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第22話 シャロンとJ

時間が掛かってしまったので、とりあえず載せます。

 


「やあ、聞いたよ!スペリオルの勧誘を断ったんだって?」


 ライハロク生徒会長が、ニコニコと嬉しそうに俺達に話しかけてきた。


 俺達は――というか勇者達がメインで、俺とジュリーとマリアはついでだが――学校側の意向により、生徒会と交流を深めて欲しいという事で、今は生徒会室へと来ていた。


 おそらくは、生徒会も何だかんだで強者が集っているために勇者達の育成促進を目的にしているのと、国の機関である学校への勇者達の依存度を高めようとしているのだろう。


 生徒会が頼りになる、もしくは守りたいと思わせる事が出来れば上々といった所か。


 まあ、その辺りは勇者達の好きにさせるつもりだから、俺が口を出すような事ではない。


 ただ、組織の任務とは別に勇者達を育てると決めた俺は、何も知らない彼らに不利益になる事や、命の危険に関わるような事をさせるつもりはない。


 その為の監視役として、俺も同行していたのだ。


 この場には、勇者達4人とマリア、俺とジュリー、そして生徒会からはライハロクとシャロンがいる。

 残りの生徒会役員は、優先する仕事があるらしく今はいない。


 俺はライハロクの目をまっすぐに見つめ口を開く。


「喜んでいる所で悪いが、別に生徒会の為に断ったわけじゃない」


 そう言って、ライハロクの言葉をバッサリと切り捨てる。


「うん。それはもちろん、わかってるよ。それでもさ、僕達にとっても有難いことだからね」


 ライハロクは、俺の言わんとする事を理解した上で喜んでいるようだ。


「さて、それはいいとして・・・交流を深めるために、このままここで話をしていてもいいんだけど、折角だから生徒会役員の許可がないと使えない特別訓練室でも見ていくかい?」


