爵が仕込んだサクラだろう。


 勇者達の戦意を無くし、この国・はたまた世界を救う気がないと判断出来れば、勇者達を喚ぶために犠牲となった相当な人数の魔術師の事を挙げて責任問題へと発展できる。


 その矢面に立たされるのが、国王の次に権力を持ち国王からの命令とは言え最終決定を下した大公爵となるだろう。


 ただ、大公爵が格下げされたとしてもエンフィルド公爵が大公爵に上がれるとは限らない。


 しかし今回の騒動から考えると、おそらくエンフィルドは中位悪魔を倒せる隠し球を持っていたと考えられる。

 でなければ、聖騎士が出払っている上に勇者まで失敗したとなると、街を救う者がいなくなる。


 最悪、騎士団長が出張るかもしれないが、それは最後の要であるためにおいそれと出陣するわけにはいかないのだ。


 その前に隠し球を披露し、自分が勇者よりも・大公爵や他の公爵よりも役に立つことをアピールするつもりだったのだろう。


 悪魔も倒され、勇者の戦意もくじけなかった今となっては、その計画も水の泡だが。


 まあ、お偉いさん方の会議の中でせめてもの抵抗として、勇者のせいで被害が多いだとか何とかとワーワーわめき散らすかもしれないが、さすがに受け入れられないだろうな。


 その話はいいとして、エンフィルド家がマサキ達に仕掛けてきたのは2度目だ。


 1度目はケルベロスの時である。

 あれもエンフィルド家が関わっているのは間違いない。


 そして今回の悪魔騒動。


 俺が許すのは2度目まで。


 これで終れば目をつぶってやるが、もし3度目があれば容赦はしない。


 マサキ達に実害が有る無しなど関係無くだ。


「もう、俺は終わりだ・・・」


 俺とナインが話している間、項垂れていた男がそう呟いた。


 こいつ、自分に先があると思っていたのか?


 俺達に捕まった時点で逃げ出すことはおろか、そいつの人生(・・)など尽きたも同然だというのに。


「な、なあ!も、もう用はすんだんだろ!?だったら、逃がしてくれとは言わないから、今すぐ俺を殺してくれ!」


 最初は逃がしてくれることを懇願するつもりだったのだろう。


 しかし、俺達に完全に情報が漏れたとばれた今となっては、俺達から逃げてもエンフィルド家に捕まって拷問を受ける事になるのだろう。


 その拷問を受けるくらいならと考えたのだろうが・・・


 俺はそんな男に優しく話しかける。


「ああ、安心しろ」

「えっ!?もしかして、助けてくれるのか!?」


 俺の言葉で男は一瞬顔をパアーっと明るくさせた。

 しかし、俺の次の言葉ですぐにその顔も沈む事になる。


「俺が知りたい情報は得たが、お前からはまだ色々な情報を得られるだろう。だからあとはナインに任せる。ナインは泣いた子を更に泣かせ、それを物理的に黙らせるほど優しい奴だ。その後の処遇も優しいナイン次第だ」


 男の顔からは完全に血の気が引いていた。

 おそらく、エンフィルド家に捕まるよりもずっと辛い事になると考えたのだろう。


 とはいえ情報を抜き出すだけだし、その後はこの男の要求通り始末するか、もしくは記憶と精神を破壊して遠い異国に捨ててくるかだ。


 まあ、間違いなく後者となるだろう。

 こいつを消す意味もないからな。


 だから、この男の辛い記憶もなくなるというわけだ。


 なんて俺達は優しいんだろう。


 そんなくだらない冗談はいいとして、ジュリーやナインの名前を出しても問題ないのはその為である。


 この男の記憶に残らなければ正体がばれても関係ない。

 いや、実際は記憶に残っていたとしても、“トランプ”にとっては何も問題はないのだが


「・・・さ、最後にもう一度聞かせてくれ・・・お、お前達は一体・・・」


 男は下に向けていた顔を上げると、そう口にした。


 自分の今後は終わりだと受け入れたようだが、それでもよほど俺達の事が気になるらしい。


 だから優しい俺は、男の言葉を無視しつつもナインに話しかける。


「後は任せたぞ、クラブの(ナイン)


 それを聞いた男は、蒼白だった顔面がもう血が無くなったのではと思えるほど更に白くなる。


「ク、クラブだと・・・?・・・お、お前達は・・・ま、まさか・・・“トランプ”・・・」


 男の言葉に、俺はニヤリとした笑みを向けてそれを返事とする。


 そして俺は振り返り、ナインに後は任せると目で合図を送ると、ジュリーを連れてその場から去ったのであった。




お読みいただきありがとうございます。


遅くなってしまってすみません・・・


これからも引き続き宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