 へえ、そんなものがあるんだな。


 何が出来るのかは知らないが、俺は訓練なんてどこでも出来るし、特別な訓練などする必要もない。

 ある程度戦う技術を持っているのなら、後は己を研鑽する事が強くなる一番の近道だと考えているからだ。


 とはいえ、ここは未熟な者が集まり、これから強くなろうと勉強するための学校である。

 だから生徒にとっては、強くなるためには必要な場所なのだろう。


 そして勇者達も、どうやら興味を持ったらしい。


 特別訓練室という言葉を聞いて、目を輝かせていた。


「俺達が見せてもらってもいいんですか!?」

「私は是非、見てみたいです!」

「私も少し興味あるかなぁ」

「俺は別にどっちでもいいけど、お前達が見たいというなら、俺も見てやってもいい」


 マサキとマイが身を乗り出すほど興味を持ち、ユウコは見られるなら見たいと、そしてリョウタは見たいくせにいつものように強がっているようだ。


 俺はどうするかな?と考えていると・・・


「ライハロク生徒会長・・・恐れ入りますが、私はジョークさんと少し話をしたいのですが、よろしいでしょうか?」


 前回は全く口を開かなかったシャロンが、ライハロクにそう提言した。


 ライハロクは、一瞬驚きと珍しい物でも見るかのような表情をしたが、すぐに笑顔に戻す。


「へえ、シャロンがそんな事を言うなんて珍しいね。・・・うん、別に構わないよ」

「ありがとうございます。では、一旦は別行動させて頂き、後ほど合流しますので」


 俺達の意見を聞く事なく、勝手に話が進んでいく。


 まあ、確かに俺も時間を作って彼女と話をしてみようと思っていたのだから、丁度いいと言えば丁度いいのだが・・・


「なあ、ライハロク生徒会長。ジュリーはそっちに行ってもいいんだよな?」

「ん?ああ、うん。それも構わないよ」


 学院の中で、特に何も起きないだろうとは思うが、勇者達とマリアだけにするのも不安が残る。


 そう考えると、俺は意外と過保護なんだなと少しおかしくなった。


 まあ、それはいいとして、その為に彼らにはジュリーを同行させたかったのだ。

 その確認も取れた事だし、俺はジュリーにコソッと話しかける。


「と言う事で、ジュリーはあいつらと一緒にいてやってくれ」

「ん、わかった」


 いつもながら、ジュリーは俺の言いたい事を理解してくれて助かる。

 これで、俺が彼らの近くに居なくても安心である。


「さて・・・じゃあ、勇者様方とマリア様、あとジュリーさんは僕に付いてきてくれるかい?」


 ライハロクはそう言うと、彼らを連れて生徒会室を出て行った。


 その様子を見送り、シャロンと2人きりになった所で彼女が口を開く。


「では、ジョークさんは私に付いてきてくれますか?」

「ん?ここで話すんじゃないのか?」


「ええ、正直ここではちょっと・・・」

「・・・わかった。じゃあ、行こうか」


 シャロンは俺がすんなりとOKを出した事に、少しだけ驚いた表情を見せた。

 しかしそれも一瞬の事で、次の瞬間にはフッとした笑顔を見せ、その後は何も言わずに歩き出した。


 俺も特に口を開く事なく、彼女の後ろをついて行く。


 そして彼女が立ち止まった場所は、広さはあるが人気の無い校舎裏であった。


「こんな所に連れ出してしまってすみません。そして、応じてくれてありがとう」

「いや、それは構わないよ。俺もシャロン副会長とは話がしたかったからね」


「やはり・・・あの時、気付いてくれていたのですね?」

「ああ、何かを伝えたいのだと言う事はわかったよ。誰かに聞かれたくないのだろうと言う事も」


「・・・そうですか。話が早くて助かります」


 シャロンは先程よりも深々と頭を下げる。


「それで、俺に何を伝えたかったんだ?」

「それはですね・・・」


 俺の質問に、シャロンは少しだけ言い淀む。

 そして・・・


「貴方の強さを見込んで、頼みがあります」


 と言った。


「・・・そんな事だろうとは思っていた・・・やはり、シャロン副会長も相手の力を見抜けるんだな?」

「はい・・・ですが、貴方に限っては逆です」


「逆?」

「ええ、貴方の力が全く読めない、わからないのです・・・だからこそ、貴方が強いと感じたのですよ」


 なるほど。


 相手の力を見抜く事が出来る者が、相手の力がわからないというのであれば、間違い無く自分よりも弱いはずがないと、そう考えたのだろう。


 それを聞くと、力の隠し方も考えないといけないかもしれないという事に気づかされる。


「それで、お願いする身として大変失礼なのは重々承知ですが・・・話の前に、この場で試させて下さい」


 シャロンはそう言いながら模擬剣を俺に寄こし、自分の模擬剣を抜く。


 誰かに話を聞かれたくないと言うだけでなく、それも目的でこの場に俺を連れ出したようだ。


 本来なら生徒同士では、授業や決闘以外の戦いは禁じられている。

 必ず誰かしら、第3者の立会人が必要だ。


 生徒会副会長であるシャロンが、それを知らないわけがない。


 それでも、やろうと言うのだ。

 相当な覚悟を持っているに違いない。


 そう感じた俺は・・・


「わかった。じゃあ、やろうか」


 彼女の意を酌んで、受けて立つ事にした。


「と、その前に・・・」


 俺はそう言うと、指をパチンと鳴らす。


 すると、俺を中心として直径10m程の半球上の結界が現れる。


 以前、ケルベロスの時やスライムの時の防御結界の様に、攻撃や侵入を防ぐ結界ではない。

 これは、完全遮断結界である。


 この中に誰がいようが何を話そうが何をしようが、外には絶対漏れることはない

 結界自体も、周りに溶け込むようにしているため、結界を張っている事すらばれる事はないのである。


「え、詠唱も無しに、こ、こんな事が・・・」


 シャロンは結界の効果についてはわかっていないだろう。

 ただ、無為詠唱で簡単に結界を張った事自体に驚いているようだ。


「これで、外には情報は漏れない。心置きなくやれるし、盗聴の心配もないから話したい事を話せばいい」

「・・・心遣いありがとうございます。・・・しかし、これだけでも充分、貴方はただ者ではない事がわかりますね」


「そうか?まあ、そんな事よりも、このことは他言無用で頼むよ」

「・・・なぜ初対面に近い私の前で、こんな高等技術が出来る事を明かしたのか・・・理由を聞いても?」


 シャロンの疑問は最もだろう。

 だが、それは俺としても同じである。


「それを言うなら、君こそ俺なんかを頼ってもいいのか?」

「・・・確かに、そうですね。・・・ですが、私は人を見る目には自信があると思っています。その私が、貴方を見た時に大丈夫だと判断したのです」


 シャロンはそう言いながら、俺の目をまっすぐに見つめてきた。

 彼女の真剣さが伝わってくる。


「そっか、だったら俺も君と変わらないさ」


 俺自身も初めてシャロンを見た時に、彼女が人の為に一生懸命に考えている事がわかった。

 そして、それを打ち明けていい人間を正確に見極めている、とも。


 そんな人間は、得てして口が堅い。


 彼女は俺が言うなと言えば、いくら生徒会長が相手でも必要に迫られない限りは漏らす事はないだろう。


 それに何よりも、彼女こそ初対面に近い俺を頼ってきたのだ。

 その気持ちに報いようと考えたのもある。


 そして、俺は続けて口を開く。


「俺の人を見る目は確実だからね」


 俺もシャロン同様に、人を見る目は間違いないと告げる。


 以前にも言った事だが、俺達の稼業柄で人を見る目は養われ自然と身につく。


 相手が善人なのか悪人なのか、言葉が嘘か真か、それと言動から大まかな思考を読み取るなど。

 この程度は、全て一瞬で出来るのだ。


 ただ、まあ・・・

 俺が理解出来ない感情に関しては、全く以て理解出来ないのだが・・・


 現に、彼女に話しかけながら、笑顔を向けたのだが。


「・・・っ!!」


 と、息を飲むように驚きの表情を浮かべたと思ったら、少しだけ下を向いて顔が赤くなっているような気がする。


 う~ん・・・

 やはり意味がわからない・・・


 まあ、よくわからんがさっさとやらないと、話をしない内にあっという間に時間が過ぎてしまう。


「とりあえず、始めようか」


 俺はそう言って剣を構える。


 それを見たシャロンはハッとなり、呼応するように剣を構えた。


「お好きなようにどうぞ」


 俺はシャロンに、攻撃して来いと促す。


 その言葉に、シャロンは一瞬だけ顔をしかめたが、すぐに切り替えて俺の意を酌む事にしたようだ。


 そして、シャロンは俺との間合いを詰めようと一気に駆け出す。


 ・・・低い!!


 シャロンの体勢は、前屈みのように身体を低くしながら詰めてきていた。


 その狙いは膝。


 初手として良い狙いだろう。

 飛んで躱すのも難しく、剣でも受けにくい場所だ。


 しかし、俺は難なくバックステップで避ける。


 シャロンは俺が避ける事を想定していたのか動揺する事もなく、勢いを殺さず更に加速して俺に詰めてくる。


 そして次に彼女が繰り出すのは片手突き。

 威力を落としても、速さとリーチを重視したのだろう。


 迫り来る剣先を紙一重で躱すと、そのままシャロンの横を通り抜ける。

 彼女は突進しているのだから、後ろへ回るとすぐには対応出来ないのだ。


 そして、シャロンから距離を取った所で、再び彼女に向き直り構える。


 シャロンも同様に、すぐに体勢を整えて俺に向かって構え直す。


「・・・どうしたのですか?攻撃してこないのですか?」


 本来なら、俺が通り抜けた瞬間に一撃を入れていたら終わりだったと言う事を、シャロンは理解しているのだろう。


 そのため、顔に少しだけ焦りの色を滲ませていた。


「・・・俺が攻撃するのは一度だけ。だから、俺が攻撃に転じる前に一撃でも入れてみせる事だな」


 俺は一回しか攻撃をしないと告げる。

 それは、その一撃で終る事を示唆している。


 その意味を正確に読み取ったシャロンは、悔しそうな顔をしながらも闘志に燃えていた。


「わかりました・・・では、本気でいきます!」


 シャロンはそう言うと、フッと口から息を吐く。

 そして、次の瞬間にはその場所から消えていた。


 いや、消えていたと言うと語弊がある。


 消えたように見えるほどの、高速移動をしていたのだ。

 とはいえ、それは普通の者にとってみればという事である。


 魔力感知や思考加速などを持つ者にとっては、動き自体は把握する事が出来る。

 まあ、それに反応する事が出来るかどうかは、本人の資質次第なのだが。


 勇者達でも、100%集中していれば問題無いが、少しでも気が逸れていればやられる可能性があるだろう。


 それほど彼女の戦闘能力は高い。


 しかし、俺は彼女の動きは完全に察知しているし、対処も可能である。


 シャロンは一瞬で俺の背後に回り、俺の胴へ横薙ぎに剣を振るっていた。


 俺は後ろを振り返りもせずに、自分の剣でそれを受け止める。


 シャロンは俺が剣で防御すると分かるや否や、剣が当たる瞬間に手の力を抜き、弾かれた勢いそのままに回転し、逆の胴へ向けて横薙ぎに払う。


 俺自身も、シャロンの剣を弾いたのと同時に身体を回転させ、彼女と正面を向く形となって剣を受け止める。


 するとシャロンは腕の振りは勢いそのままに、手首の力だけを抜くと腕と剣が90度になるようにして、俺の剣を滑らせるように抜いて、直接胴を狙ってきた。


 彼女の剣が俺の剣を抜いてきたため、再びバックステップで避けるしかなかった。


 シャロンは追撃の手を緩めず、俺の後を追うように回転しながら迫ってくる。

 しかも、その剣速は徐々に上がっている。


 回転すればするほど、速さと威力が増してくるのだろう。


 俺はその攻撃を避けながらも思う。


 舞っているようで、中々綺麗な剣技だな、と。


 タイプは違えど、セリシアと似ている。

 それは臨機応変に、変幻自在の剣技を扱えるという点においてだ。


 戦い方が違うのは別人なのだから当たり前の話。


 そんな事を考えながらもつ、次々迫るシャロンの攻撃をいなしていく。


 そして、業を煮やしたシャロンが、威力を込めて大振りになった瞬間。


 俺は一瞬でシャロンの横に並ぶのと同時に、彼女の腹へ向けて剣を振る。


 そして当たる瞬間に寸止めをした。

 その状態で、俺達は動きを完全に止めていた。


「・・・参りました」


 シャロンの言葉を聞くと俺は剣を降ろし、彼女も剣を降ろすと大きく息を吐いていた。


「ジョークさんが強いだろうとは思って居ましたが、ここまでとは思いませんでした・・・」

「いや、シャロン副会長も、俺が思っていた以上にやるんでビックリしたよ」


「気休めはよしてください・・・私は貴方に一太刀も入れる事が出来なかったのですから・・・」

「別に気休めじゃないさ。シャロン副会長の戦い方は未熟だと危険だが、極めれば太刀打ち出来る者はそうはいないだろうな」


「・・・それは、極めても貴方には対処可能だと言っている様にしか聞こえないんですが・・・」

「さあな。それは、やってみなきゃわからん。どちらにしろ、シャロン生徒会長にはまだまだ伸びしろがあるんだ」


 確かに俺や“トランプ”のメンバーであれば対処する事は可能だろう。

 しかし、そこまで言う必要はないし、彼女に伸びしろがある事は間違いないのだ。


「・・・まあ、それは褒め言葉として受け取っておきます。それよりも、私の事は無理に副会長と付けず、シャロンで構わないですよ」

「そうか?だったら俺の事も、ジョークと呼び捨てでいい」


 俺は一応、礼儀として役職名を付けて呼んでいたのだが、無理をしているのがわかったらしい。

 相手を呼ぶ時も自分が呼ばれる時も、敬称無しの方が気楽でいいから有難い。


 それはそうと、落ち着いた所で本題に入る事にする。


「それで・・・シャロンが俺に戦いを挑んだ理由と、俺に頼みたい事とは?」

「そうですね・・・」


「おそらく貴方なら、あの時すでに私の視線で気がついていたのでしょう?頼み事というのは他でもなくライハロク生徒会長に関してなのです」

「まあ、彼の事で話がある事は気づいていたが・・・」


「やはり、貴方は鋭いですね。助かります・・・その時の貴方の行動・態度を見てピンときたのです。ジョーク、貴方なら会長を止める・・・いえ、以前の会長に戻してもらう事が出来るのではと」

「・・・以前の会長に戻すとは?」


「はい、それはですね・・・・・彼は常に生徒の事を本気で考え、そのために行動しています。いえ、行動していたのです。しかしそれが、武力派組織スペリオルの台頭により、ライハロク生徒会長は自分にも周りにも力を求める傾向が見え始めました。もちろん、私達に無理矢理でも強くなれと強要しているわけではありません。ただ、それを仄めかしたり、貴方達にしたように強き者に接触を図ったりと、今までにはない言動をとるようになってきたのです」

「・・・・・」


「スペリオルに対抗する為に力が必要なのは分かりますが、しかし力に対して力で押しつける様な事をすれば、それはスペリオルと変わらない。以前の会長なら、共に力を合わせようと働きかけていたはずなのです」

「要は、力に頼るようになった今の会長ではなく、皆で力を合わせて強くなろうとしていた会長に戻ってほしいと?」


「そうです」

「だからと言って、俺には出来る事はないと思うけどな」


「いえ・・・貴方はきっと会長よりも強いでしょう。そんな貴方であれば、スペリオルと衝突しないように会長の事を止められると思ったんです」

「・・・俺には生徒会長を説得する事など出来ない。いや、出来ないと言うよりも俺の言葉に耳を貸さないだろう。そうなると、生徒会長を止める手段は一つしかない。この意味はわかるか?」


「・・・・・」

「俺が出来る事と言えば、結局スペリオルと同じ事なんだぞ?」


「・・・・・ええ、わかっています。私が矛盾している事を言っている、という事も・・・」

「だったら・・・」


「それでも・・・それでも、他に手段がありません。私では、口でも実力でも会長に届かないのです。それに貴方であれば・・・貴方は力が全てだとは思っていないのでしょう?」

「ああ。はっきり言えば、そんなものはどうだっていい」


「その言葉だけでも、私には貴方を信用するに値すると思っています」

「・・・・・」


 シャロンは自分の見る目を完全に信じているようだ。


 しかし、俺には彼女の頼みを聞いてやる理由がない。

 ただ、彼女が真剣に学院の事を考え、本気でライハロクの事を慕う気持ちがわかる。


 彼女はライハロクを以前の状態に戻したいと思っているのは、もちろん彼の事を思ってが第一なのだろうが、他の懸念として生徒会とスペリオルが衝突すれば、他の生徒達や学院全てを巻き込むと考えているようだ。


 皆を心配する気持ち、ライハロクを心配する気持ち

 シャロンの言葉や表情からは、それが伝わる。


 だからと言って、それでも俺が動く要因になるわけではないのだが。


 さて、どうしたものやら・・・


「シャロンの考えや気持ちはわかった・・・だが今の所、俺が動く気はない」

「・・・そう・・・ですか・・・」


「が、前向きには考えておいてやるよ」

「え!?」


 俺の口からは自然に出た言葉であった。

 それにシャロンは驚く。


 どうやら、俺は嘘偽りのない真剣な気持ちをぶつけてくる相手に弱いのかもしれない。


 そう思いつつも、さらに続きを話す。


「ただ、動くかどうかは確約しないし、ライハロク生徒会長を戻せるかについても保証はしない」

「ありがとうございます!それでも・・・正直、無茶なお願いだと分かってはいたので、検討して頂けるだけでも嬉しいです!」


 シャロンは俺の手を両手で包み込むように取り、嬉しそうに笑顔で喜んでいた。


 本人も、本当は断られる可能性の方が高いと考えていたのだろう。


 正直、今でも俺が動くだけの理由がないとは思っている。

 だが状況によっては、動くに値する可能性だってある。


 まあどちらにしろ、今すぐには答える事は出来ないという事だ。


 と考えている間も、シャロンはずっと俺の手を握りしめて、ニコニコと笑顔を向けていた。


「・・・なあ、そろそろ離してくれないかな?」

「えっ?・・・あっ!!」


 俺の言葉と視線で、シャロンはいつまでも俺の手を握りしめている事に気がついた。


 すると顔を赤くして、すぐに手を離して後退る。


「す、すみません・・・」


 そして深々と頭を下げる。


「い、いや、そこまで謝らなくてもいいけどさ」


 頭を下げるシャロンを起こさせて、俺は尋ねる。


「とりあえず、話はこれで終わりか?」

「は、はい。私が話したかったのは、その事だけです」


「そうか、わかった。あと、分かっているとは思うが、俺の事については一切他言無用だ。それを破った時点で、間違い無く俺は力を貸さない」

「ええ、わかっています」


「じゃあ、これから結界を解除するから、余計な事は話すなよ?」

「わかりました」


 俺はそういうと、結界を張った時と同じように指を一つパチンと鳴らす。


 すると、一瞬で結界が消え去っていく。


「さて、じゃあ戻るか」

「はい」


 俺が促すと、シャロンも返事をして俺の後を付いてくる。


 そして、校舎に入ろうと玄関まで来た瞬間・・・


「――!!」


 俺はある事を感知したのだった・・・




お読み頂きありがとうございます。


とりあえず、先に進ませたいので載せました。

修正する箇所もあるとは思いますが、続きを書きながら時間を見て直していきます。



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